私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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招かれざる客…

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「俺達は、ミュージシャンだ。
ロックをやってる。」

ウミはドライにそう言うと、ドラムのカズに指で合図を送った。

「Where Are They Now ?」

曲のタイトルを叫んだ。

「捕まればスーツ姿の小さな道化者
虚栄心で塗り固めた存在
イメージ戦略はミュージックビデオの中で息巻いている
メッキが捲れて嘲笑の餌食
Blood 細い針が巡る
smoke 吸い込んでハイになる
Pleasure 無警戒に溺れる
Oh!事が終わればミソギ
髪を黒く染め直して
I'm different from you 

赦しを請う場は無数のカメラと清廉ぶったマイク
涙が溢れる孤独な芝居
過去のインタビュー記事は悪辣だったのに
今では無様に謝罪している

Blood 細い針で巡る
smoke 吸い込んでハイになる
pleasure 無警戒に溺れる
Oh!事が過ぎ去れば誰もが
君の悪事もキミの存在さえも忘れてくれるさ
I'm different from you

Where Are They Now ? アハハハ!」


歌い終えた瞬間、ウミは観客席へダイブした。

「スッゲー盛り上がり!」

セラは母の耳元で言う。

「さっきまで一緒に同じステージに立ってたんだよね。」

腕の見せ所といわんばかりにヒロコはカメラでステージの熱狂を撮り続けている。



「時間がない早くしろ、おっさん。」

ドレッシングルームから持ってきたキャップや伊達メガネをミカミに渡して、変装をさせた。

「まだ27歳の青年だぞう!」

「いいから早くしろよ。俺のバンドはもうすぐ出番なんだぞ。」


入り口には砂城院家の従業員が無表情でガードをしている。

「こんな奴らここのハコにはいなかったはずなんだけどな。」

「俺を女神から近づかせないように、砂城院家がセキュリティをしているんだ。
ギター野郎も女神も、砂城院家の車で送迎してもらっていたのを見ているからわかるんだよ。」

「ゲッ!こいつら、あのヤバイ噂がある砂城院家かい!参ったな…。」

ギタリストは顔を引き攣らせている。

「まあ仕方ない、このまま計画は実行する。
まずは第一の関門はクリアさせてやるよ。
さぁ、入るぞ。」

柔道やラグビーをやっているような体格の男が眉間に皺を寄せてやってきた2人を見ている。

「俺は、ザ・マイドリーム・スクラッチのメンバーだ。
俺の知人をAAパイナップルホールのライブに招待したい。
通してくれ。」

キャップを深く被ったミカミは緊張のあまり生唾をゴクリと飲んだ。
怪しまれないよう自然体を装うつもりでいたが、ギクシャクした動きをとってしまっている。

砂城院家の従業員は何も言わず黙ってミカミを見た後、ギタリストを見た。
またもう一度、ミカミに視線を戻す。
ボディチェックをした後、従業員はインカムで状況を報告している。

奥から砂城院家の従業員が3人やってきた。
そのうちの1人は背の高い女だった。

新たにやってきた3人も無表情で2人を見る。
特に変装をしたミカミが怪しまれているようだ。

「身分証を見せろ。」

サングラスをかけた長身の女が言う。

「おいおい?コイツは俺の知人だぞ。
その必要はないだろうが。」

ギタリストは反論した。

「見せられない理由があるのか?」

体格の良い強そうな男が低い声でギタリストに言った。

「だからその態度はなんなんだっての。
俺の知人に失礼じゃねえか?
そもそも、このホールのキャパを知っているだろ?
客は落ちぶれた神園ウミより俺を見に来ているんだぞ?」

「そんな事は理由にならん。身分証を見せろ。
でなければここは通すわけにはならん。」

「頭の硬いヤツだな。」

ギタリストが呆れたように話した時、鋭い蹴りが飛んできた。
蹴られたのはギタリストではなく、ミカミであった。

「ギャア!」

「貴様、私に対してその目はなんだ。」

長身の美人な女が言う。

「コイツなんかしましたっけ?」

長身の女は表情を変えず何も答えない。

ミカミは土下座をして謝った。

「ゴホゴホ、あ、あなたが美人だったのでつい、み、見惚れてしまったのです。
どうかお許してください!」

「何をやっているのですか?」

後ろからプロデューサーのニシがスーツのボタンをかけながらやってきた。













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