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一章 長男、冬児を守れ!
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冬児のクラスの担任が何度も頭を下げて季節原家のドアを静かに閉めた。
冬児は項垂れている。
「お母さん、僕…なんでこんな乱暴になっちゃったんだろう?
こんな自分が大嫌いだよ。」
「冬ちゃん、お母さんはね?冬ちゃんが正しいと思っているわ。
だって潮田って子、あまりにも悪過ぎよ。
担任の先生だって冬ちゃんの肩を持っていたじゃない。」
夏子の顔を見る事なく、冬児は頭を下げたままだ。
「もうすぐお父さんも会社から帰宅する時間よ。
きっとお父さんも、お母さんと同じ気持ちのはずよ。」
夏子は憔悴しきっている冬児の肩に腕を回してリビングへ連れていく。
ガチャガチャ
「帰って来たみたいね?」
いつも通り、春彦はチャイムを鳴らさず自分で鍵を開けて入ってきた。
パタパタ、スリッパを鳴らして玄関先で出迎えた夏子が帰宅したばかりの春彦に、冬児がクラスの子と殴り合いの喧嘩になって先程まで担任が来訪していた事を、無意識のうちに早口で捲し立てている。
「冬児は?」
「リビングにいる。」
リビングのドアを開けて、スーツ姿の春彦はネクタイを外しながら冬児に優しく語りかける。
「話は聞いた。喧嘩をしたんだって?」
冬児は首を縦に振って返事をした。
「お父さん、僕…ごめんなさい。」
「どうした?なぜ謝るんだ。
おまえは当然の事をしたまでだ。
お母さんから聞いた話では、潮田は秋奈の裸を見たいやら、クラスの女子を蹴飛ばす非道っぷり。」
「それだけじゃないわ。
スイニャンのカードも4年生の頃から庇っていたけど、犯人は潮田だったのよね?
盗んでおいて冬ちゃんの背中に隠れて、味方をする冬ちゃんを利用していたのよ?
まだ小学生でそこまで悪知恵が回るかしら?
親の顔が見てみたいわ!」
「ほう?潮田という子は、なかなかの卑怯者だな。
将来は汚職に塗れれ、政界を牛耳り、国賊政治屋にでもなるかもしれないぞ。」
「さっき、私の裸かがどうのって話をしてなかった?」
聞きつけた秋奈がやってきて3人の顔を見回す。
とりわけ、嫌っている春彦を見下すように睨む。
「ちょっとね、冬ちゃんが学校で色々あってね…。」
「冬児が登校した初日に、友達だと思っていた男子に呼び出されてな、おまえについて我慢できない事を言われたんだ。」
「私の事で冬児が我慢できなくなるってどういう事?
ねぇ、お母さん教えてよ!?」
事実をどこまで伝えるべきなのか、躊躇いながらも夏子は秋奈に近づきコソコソ耳打ちをした。
「はぁ!?何それ!!めっちゃキモイんだけどぉ!!
そのエロガキは小学生の分際で頭おかしいんじゃないの!
マジでキモーイ!!
ってかさ、冬もそんな奴相手にしちゃダメだよ!!」
怒りと恥ずかしさで顔を赤くした秋奈は、内股になり腕でパジャマからもわかる丸みのある乳房を隠した。
「冬児?明日は学校へ行けそうか?」
春彦のこの発言に夏子は冬児を見つめる。
秋奈は既にリビングを出て自身の部屋に入っていた。
「うん。学校には行くつもり。
ただ…。」
「ただ?」
努めて明るく夏子は冬児に接した。
「悔しい気持ちがあるんだ。」
「ふむ、消化不良気味なわけだな。」
冬児は頷く。
「決着はついていない?」
先ほどより強く頷く。
「秋奈の事、クラスの友人(女子)の事、スイラン?の盗難事件で騙されていた事が許せない?」
「スイランじゃなくてスイニャン。」
そう言いながら、とても強く頷く。
「おまえの気持ちがわかった。今すぐ家を出るぞ。」
脱いだネクタイを再び着けなおしてソファから立ち上がった。
「今からどこへいくつもり?」
「魂が求める場所。」
冬児は項垂れている。
「お母さん、僕…なんでこんな乱暴になっちゃったんだろう?
こんな自分が大嫌いだよ。」
「冬ちゃん、お母さんはね?冬ちゃんが正しいと思っているわ。
だって潮田って子、あまりにも悪過ぎよ。
担任の先生だって冬ちゃんの肩を持っていたじゃない。」
夏子の顔を見る事なく、冬児は頭を下げたままだ。
「もうすぐお父さんも会社から帰宅する時間よ。
きっとお父さんも、お母さんと同じ気持ちのはずよ。」
夏子は憔悴しきっている冬児の肩に腕を回してリビングへ連れていく。
ガチャガチャ
「帰って来たみたいね?」
いつも通り、春彦はチャイムを鳴らさず自分で鍵を開けて入ってきた。
パタパタ、スリッパを鳴らして玄関先で出迎えた夏子が帰宅したばかりの春彦に、冬児がクラスの子と殴り合いの喧嘩になって先程まで担任が来訪していた事を、無意識のうちに早口で捲し立てている。
「冬児は?」
「リビングにいる。」
リビングのドアを開けて、スーツ姿の春彦はネクタイを外しながら冬児に優しく語りかける。
「話は聞いた。喧嘩をしたんだって?」
冬児は首を縦に振って返事をした。
「お父さん、僕…ごめんなさい。」
「どうした?なぜ謝るんだ。
おまえは当然の事をしたまでだ。
お母さんから聞いた話では、潮田は秋奈の裸を見たいやら、クラスの女子を蹴飛ばす非道っぷり。」
「それだけじゃないわ。
スイニャンのカードも4年生の頃から庇っていたけど、犯人は潮田だったのよね?
盗んでおいて冬ちゃんの背中に隠れて、味方をする冬ちゃんを利用していたのよ?
まだ小学生でそこまで悪知恵が回るかしら?
親の顔が見てみたいわ!」
「ほう?潮田という子は、なかなかの卑怯者だな。
将来は汚職に塗れれ、政界を牛耳り、国賊政治屋にでもなるかもしれないぞ。」
「さっき、私の裸かがどうのって話をしてなかった?」
聞きつけた秋奈がやってきて3人の顔を見回す。
とりわけ、嫌っている春彦を見下すように睨む。
「ちょっとね、冬ちゃんが学校で色々あってね…。」
「冬児が登校した初日に、友達だと思っていた男子に呼び出されてな、おまえについて我慢できない事を言われたんだ。」
「私の事で冬児が我慢できなくなるってどういう事?
ねぇ、お母さん教えてよ!?」
事実をどこまで伝えるべきなのか、躊躇いながらも夏子は秋奈に近づきコソコソ耳打ちをした。
「はぁ!?何それ!!めっちゃキモイんだけどぉ!!
そのエロガキは小学生の分際で頭おかしいんじゃないの!
マジでキモーイ!!
ってかさ、冬もそんな奴相手にしちゃダメだよ!!」
怒りと恥ずかしさで顔を赤くした秋奈は、内股になり腕でパジャマからもわかる丸みのある乳房を隠した。
「冬児?明日は学校へ行けそうか?」
春彦のこの発言に夏子は冬児を見つめる。
秋奈は既にリビングを出て自身の部屋に入っていた。
「うん。学校には行くつもり。
ただ…。」
「ただ?」
努めて明るく夏子は冬児に接した。
「悔しい気持ちがあるんだ。」
「ふむ、消化不良気味なわけだな。」
冬児は頷く。
「決着はついていない?」
先ほどより強く頷く。
「秋奈の事、クラスの友人(女子)の事、スイラン?の盗難事件で騙されていた事が許せない?」
「スイランじゃなくてスイニャン。」
そう言いながら、とても強く頷く。
「おまえの気持ちがわかった。今すぐ家を出るぞ。」
脱いだネクタイを再び着けなおしてソファから立ち上がった。
「今からどこへいくつもり?」
「魂が求める場所。」
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