パパの見た目は15歳〜童顔の大黒柱〜

スーパー・ストロング・マカロン

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一章 長男、冬児を守れ!

23 父・春蔵の団子屋にて

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「ああ…うん。そう言う事なんだ。」

座椅子に座りスマホを持って夏子と通話をする春彦に、サクラが頬や肩に鼻をつけて匂いをクンクン嗅いでいる。

「だから、今夜は父さんの自宅で泊まるよ…あぁ、そうだね。
ちゃんと伝えておくよ…うん、わかった。切るよ。」

「余計な事を、ゴホゴホッ!」

2階の二間しかない部屋で春蔵は布団の中でくるまっていた。

「発作があったんだ。無理は禁物だよ。」

「俺を口実に居座るつもりか?
なんと愚かなバカ息子だ。」

「居座るだなんて人聞きの悪い事を言わないでくれ。
俺は電話ではなく面と向かって相談をしたくてここへ来たんだ。
居座るどころか、泊まるつもりもなかったよ。」

「この世の終わりのような顔で泣きついたおまえの話など信用できるか。」

横を向いて話していた春蔵は、視線を天井に向けた。

「もうサクラは眠る時間なんだ。電気を消せ。」

「わかったよ父さん。お休み。」

長らく使っている古い電気の紐を引っ張って灯りを豆電球に切り替えた。
明るかった部屋は赤みのかかったロウソクのような懐かしさがあった。

電気が消えたのが合図のようでサクラは春蔵の元へ行き、頭を動かして掛け布団をめくろうとしている。

春蔵は無言で掛け布団を捲ると、サクラは潜るように布団の中に入っていく。

春彦は父親の部屋のふすまを静かに閉めて、学生時代まで自室だった向かいの部屋に入ろうとした時だ。

「おい、春彦。
どうせ、休み明けからクビになる会社には出勤しない腹積りだろう?
おまえがここに居たいなら店を手伝え。
ここはおまえの駆け込み寺ではないぞ。
タダ飯を食わせられるほどの余裕はない。」

出勤するつもりは一切なく図星ではあったが、まさか父である春蔵の団子屋を手伝わされるとは夢にも思わなかった。

「ちょっと待ってくれよ。
俺が父さんの団子屋を手伝えるわけがないだろ?
休み明けからハローワークに行くつもりだったんだぞ。」

「何がハローワークだ。
今のおまえは糸が切れた凧のようなもんだ。
新たな職に就いたとて、早々に辞めるだろう。
そうなれば家庭が今よりもっと荒れていく。
孫達や夏子さんがあまりに不憫だ。
ここならおまえを鍛え直せる。」

言い返そうとした春彦だが、春蔵に黙れと一喝されてしまった。

「嫌ならとっとと出て行け。
腑抜ふぬけたおまえの顔なんぞ、見たくもない。
こんな身体だが、まだまだ独りでもやっていける。
サクラより先に死ねないからな。」

こんもり盛り上がっている掛け布団を春蔵は撫でている。

「わかったよ…。」

「詳しい話はまた明日にしよう。ゴホッゴホッ。
早く部屋から出て行ってくれ。
女々しいおまえを見ると血圧が上がって、また具合が悪くなる。」



(翌朝)

「夏子、申し訳ないが実家にもう1泊していかなければならない。
ちょっと父さんの容態が芳しくなくてね…あぁ、すまないな。
また分かり次第電話をするよ。
ありがとう。」

春彦はなるべく夏子に詮索されないよう、手短に話してすぐに電話を切った。

春蔵の容態が悪い事だけを伝えて、会社をリストラされた事と団子屋の手伝いをする羽目になった事は伏せた。

プライドの高い春彦はどうしても事実を伝えられるずにいた。

古い階段を春彦は駆け足で下りた。

「父さんおはよう。」

ムスッとしたまま何も話さない父・春蔵は春彦に顎だけ動かした。

「そこでボケッと突っ立って何をしている?
今すぐ庭先を掃いてこんか!」

掃除用具が入ったロッカーを指差した。

暗いトンネルの中に入り込んだまま、出口が見えない状態を抜け出す為、実父じっぷに相談に乗ってもらおうとは思っていたが、思いもよらぬ展開に困惑したままロッカーからホウキとチリトリを手に持って庭先へでた。


















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