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二章 長女、秋奈を守れ!
32 待ち人来らず
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「どひゃぁぁぁ!寝坊したー!」
秋奈はベッドから飛び上がると、制服に着替えようと急いでパジャマのズボンを脱いだ。
「あぁぁ!私、もう終わったぁぁ!」
「秋ちゃん?こんな朝早くから大声だしてどうしたの!?」
秋奈の断末魔の叫びを聞いた夏子は急いで部屋のドアを開けた。
「お母さん?なんで起こしてくれなかったの?
これじゃもう間に合わないよ!
宗太郎くんのお弁当作りがあるのにぃぃ!」
唇を震わせて涙を流し、秋奈は夏子に抱きつく。
「間に合わないって?秋ちゃんは6時半に起きるんじゃなかったかしら?
まだ5時半よ?」
秋奈と同じくパジャマ姿の夏子は眠そうに目を擦って言った。
「えっ、5時半?」
尻を出したままの秋奈は時計を見て、力が抜けてコンニャクのようにグニャグニャとベッドへ崩れ落ちた。
「なんだぁ、まだ早かったんだ。」
「いきなり大声だすからびっくりしたじゃない。」
「お母さんごめんね、ほんとにごめんね。」
両手を合わせて謝る秋奈は涙を流しつつも笑みが溢れた。
「まったく人騒がせなんだから。
はいこれ。」
夏子は秋奈に脱ぎ捨てられたパジャマのズボンを手渡した。
「秋ちゃん?お母さんの前でならまだ許されるけど、オマタ広げた格好はだらしないわよ?」
ホッとしていた秋奈は夏子の指摘で、大胆に足を広げベッドで横になっていた事に気付く。
上半身だけ起こした秋奈は、恥ずかしげに股を閉じた。
「行ってきまーす!」
玄関ドアの上部にある曇りガラスからも朝陽が漏れ、見事な冬晴れだ。
「あれ?お姉ちゃん早いね。」
朝食を食べ始めた冬児に対して、少し生意気な表情で秋奈言った。
「はっ!まあね。」
「寝坊ばかりしていた秋奈はどういう風の吹き回しだ?」
「フフフ。」
夏子は春彦に笑って答えるだけだった。
宗太郎くんと待ち合わせした時間には悠々で間に合う。
彼氏と登校する約束をした秋奈は待ち合わせ場所には走らずとも間に合うのだが、心が踊ってしまい走らずにはいられなかった。
秋奈には中学生の頃から付き合っていた彼氏がおり、秋奈の方から猛烈なアプローチをした事で一応は恋人同士になっていた。
青空の下、やや上を見て走る秋奈は枝ばかりの街路樹を眺めながら可愛らしい笑窪ができた。
大好きな恋人に会えるーーーー今の心境は何を見ても楽しいのだ。
最寄駅に着き、改札を通り抜けて階段を駆け上がる。
ホームに辿り着くと、電車の扉が開き下車する者達を、列を作った乗客が降りてくるのを待っていた。
最後尾から電車に乗ってドア側に備え付けてある手摺りを掴んだ。
待ち合わせ場所についた秋奈は額の汗を優しくハンカチで拭った。
母である夏子が、ものぐさな秋奈に変わってハンカチを持たせている。
コートが必要な冬とはいえ、恋人に会いたい一心で自宅から駅まで走った秋奈にとっては車内の暖房が暑かった。
秋奈はベッドから飛び上がると、制服に着替えようと急いでパジャマのズボンを脱いだ。
「あぁぁ!私、もう終わったぁぁ!」
「秋ちゃん?こんな朝早くから大声だしてどうしたの!?」
秋奈の断末魔の叫びを聞いた夏子は急いで部屋のドアを開けた。
「お母さん?なんで起こしてくれなかったの?
これじゃもう間に合わないよ!
宗太郎くんのお弁当作りがあるのにぃぃ!」
唇を震わせて涙を流し、秋奈は夏子に抱きつく。
「間に合わないって?秋ちゃんは6時半に起きるんじゃなかったかしら?
まだ5時半よ?」
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「えっ、5時半?」
尻を出したままの秋奈は時計を見て、力が抜けてコンニャクのようにグニャグニャとベッドへ崩れ落ちた。
「なんだぁ、まだ早かったんだ。」
「いきなり大声だすからびっくりしたじゃない。」
「お母さんごめんね、ほんとにごめんね。」
両手を合わせて謝る秋奈は涙を流しつつも笑みが溢れた。
「まったく人騒がせなんだから。
はいこれ。」
夏子は秋奈に脱ぎ捨てられたパジャマのズボンを手渡した。
「秋ちゃん?お母さんの前でならまだ許されるけど、オマタ広げた格好はだらしないわよ?」
ホッとしていた秋奈は夏子の指摘で、大胆に足を広げベッドで横になっていた事に気付く。
上半身だけ起こした秋奈は、恥ずかしげに股を閉じた。
「行ってきまーす!」
玄関ドアの上部にある曇りガラスからも朝陽が漏れ、見事な冬晴れだ。
「あれ?お姉ちゃん早いね。」
朝食を食べ始めた冬児に対して、少し生意気な表情で秋奈言った。
「はっ!まあね。」
「寝坊ばかりしていた秋奈はどういう風の吹き回しだ?」
「フフフ。」
夏子は春彦に笑って答えるだけだった。
宗太郎くんと待ち合わせした時間には悠々で間に合う。
彼氏と登校する約束をした秋奈は待ち合わせ場所には走らずとも間に合うのだが、心が踊ってしまい走らずにはいられなかった。
秋奈には中学生の頃から付き合っていた彼氏がおり、秋奈の方から猛烈なアプローチをした事で一応は恋人同士になっていた。
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ホームに辿り着くと、電車の扉が開き下車する者達を、列を作った乗客が降りてくるのを待っていた。
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