私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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「おい。」

ミカミが振り返ると、トモキはすぐに前蹴りを腹に入れた。
手加減をするつもりはなかった。

「ぐぇ!」

「前回は逃げらちゃったからな。
でもこれで逃げられないだろ、変態ネズミ。」

会場の敷地内でミカミは腹を抱えて膝から倒れ込んだ。
あまりの痛みに身体を左右に動かしている。

「トモキくん。」

「一撃でコイツを成敗した。
確かおまえは突き飛ばされていたな?今なら逃走される事もない。
リベンジしたらどうだ?」

「リベンジっていったって、これは。」

今まで味わった事のない痛みにミカミは苦しんでいる。

「なんだ?トモキ。コイツはソラさん達を苦しめたクズなんだぞ。
遠慮せずにやっちまえよ、こうやってな。」

腹を蹴られ苦しそうにしているミカミに、再び蹴りを見舞おうとするがユウシンは止めに入った。

「これ以上はダメだ。コイツ死んでしまうよ。」

「ハッ!こんな事くらいで人は死なねえから。」

「いきなり蹴りやがって。」

「お、まだ話ができるんだな?ほら、来いよ?変態ネズミ。」

「ぶっ殺してやるよ!クソガキぃぃぃ!」

「トモキくん!」

ミカミは立ち上がると、一目散に逃げ出した。

「え?」

トモキとユウシンから遠ざかっているのはミカミで間違いない。
数十秒前まで怒鳴り散らし、トモキに対しやり返そうとした男が逃走を図っているのを見て2人は事態を飲み込めずにいる。

「やり返してくるかと思ったんだけどな、頭がバグるってこういう事か、ユウシン?」

「使い方は間違ってないんじゃないかな?」

「ひとまず、ソラさん達に連絡すっか?」

「うん。会場へ戻ろう。」

情けない男の後ろ姿を見て追いかける気にもなれなかった。

冬の冷たい木枯らしが2人の頬を冷やしていく。


*****


ザ・マイドリーム・スクラッチを目当てに集まった観客ばかりでアウェーの空間ではあったが、ウミ達の奏でる音と声に耳を傾けて聴く者も少なからず集まってきている。

「まだギグではやってない曲をここで。IN THE FUTURE!」

媚びる事もなくウミは淡々と曲を紹介した。

ヘヴィで破壊的な曲が続いたなか、メロディックなPUNKROCKナンバーで会場を激しく揺さぶった。


「屈辱に別れを告げて
アスファルトを鳴らせ
スニーカーがすり減るまで走ろう
これ以上自分を嫌いたくないなら
他人のストーリーには組み込まれないで
背中を押す言葉は空から舞い降りた天使
今夜抜け出そう 断崖絶壁に追い詰められたら
飛び込め 夢みる世界へ

月まで遥か彼方
そんなのわかってる
GET UP 安物のチェアに座ってしょげてる場合じゃないだろ
代わりを差し向けられたら
Drop Out  自分だけのストーリーを作れ
終わってないぜ 始まったんだ
今夜抜け出そう 張り巡らされた
悪意を掻い潜り 奴らを出し抜け

夢を追いかけて酔いしれよう
悲しみのなか無駄に血を流すより
理想の未来へ スピード上げて
まだまださ 掴めなくても
上手くいかなくてもあの頃に戻りたくない

夢を追いかけて酔いしれよう
無気力に潰れて 髪を掻きむしるより
確信がなくても diveする
手枷を外したら自分の名前がきっと見つかるさ」


正規のメンバーが揃ってからMCもせず3曲立て続けに熱唱した。
オーディエンスからの拍手が増え、フロントマンであるウミを見る目が明らかに変化した瞬間だった。



「グランジみたいな曲から、こんな曲もあるのか。」

ザ・マイドリーム・スクラッチのギタリストは言った。

「彼、新曲を作り続けたみたいだね。
私が知っている曲は、まだ1曲もやってないよ。」

伸ばした髪をニシは撫でつけている。

「ウミの野郎。どんどん成長していきやがる…。」

「初めから君より向こうが上さ。
でも安心したまえ。君らのバンドの方が世間ではとっつきやすい。
この私の言う通りに活動しているからね。」





























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