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ラスト あれから
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「おい。ここでおまっ、勘弁してくれよ。」
「いいじゃん。誰もいないよぉ。」
「こんな軽トラのなかでか?やっぱ変だぞ。」
「私はウミとの想い出が詰まったこの軽トラちゃんが好きなの!
絶対に廃車になんかさせないんだから。」
ソラはウミのジーンズのファスナーに手を伸ばした。
「そんなに照れないで…もう私達は大人だよぉ?それに愛し合う夫婦なんだから普通の事よ。」
「でも…。」
恥じらうウミの下半身に対して可愛らしい小動物を見るかのような表情を浮かべたソラは、長く艶やかな黒髪を耳にかける。
プルッとした小さな口元を近づけていく際、背筋に悪寒が走った。
異変を感じたソラは運転席の窓から覗いた。
「こんばんは~。」
視線の先にいたのは懐中電灯で自分の顔を照らすユラであった。
「ひゃあ!」
「やーね。この子は。美しくてラブリィなママを見てそんなに驚く事ないでしょ。」
「驚くにきまってるじゃない!
いきなり現れて怖い絵画に描かれている魔女みたいな表情でこっちを見てるのよぉ?
驚かない方がおかしいわ!」
娘の発言が気になり始めたユラは顔に懐中電灯を当てながら、サイドミラーで確認している。
「ママ!今度という今度は絶対に許さない!
いい加減、私達夫婦に干渉するのはやめてよね!
もう子供じゃないんだから!
ウミも黙ってないでなんか言ったらどう?」
「えっ?俺?」
「ウミ君。この際だから本当の事を言いなさい。
お姉ちゃんとの夜の営みに不満はない?」
義母は娘の夫にストレートな表現で尋ねた。
「なっ!?ママは恥とかないわけ?
普通はそんな事を聞かないでしょ?
そもそもなんでここにいるのよぉ?」
「ママはね、2人が心配なの。
ちっとも落ち着いた暮らしをしていないじゃない。
何かあれば、妹のセラや良識のある方々を巻き込んでるじゃないのよ。」
「そ、それは…。」
ソラは言い返せなくなると、ウミが口を開いた。
「お義母さん。全てはこの俺の責任です。
俺が音楽活動で忙しくなって、ソラを追い詰め家出をさせる原因を作ってしまったんです。
それで今回もまたもやソラに悲しい思いをさせて、同じ事を繰り返してしまうところだったんです。」
「ウミィ…。」
「何を言っているの?ウミ君。
ほんの一握りの人しかできない華やかな職業に就き、しかも今や着々と人気を獲得してきているミュージシャンよ。
こないだ、お義母さん美容室で読んだわよ。
ウミ君のインタビュー記事!
確か、"でかいホールでばかりライブをすると自分がまるで道化師になった気分だった。
いつだって俺にとってリアルな場所、それはライブハウスなんだ。
それを忘れたら、俺にとって敗北だよね。"
ウミ君のこの発言に痺れたわ!
お姉ちゃんに振り回されてばかりいては.そのうち音楽活動に支障がきたすわよ。」
「あっ、ありがとうございます。」
照れながら青い髪を撫でているウミはロックスターというより、ソラの言葉を借りて言うのであればまさしくシャイで可愛げのある青年だった。
「そうは言ってもね、さっきのウミ君の発言は嬉しかったわ。
夫としてお姉ちゃんの事をしっかりと庇うのだから。
ウミ君には他の誰よりも男気があったものね。
私はそれを忘れていたわ。」
「そうよぉ!ウミは格好良くて責任感のある男の子だもん。」
「お姉ちゃん?」
「な、何よぉ?ママ。」
「さっきの話に戻すけれど、ウミ君はしばらくママが預かります。
ウミ君には、家出するようなお姉ちゃんより母である私と居た方が幸せよ。」
「馬鹿な事を言わないで!気持ち悪い!!」
「だってウミ君は無意識のうちにお姉ちゃんを拒んでいるのよ?
おかしいと思わない?これほど若くて元気な男の子がよ…ねぇ?
ママである私が、ソッチの方も男にしちゃいます。」
ソラの怒りは頂点に達しミカミを半殺しにした時のように、角がある美しい女の鬼のような表情に変わった。
「ヤダー、お姉ちゃんたら怖ーい。
冗談に決まっているじゃないの?ねぇウミ君。」
「はぃ…。」
ウミは返事をするだけで精一杯だ。
「とはいえまたウミ君を困らせたら、ママは今夜のようにここに来ますからね。
その時、夫婦の成長の兆しがなければ問答無用でウミ君を連れて行くわ。」
「望むところよぉ!私達は世界一幸せで仲良しの夫婦になるんだから!」
「約束よ。もし約束を破ったらママがウミ君に夜のお稽古をして色々教えてあげちゃうから。」
「夜のお稽古するのは妻である私の役目よぉぉぉ!!!」
俺、幸せになれるのかな?
ウミはオンボロの軽トラックの運転席に深く座り込んで考えていた。
「いいじゃん。誰もいないよぉ。」
「こんな軽トラのなかでか?やっぱ変だぞ。」
「私はウミとの想い出が詰まったこの軽トラちゃんが好きなの!
絶対に廃車になんかさせないんだから。」
ソラはウミのジーンズのファスナーに手を伸ばした。
「そんなに照れないで…もう私達は大人だよぉ?それに愛し合う夫婦なんだから普通の事よ。」
「でも…。」
恥じらうウミの下半身に対して可愛らしい小動物を見るかのような表情を浮かべたソラは、長く艶やかな黒髪を耳にかける。
プルッとした小さな口元を近づけていく際、背筋に悪寒が走った。
異変を感じたソラは運転席の窓から覗いた。
「こんばんは~。」
視線の先にいたのは懐中電灯で自分の顔を照らすユラであった。
「ひゃあ!」
「やーね。この子は。美しくてラブリィなママを見てそんなに驚く事ないでしょ。」
「驚くにきまってるじゃない!
いきなり現れて怖い絵画に描かれている魔女みたいな表情でこっちを見てるのよぉ?
驚かない方がおかしいわ!」
娘の発言が気になり始めたユラは顔に懐中電灯を当てながら、サイドミラーで確認している。
「ママ!今度という今度は絶対に許さない!
いい加減、私達夫婦に干渉するのはやめてよね!
もう子供じゃないんだから!
ウミも黙ってないでなんか言ったらどう?」
「えっ?俺?」
「ウミ君。この際だから本当の事を言いなさい。
お姉ちゃんとの夜の営みに不満はない?」
義母は娘の夫にストレートな表現で尋ねた。
「なっ!?ママは恥とかないわけ?
普通はそんな事を聞かないでしょ?
そもそもなんでここにいるのよぉ?」
「ママはね、2人が心配なの。
ちっとも落ち着いた暮らしをしていないじゃない。
何かあれば、妹のセラや良識のある方々を巻き込んでるじゃないのよ。」
「そ、それは…。」
ソラは言い返せなくなると、ウミが口を開いた。
「お義母さん。全てはこの俺の責任です。
俺が音楽活動で忙しくなって、ソラを追い詰め家出をさせる原因を作ってしまったんです。
それで今回もまたもやソラに悲しい思いをさせて、同じ事を繰り返してしまうところだったんです。」
「ウミィ…。」
「何を言っているの?ウミ君。
ほんの一握りの人しかできない華やかな職業に就き、しかも今や着々と人気を獲得してきているミュージシャンよ。
こないだ、お義母さん美容室で読んだわよ。
ウミ君のインタビュー記事!
確か、"でかいホールでばかりライブをすると自分がまるで道化師になった気分だった。
いつだって俺にとってリアルな場所、それはライブハウスなんだ。
それを忘れたら、俺にとって敗北だよね。"
ウミ君のこの発言に痺れたわ!
お姉ちゃんに振り回されてばかりいては.そのうち音楽活動に支障がきたすわよ。」
「あっ、ありがとうございます。」
照れながら青い髪を撫でているウミはロックスターというより、ソラの言葉を借りて言うのであればまさしくシャイで可愛げのある青年だった。
「そうは言ってもね、さっきのウミ君の発言は嬉しかったわ。
夫としてお姉ちゃんの事をしっかりと庇うのだから。
ウミ君には他の誰よりも男気があったものね。
私はそれを忘れていたわ。」
「そうよぉ!ウミは格好良くて責任感のある男の子だもん。」
「お姉ちゃん?」
「な、何よぉ?ママ。」
「さっきの話に戻すけれど、ウミ君はしばらくママが預かります。
ウミ君には、家出するようなお姉ちゃんより母である私と居た方が幸せよ。」
「馬鹿な事を言わないで!気持ち悪い!!」
「だってウミ君は無意識のうちにお姉ちゃんを拒んでいるのよ?
おかしいと思わない?これほど若くて元気な男の子がよ…ねぇ?
ママである私が、ソッチの方も男にしちゃいます。」
ソラの怒りは頂点に達しミカミを半殺しにした時のように、角がある美しい女の鬼のような表情に変わった。
「ヤダー、お姉ちゃんたら怖ーい。
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「はぃ…。」
ウミは返事をするだけで精一杯だ。
「とはいえまたウミ君を困らせたら、ママは今夜のようにここに来ますからね。
その時、夫婦の成長の兆しがなければ問答無用でウミ君を連れて行くわ。」
「望むところよぉ!私達は世界一幸せで仲良しの夫婦になるんだから!」
「約束よ。もし約束を破ったらママがウミ君に夜のお稽古をして色々教えてあげちゃうから。」
「夜のお稽古するのは妻である私の役目よぉぉぉ!!!」
俺、幸せになれるのかな?
ウミはオンボロの軽トラックの運転席に深く座り込んで考えていた。
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