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招かれざる客…
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「あの、みなさん!ミカミが現れましたよ!」
トモキがステージ袖でいるソラ達に告げた。
「ミカミが!?」
「脅迫状を書いたのは、やっぱしあの野郎だったか!
姉貴、向こうからノコノコやってきたんだ。
今度こそは取っ捕まえていい加減、決着つけおう?」
「その男がソラちゃんを狙い会場周辺にいても、指一本手出し出来ませんわ!
砂城院家がネズミ1匹侵入を許しません!」
ライブは爆音の為、3人の娘は大声で話している。
「うん!かつらちゃん家の方々を信じてる…!」
とは言ったものの、ソラは不安を払拭できずにいた。
ウミは卓越したテクニックでギターソロを気持ち良さそうに弾いている。
オーディエンスは盛り上がりを見せ、青いスポットライトがウミを鮮やかに照らした。
もしミカミが砂城院家の監視する網の目を潜り抜け、ステージ近くまで来てしまったらーーーー
ライブに集中しているウミは無防備だ。
何かしらの凶器を所持したミカミの手によって襲撃されてしまったらーーーー
自分自身がミカミに襲われている事も忘れ、夫であるウミの身を優先し最悪な事態を想定したソラはライブを楽しめなくなっていた。
「おい。どこへ行くんだい?
もうそろそろ我々の出番だが。」
「まだまだ時間はあります。
俺、ちょっとだけ席を外しますよ。」
ドレッシングルームに備え付けられた壁掛け時計を見てニシに伝えた。
コツコツコツコツ
俺らのファンもヤツのバンドになびいて盛り上がってきてやがる!
ニシのおっさんも俺よりウミの方が上だってほさぎやがって!
ジェラシーをたぎらせるギタリストは一息入れに会場を出た。
喫煙所がないにも関わらず、ポケットから取り出した煙草を咥えて一服をはじめた。
「ふぅー。」
確かに一般大衆ウケする商業主義的な意味合いのポップさはあまりない。
しかし全てにおいてウミの方がアーティストとして、優れているのはギタリストも感じていた。
負けてるのか。畜生!
持っていた煙草を、手入れが行き届いた花壇に叩きつけるように投げ捨てた。
それからすぐ、2本目の煙草を咥えて火を点ける。
「ふぅ。クソが。」
ギタリストは歩き煙草で会場の裏をふらつく。
外は付近を走る車のライトと会場の街灯くらいだったが、あまり暗くは感じない。
ポツポツ…
雨粒が身体に当たる。
反射的に空を見上げると、垂直の壁に張り付く人影のようなものがボンヤリ見えた。
不審に思いギタリストは壁際まで近づいていく。
やはり人だ。
男だ。
男はプルプル身体を震わせている。
「あんた、そこで何をやっているんだ?」
ギタリストに呼びかけられた男は声をかけられた事で慌て始め落下した。
ドシン。
「ぎゃあ。いたたたぁ。」
2メートルほどの高さから落下したが怪我を負うほどではない。
「なんだおまえは!」
逃げ出そうにも、ミカミは腰を強打した為、トモキに蹴られた時のように逃げられなかった。
「ヒ、ヒィ!ゆ、許してください。俺はライブを観たいだけなんです。」
「おまえはここへ侵入しようとしたわけだな?
最低なヤツだ!
そんな行為が許されるわけないだろう。
みんな金を払ってチケットを買ってくれたんだぞ。
それも俺を観にな!」
「はぁ?」
「俺はこの後、ライブに出演する"マイ・ドリーム・スクラッチ"のギタリストだ。
俺のファンにおまえのようなクズはいない。
神園ウミがやっているバンドのファンだろ?」
ギタリストは睨みを効かせながらミカミに詰め寄って言った。
「ち、違います。違いますって!
アベコベです!
俺はその神園ウミが憎くて殺したいぐらいなんです!
でも、思った以上にガードが固くて忍び込めなかった。
そんな時、上を見たら2階の窓が開いていたんで、その…そこから入り込んでやろうかなと…。」
ギタリストは会場内の施設警備員を呼ぼうか考えたがある思惑が頭に浮かんだ。
「おまえ警察に突き出されたくなきゃ会場に侵入した後、神園ウミに何をするつもりだったのか答えろ。
正直に答えれば警察に突き出さず、中へ入れてやってもいいぞ。」
トモキがステージ袖でいるソラ達に告げた。
「ミカミが!?」
「脅迫状を書いたのは、やっぱしあの野郎だったか!
姉貴、向こうからノコノコやってきたんだ。
今度こそは取っ捕まえていい加減、決着つけおう?」
「その男がソラちゃんを狙い会場周辺にいても、指一本手出し出来ませんわ!
砂城院家がネズミ1匹侵入を許しません!」
ライブは爆音の為、3人の娘は大声で話している。
「うん!かつらちゃん家の方々を信じてる…!」
とは言ったものの、ソラは不安を払拭できずにいた。
ウミは卓越したテクニックでギターソロを気持ち良さそうに弾いている。
オーディエンスは盛り上がりを見せ、青いスポットライトがウミを鮮やかに照らした。
もしミカミが砂城院家の監視する網の目を潜り抜け、ステージ近くまで来てしまったらーーーー
ライブに集中しているウミは無防備だ。
何かしらの凶器を所持したミカミの手によって襲撃されてしまったらーーーー
自分自身がミカミに襲われている事も忘れ、夫であるウミの身を優先し最悪な事態を想定したソラはライブを楽しめなくなっていた。
「おい。どこへ行くんだい?
もうそろそろ我々の出番だが。」
「まだまだ時間はあります。
俺、ちょっとだけ席を外しますよ。」
ドレッシングルームに備え付けられた壁掛け時計を見てニシに伝えた。
コツコツコツコツ
俺らのファンもヤツのバンドになびいて盛り上がってきてやがる!
ニシのおっさんも俺よりウミの方が上だってほさぎやがって!
ジェラシーをたぎらせるギタリストは一息入れに会場を出た。
喫煙所がないにも関わらず、ポケットから取り出した煙草を咥えて一服をはじめた。
「ふぅー。」
確かに一般大衆ウケする商業主義的な意味合いのポップさはあまりない。
しかし全てにおいてウミの方がアーティストとして、優れているのはギタリストも感じていた。
負けてるのか。畜生!
持っていた煙草を、手入れが行き届いた花壇に叩きつけるように投げ捨てた。
それからすぐ、2本目の煙草を咥えて火を点ける。
「ふぅ。クソが。」
ギタリストは歩き煙草で会場の裏をふらつく。
外は付近を走る車のライトと会場の街灯くらいだったが、あまり暗くは感じない。
ポツポツ…
雨粒が身体に当たる。
反射的に空を見上げると、垂直の壁に張り付く人影のようなものがボンヤリ見えた。
不審に思いギタリストは壁際まで近づいていく。
やはり人だ。
男だ。
男はプルプル身体を震わせている。
「あんた、そこで何をやっているんだ?」
ギタリストに呼びかけられた男は声をかけられた事で慌て始め落下した。
ドシン。
「ぎゃあ。いたたたぁ。」
2メートルほどの高さから落下したが怪我を負うほどではない。
「なんだおまえは!」
逃げ出そうにも、ミカミは腰を強打した為、トモキに蹴られた時のように逃げられなかった。
「ヒ、ヒィ!ゆ、許してください。俺はライブを観たいだけなんです。」
「おまえはここへ侵入しようとしたわけだな?
最低なヤツだ!
そんな行為が許されるわけないだろう。
みんな金を払ってチケットを買ってくれたんだぞ。
それも俺を観にな!」
「はぁ?」
「俺はこの後、ライブに出演する"マイ・ドリーム・スクラッチ"のギタリストだ。
俺のファンにおまえのようなクズはいない。
神園ウミがやっているバンドのファンだろ?」
ギタリストは睨みを効かせながらミカミに詰め寄って言った。
「ち、違います。違いますって!
アベコベです!
俺はその神園ウミが憎くて殺したいぐらいなんです!
でも、思った以上にガードが固くて忍び込めなかった。
そんな時、上を見たら2階の窓が開いていたんで、その…そこから入り込んでやろうかなと…。」
ギタリストは会場内の施設警備員を呼ぼうか考えたがある思惑が頭に浮かんだ。
「おまえ警察に突き出されたくなきゃ会場に侵入した後、神園ウミに何をするつもりだったのか答えろ。
正直に答えれば警察に突き出さず、中へ入れてやってもいいぞ。」
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