私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
上 下
264 / 275
覚醒!怒り狂うソラ!

263

しおりを挟む
バンドメンバーやスタッフ以外の無関係な人々がステージ上に集結する異常事態になった。

「おいソラぁぁ!何してやがんだ!?
けぇーれ!けぇーれよ!」

妹と母は口々に、ソラを怒鳴るウミに駆け寄り怪我はないか聞いている。

かつらとともに砂城院家の従業員はソラに追いつき腕を掴んだ。

「痛いよぉぉぉ!離してぇ!
今から私はウミを傷つけたこの変態ネズミを殺すんだから邪魔しないでぇ!」

「ソラちゃん!?後はワタクシ達に任せて!」

「ダメ!コイツは私が始末するぅ!
ウミを虐めたら絶対に許さないんだからぁ!」

ヒロコもソラの説得を始めたが、頑として譲らない。

ミカミの近くで怒り狂う姉を追いかけてきた妹も観客席までやってきた。

「姉貴!?」

「アンタ、ナイフかなんか持ってない?
コイツのお腹をエグって内臓をグチャグチャにしてやる!」

「あ、あたしが凶器なんか持っているわけないじゃん!」

大切な人を傷つけられた怒りと憎しみの感情はますます膨れ上がり、ソラの顔は今までにない破壊的で狂気に満ちた、怪しくも美しい表情を魅せた。

「はぐぁ。め、女神…?
どうしてここへ?俺を避けて逃げ回っていたのに…。
ついに、俺を選んでくれたのかい?」

朦朧もうろうとする意識のなか、ソラの声を聞いたミカミは、目をカッと見開き期待に胸を弾ませた。
良薬を服薬する事や救命措置を施す事より効果があるのかもしれない。

口から垂れたヨダレを手で拭い、トランクスのみ着用している半裸の変態男は、血を垂らしながら産まれたての仔馬のようにヨロヨロおぼつかない足で立ち上がった。


「フッフッフ。女神…愛しているよ。
なんなら、みんなが見ている前でヤろうか?
旦那より満足させてあげるから。」

「あの変態、この後に及んでまだ言うか…。」

ヒロコが言った言葉を姉妹の母は聞いていた。

「こっちへ来るよ!
姉貴は危ないから引っ込んでて!」

セラの発言に、そばに居た関係者全員がミカミを取り押さえようとした。

「どけよてめえら!どけってんだ!」

人集りを一蹴しウミは威勢よくミカミを取り押さえようと向かって行った時だ。

ガシャッ!

近くにいた皆の耳に鈍い音が響き渡った。

どこからか見つけてきたパイプ椅子で、ソラはミカミの脳天を持てる力全てを出しきって叩いた。

ノックアウトされたミカミは受け身を取る事さえできず、そのまま固い床に前のめりで倒れた。

場内から一般客の悲鳴があがった!

間もなくミカミの頭部からおびただしい量の鮮血が流れ、血液があちらこちらに枝分かれして床を赤く染めていく。

「おまえの身体がドロドロになるまで止めないんだから!」

ソラの怒りは収まっておらず、更に追い打ちをかけるべくパイプ椅子を天井へ向けて振り上げた。

「やめろソラァ!」

頭上の1番高い位置から力いっぱい振り下ろす瞬間、乳房をプルンと揺らしたソラはウミにてのひらごと、ガッチリ握られて止めた。

「なんでぇ?コイツ、ウミを襲ったんだよぉ!?」

「これ以上、コイツを痛めつけたら死ぬぞ。」

「そうよぉ!殺す為に私はやっているのよぉ!
こんな変態は殺した方がいいわ!」

「俺は大丈夫、ノーダメージだ。
ギグは良いとこで中断しちまったけどな。」

「そんならノーダメージではないじゃん!ちゃんと息の根を止めてやらなきゃならないわ!
死んだら砂城院家に頼んで、この変態ネズミのをワニやハゲタカの餌にしてやるんだ!
あっ?まだ生きている!このおぉぉ!」

「ソラァ!!もう止めろってば!!」

錯乱さくらんするソラをウミは強く抱き寄せた。

ガチャン!

頑丈なパイプ椅子は繊細で美しいソラの手から滑り落ち床に落ちた。

ソラは正面から抱きしめられた事で、き物が落ちたように静かになると、クリクリした大きな黒目を潤ませてゆっくり瞬きした。

「ゆふれらいれしょ?最愛の人がおほわれちゃら…。(許せないでしょ?最愛の人が襲われたら…。)

愛するウミに一途でピュアなソラは無色透明の涙を流し、ウミの胸に顔を埋めてシクシク泣いた。

「消化器で襲われた俺の事を想ってやってくれたんだろ?
夫としてすげえ嬉しいよ!
同時にそんなおまえの気持ちをないがしろにして悪かった。
でもな、これ以上はやらなくていいんだ。」

「はぁい…。」

「もうギグは終いだな。撤収するか。」

「待って、ウミィ…。私の事、何をしでかすかわからないアブナイ女だと思ったよね?」

「アブナイ女っつーか、だなって思ったな、俺は。」

「ロック…。」

「そうだ。ロックだ!」

「…褒め言葉だよね?」

「サイコーの褒め言葉に決まってんじゃん!」

「愛してるぅぅぅ!」

ソラはウミの首を掴み、背伸びをしてキスをした。

「おまえ、みんな見てんだぞ!お義母さんだっているのに!」

「いいもん。ママが見ていようが関係ないわ。
結婚しているのだから、あの頃みたいにとやかく言わせないよぉ。」

ミカミを追っていたオオニシ、ユウシン、トモキも砂城院家の従業員とともに会場へやってきた。

茫然とする観客をよそに、サングラスをかけた従業員の男がミカミに腰紐を結び、怪我を考慮せず乱暴に拘束した。


























































しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

処理中です...