私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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迫り来る恐怖!

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ミカミは非常階段を下りていく。
慌てふためく変態ネズミは段差を踏みはずして転倒した。
頭を強打したが、痛みを感じることもないくらい興奮状態であった。

すぐに立ち上がり1階の非常階段のドアを思い切り開けた。
通路口に飛び出したミカミは、勢いあまって壁に激突した。
顔面をぶつけた際、鼻から出血して衣服や床に血痕が付着している。

通路は外へ通じる非常口とホールへ繋がる経路がある。

トランクスしか身に付けていないミカミはウミがライブを行なっているホール側へ走り出した。



「あの男は何をやっているんだ?
ライブをぶち壊す約束を放棄して逃げたんじゃないのか?」

「ふざけた野郎ですよ。」

ニシとギタリストがミカミと交わした約束を反故にされたと思い後悔を口にしている最中、ミカミは追ってから死ぬ物狂いで逃げていた。



「オガタ!ソラちゃんを護衛するのよ!
砂城院家の威信にかけて、絶対に擦り傷一つ負わせてはならないわ!」

残った砂城院家の従業員をかき集め、タフな男達がバリケードとなってソラを守り始めた。

「お母さんとヒロコさんはあたしから離れないで!」

「私なら大丈夫よ!」

「そんなセクシーな格好で何ができるっての!
こんな一大事に娘のあたしに変な対抗心を燃やさないでくんない?」

「まぁ、この子ったら!」

「お母さん?油断しちゃいけないですよ!アイツ、本当に凶悪なんだから!
ウチは実体験から言っているんですからね!」

セラ、ユラ、ヒロコは爆音のなかミカミの奇襲について大声で話している。




「ここにもいねえ!どこへ行きやがったんだ?」

オオニシは男子便所から怒鳴りながら出てきた。

「まるで神隠しだ…。」

不思議そうにユウシンが小さな窓から外を見る。

「おい!こっちだ!非常階段から逃げたようだぞ!」

砂城院家の従業員が仲間に伝えている。
黒服の男達が険しい顔つきで非常階段を足音を鳴らして下りていく。

オオニシとユウシンがその発言を聞いて、砂城院家の男達に続いた。

「2人とも待てよ!変態ネズミを捕まえるのはこの俺だ!」

好戦的なトモキが遅れながらも非常階段へと向かう。




舞台袖にはきっとアイツらが待ち伏せしているはずだ。
守られているであろう女神にはもう手を出せない。
一か八か、正面切ってホールの出入り口から強行突破するしかない。

正面入り口に到着すると、砂城院家の従業員は1人もいなかった。
オガタの指示によりミカミを追う者と、ソラの護衛をする者とで人員が手薄になっていたのが原因だ。

「忍び込めるぞ!」

その際、設置されている消化器が目に入る。
ミカミは消化器を手にして観客席に潜り込んだ。

爆音で迎えられたミカミは息を飲んだ。
大勢の人でごった返す観客席はオールスタンディングの為、人の渦だ。

ウミがアウェーだった会場を愛してやまないエレキギターで、命を削るかの如く全身全霊でロックを鳴り響かせている。

ロックの申し子の神懸かった魅力に突き動かされたオーディエンスは、モッシュをしており盛り上がりが最高潮だ。

今更、戻る事などできないミカミはカオスと化した人の熱気の中へ突っ込んでいく。

荒波に飲み込まれたかのように何度も人の海に揉まれて、観客席のなかを前後左右に流さていく。
時にダイブを試みた血気盛んな男達に頭や肩を蹴られながらも、ようやくステージ中央付近に辿り着く。

スポットライトを浴びて歌いながらギターを弾くウミを見てハラワタが煮えくりだした。























































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