254 / 275
招かれざる客…
253
しおりを挟む
「あの、みなさん!ミカミが現れましたよ!」
トモキがステージ袖でいるソラ達に告げた。
「ミカミが!?」
「脅迫状を書いたのは、やっぱしあの野郎だったか!
姉貴、向こうからノコノコやってきたんだ。
今度こそは取っ捕まえていい加減、決着つけおう?」
「その男がソラちゃんを狙い会場周辺にいても、指一本手出し出来ませんわ!
砂城院家がネズミ1匹侵入を許しません!」
ライブは爆音の為、3人の娘は大声で話している。
「うん!かつらちゃん家の方々を信じてる…!」
とは言ったものの、ソラは不安を払拭できずにいた。
ウミは卓越したテクニックでギターソロを気持ち良さそうに弾いている。
オーディエンスは盛り上がりを見せ、青いスポットライトがウミを鮮やかに照らした。
もしミカミが砂城院家の監視する網の目を潜り抜け、ステージ近くまで来てしまったらーーーー
ライブに集中しているウミは無防備だ。
何かしらの凶器を所持したミカミの手によって襲撃されてしまったらーーーー
自分自身がミカミに襲われている事も忘れ、夫であるウミの身を優先し最悪な事態を想定したソラはライブを楽しめなくなっていた。
「おい。どこへ行くんだい?
もうそろそろ我々の出番だが。」
「まだまだ時間はあります。
俺、ちょっとだけ席を外しますよ。」
ドレッシングルームに備え付けられた壁掛け時計を見てニシに伝えた。
コツコツコツコツ
俺らのファンもヤツのバンドになびいて盛り上がってきてやがる!
ニシのおっさんも俺よりウミの方が上だってほさぎやがって!
ジェラシーをたぎらせるギタリストは一息入れに会場を出た。
喫煙所がないにも関わらず、ポケットから取り出した煙草を咥えて一服をはじめた。
「ふぅー。」
確かに一般大衆ウケする商業主義的な意味合いのポップさはあまりない。
しかし全てにおいてウミの方がアーティストとして、優れているのはギタリストも感じていた。
負けてるのか。畜生!
持っていた煙草を、手入れが行き届いた花壇に叩きつけるように投げ捨てた。
それからすぐ、2本目の煙草を咥えて火を点ける。
「ふぅ。クソが。」
ギタリストは歩き煙草で会場の裏をふらつく。
外は付近を走る車のライトと会場の街灯くらいだったが、あまり暗くは感じない。
ポツポツ…
雨粒が身体に当たる。
反射的に空を見上げると、垂直の壁に張り付く人影のようなものがボンヤリ見えた。
不審に思いギタリストは壁際まで近づいていく。
やはり人だ。
男だ。
男はプルプル身体を震わせている。
「あんた、そこで何をやっているんだ?」
ギタリストに呼びかけられた男は声をかけられた事で慌て始め落下した。
ドシン。
「ぎゃあ。いたたたぁ。」
2メートルほどの高さから落下したが怪我を負うほどではない。
「なんだおまえは!」
逃げ出そうにも、ミカミは腰を強打した為、トモキに蹴られた時のように逃げられなかった。
「ヒ、ヒィ!ゆ、許してください。俺はライブを観たいだけなんです。」
「おまえはここへ侵入しようとしたわけだな?
最低なヤツだ!
そんな行為が許されるわけないだろう。
みんな金を払ってチケットを買ってくれたんだぞ。
それも俺を観にな!」
「はぁ?」
「俺はこの後、ライブに出演する"マイ・ドリーム・スクラッチ"のギタリストだ。
俺のファンにおまえのようなクズはいない。
神園ウミがやっているバンドのファンだろ?」
ギタリストは睨みを効かせながらミカミに詰め寄って言った。
「ち、違います。違いますって!
アベコベです!
俺はその神園ウミが憎くて殺したいぐらいなんです!
でも、思った以上にガードが固くて忍び込めなかった。
そんな時、上を見たら2階の窓が開いていたんで、その…そこから入り込んでやろうかなと…。」
ギタリストは会場内の施設警備員を呼ぼうか考えたがある思惑が頭に浮かんだ。
「おまえ警察に突き出されたくなきゃ会場に侵入した後、神園ウミに何をするつもりだったのか答えろ。
正直に答えれば警察に突き出さず、中へ入れてやってもいいぞ。」
トモキがステージ袖でいるソラ達に告げた。
「ミカミが!?」
「脅迫状を書いたのは、やっぱしあの野郎だったか!
姉貴、向こうからノコノコやってきたんだ。
今度こそは取っ捕まえていい加減、決着つけおう?」
「その男がソラちゃんを狙い会場周辺にいても、指一本手出し出来ませんわ!
砂城院家がネズミ1匹侵入を許しません!」
ライブは爆音の為、3人の娘は大声で話している。
「うん!かつらちゃん家の方々を信じてる…!」
とは言ったものの、ソラは不安を払拭できずにいた。
ウミは卓越したテクニックでギターソロを気持ち良さそうに弾いている。
オーディエンスは盛り上がりを見せ、青いスポットライトがウミを鮮やかに照らした。
もしミカミが砂城院家の監視する網の目を潜り抜け、ステージ近くまで来てしまったらーーーー
ライブに集中しているウミは無防備だ。
何かしらの凶器を所持したミカミの手によって襲撃されてしまったらーーーー
自分自身がミカミに襲われている事も忘れ、夫であるウミの身を優先し最悪な事態を想定したソラはライブを楽しめなくなっていた。
「おい。どこへ行くんだい?
もうそろそろ我々の出番だが。」
「まだまだ時間はあります。
俺、ちょっとだけ席を外しますよ。」
ドレッシングルームに備え付けられた壁掛け時計を見てニシに伝えた。
コツコツコツコツ
俺らのファンもヤツのバンドになびいて盛り上がってきてやがる!
ニシのおっさんも俺よりウミの方が上だってほさぎやがって!
ジェラシーをたぎらせるギタリストは一息入れに会場を出た。
喫煙所がないにも関わらず、ポケットから取り出した煙草を咥えて一服をはじめた。
「ふぅー。」
確かに一般大衆ウケする商業主義的な意味合いのポップさはあまりない。
しかし全てにおいてウミの方がアーティストとして、優れているのはギタリストも感じていた。
負けてるのか。畜生!
持っていた煙草を、手入れが行き届いた花壇に叩きつけるように投げ捨てた。
それからすぐ、2本目の煙草を咥えて火を点ける。
「ふぅ。クソが。」
ギタリストは歩き煙草で会場の裏をふらつく。
外は付近を走る車のライトと会場の街灯くらいだったが、あまり暗くは感じない。
ポツポツ…
雨粒が身体に当たる。
反射的に空を見上げると、垂直の壁に張り付く人影のようなものがボンヤリ見えた。
不審に思いギタリストは壁際まで近づいていく。
やはり人だ。
男だ。
男はプルプル身体を震わせている。
「あんた、そこで何をやっているんだ?」
ギタリストに呼びかけられた男は声をかけられた事で慌て始め落下した。
ドシン。
「ぎゃあ。いたたたぁ。」
2メートルほどの高さから落下したが怪我を負うほどではない。
「なんだおまえは!」
逃げ出そうにも、ミカミは腰を強打した為、トモキに蹴られた時のように逃げられなかった。
「ヒ、ヒィ!ゆ、許してください。俺はライブを観たいだけなんです。」
「おまえはここへ侵入しようとしたわけだな?
最低なヤツだ!
そんな行為が許されるわけないだろう。
みんな金を払ってチケットを買ってくれたんだぞ。
それも俺を観にな!」
「はぁ?」
「俺はこの後、ライブに出演する"マイ・ドリーム・スクラッチ"のギタリストだ。
俺のファンにおまえのようなクズはいない。
神園ウミがやっているバンドのファンだろ?」
ギタリストは睨みを効かせながらミカミに詰め寄って言った。
「ち、違います。違いますって!
アベコベです!
俺はその神園ウミが憎くて殺したいぐらいなんです!
でも、思った以上にガードが固くて忍び込めなかった。
そんな時、上を見たら2階の窓が開いていたんで、その…そこから入り込んでやろうかなと…。」
ギタリストは会場内の施設警備員を呼ぼうか考えたがある思惑が頭に浮かんだ。
「おまえ警察に突き出されたくなきゃ会場に侵入した後、神園ウミに何をするつもりだったのか答えろ。
正直に答えれば警察に突き出さず、中へ入れてやってもいいぞ。」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

犬とスローライフを送ってたら黒い噂のある公爵に突然求婚された令嬢
烏守正來
恋愛
マリエラはのんびりした性格の伯爵令嬢。美人で華やかな姉や優秀な弟とは違い、自他ともに認める凡人。社交も特にせず、そのうち田舎貴族にでも嫁ぐ予定で、飼い犬のエルディと悠々暮らしていた。
ある雨の日、商談に来ていた客人に大変な無礼を働いてしまったマリエラとエルディだが、なぜかその直後に客人から結婚を申し込まれる。
客人は若くして公爵位を継いだ美貌の青年だが、周りで不審死が相次いだせいで「血塗れの公爵」の二つ名を持つ何かと黒い噂の多い人物。
意図がわからず戸惑うマリエラはその求婚をお断りしようとするが。
________________
※完結しました! 執筆状態を「完結」にするともう話を追加できないのを知らず、何のコメントもないまま普通に終わらせてしまいましたが、読んでくださった方、応援してくださった方ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる