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これじゃどうする事もできねえよ!!
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「遅い…。あいつらは何をやってんだよ?」
ドラマーのカズに連絡するものの繋がらないままだ。
本来であればライブ前にリハをしなければならないのだが、一向にメンバーが会場にやってくる気配がない。
今までの人生で味わった事のない焦りが一気に押し寄せてくる。
どうする事もできず、仕方なく自分のドレッシングルームに引っ込もうと廊下を歩いている時だった。
ザ・マイドリーム・スクラッチのメンバーが陣取るドレッシングルームのドアが半分ほど開き、中が少し見えている。
「ちょっとトイレ行ってきます!」
聞き覚えのある憎たらしい男の声が聞こえてきた。
ウミは構わず廊下を歩いた。
一瞬、ウミと鉢合わせして驚いた顔をした因縁のあるギタリストだったが、人気もライブの動員数も圧倒的に勝っている。
ここらで1発食らわせてやろうと挑発した。
「おぉウミじゃん!どうした?ボッチで寂しそうだな。
俺達はトリだからよ、前座のおまえがよく暖めておくんだぞ。
今やドサ周りのお前とはな、スケールが違う、世界が違う!
俺達、武道館まで行くぜ!」
ウミはドレッシングルームのドアノブを回す。
まだ言い足りないギタリストは矢継ぎ早に言った。
「今日はおまえ、独りだってな?
ヒッヒッヒッヒッ!」
ドアノブを握るウミは今までに見せた事のない恐ろしい目つきでギタリストを睨んだ。
もしかしたら愛する者を殺害されて復讐に取り憑かれた男の目とは、このような目つきなのかもしれない。
ヘラヘラした態度から一変、ギタリストは心臓を踏みつけられたような恐怖心に襲われた。
事を見ていたスーツ姿のニシが急いでやってきて、ギタリストに小声で注意をしている。
ニシはガッシリ肩を掴んでギタリストとトイレに向かった。
「おまえ、調子に乗ってウミに余計な事を言ってはイカンぞ。
もし秘密をバラしたらーーーー」
「はいはい。わかってますって、ニシ先生。
ただアイツが哀れな顔をだったから揶揄いたくなったんです。」
ドレッシングルームのソファに音を立てて座り込んだウミは、もう一度、ドラマーのカズに着信を入れたが応答はない。
それからすぐ、2人の新メンバーにも電話をしたが音信不通だ。
「クソッ…。」
スマホで時刻を見ると、出番が差し迫っている。
居ても立っても居られなくなったウミは、再度スマホでカズに連絡をする。
長い呼び出し音が独りには広い趣きのあるドレッシングルームに響き渡るだけで、相変わらず会話さえできない。
乱暴に冷蔵庫のドアを開けてコーラを取り出しグビグビ飲み始めた。
ライブ前の雰囲気を大事にするウミが手にしているのはペットボトルではなく、レトロな瓶のコーラだ。
悩みに悩む頭の中は、メンバーが揃ってライブを行う事が可能なのか、そればかりだった。
デカイ会場でやるのを、土壇場になってビビって逃げたのか?
そんな想像もしてみたがあり得ないだろう。
前日の夜だって4人でリハをして入念に準備をし、成功を信じて熱く語りあかしたからだ。
単純に車が渋滞に巻き込まれているのかと考えたが、その可能性がないのはすぐわかった。
カズは新メンバー2人を拾って3人で会場入りをする手筈だったからだ。
カズが運転する為、通話ができなかったとしても新メンバーのどちらかが応答するだろう。
コンコン
悶々とするウミはドアをノックされている事に気付く。
カズ達が来たと思い、ウミは怒りより安堵の気持ちが勝った。
「ばっきゃろぉ!遅えんだよてめえら!」
力任せにドアを開けた先にはソラ達が立っていた。
ドラマーのカズに連絡するものの繋がらないままだ。
本来であればライブ前にリハをしなければならないのだが、一向にメンバーが会場にやってくる気配がない。
今までの人生で味わった事のない焦りが一気に押し寄せてくる。
どうする事もできず、仕方なく自分のドレッシングルームに引っ込もうと廊下を歩いている時だった。
ザ・マイドリーム・スクラッチのメンバーが陣取るドレッシングルームのドアが半分ほど開き、中が少し見えている。
「ちょっとトイレ行ってきます!」
聞き覚えのある憎たらしい男の声が聞こえてきた。
ウミは構わず廊下を歩いた。
一瞬、ウミと鉢合わせして驚いた顔をした因縁のあるギタリストだったが、人気もライブの動員数も圧倒的に勝っている。
ここらで1発食らわせてやろうと挑発した。
「おぉウミじゃん!どうした?ボッチで寂しそうだな。
俺達はトリだからよ、前座のおまえがよく暖めておくんだぞ。
今やドサ周りのお前とはな、スケールが違う、世界が違う!
俺達、武道館まで行くぜ!」
ウミはドレッシングルームのドアノブを回す。
まだ言い足りないギタリストは矢継ぎ早に言った。
「今日はおまえ、独りだってな?
ヒッヒッヒッヒッ!」
ドアノブを握るウミは今までに見せた事のない恐ろしい目つきでギタリストを睨んだ。
もしかしたら愛する者を殺害されて復讐に取り憑かれた男の目とは、このような目つきなのかもしれない。
ヘラヘラした態度から一変、ギタリストは心臓を踏みつけられたような恐怖心に襲われた。
事を見ていたスーツ姿のニシが急いでやってきて、ギタリストに小声で注意をしている。
ニシはガッシリ肩を掴んでギタリストとトイレに向かった。
「おまえ、調子に乗ってウミに余計な事を言ってはイカンぞ。
もし秘密をバラしたらーーーー」
「はいはい。わかってますって、ニシ先生。
ただアイツが哀れな顔をだったから揶揄いたくなったんです。」
ドレッシングルームのソファに音を立てて座り込んだウミは、もう一度、ドラマーのカズに着信を入れたが応答はない。
それからすぐ、2人の新メンバーにも電話をしたが音信不通だ。
「クソッ…。」
スマホで時刻を見ると、出番が差し迫っている。
居ても立っても居られなくなったウミは、再度スマホでカズに連絡をする。
長い呼び出し音が独りには広い趣きのあるドレッシングルームに響き渡るだけで、相変わらず会話さえできない。
乱暴に冷蔵庫のドアを開けてコーラを取り出しグビグビ飲み始めた。
ライブ前の雰囲気を大事にするウミが手にしているのはペットボトルではなく、レトロな瓶のコーラだ。
悩みに悩む頭の中は、メンバーが揃ってライブを行う事が可能なのか、そればかりだった。
デカイ会場でやるのを、土壇場になってビビって逃げたのか?
そんな想像もしてみたがあり得ないだろう。
前日の夜だって4人でリハをして入念に準備をし、成功を信じて熱く語りあかしたからだ。
単純に車が渋滞に巻き込まれているのかと考えたが、その可能性がないのはすぐわかった。
カズは新メンバー2人を拾って3人で会場入りをする手筈だったからだ。
カズが運転する為、通話ができなかったとしても新メンバーのどちらかが応答するだろう。
コンコン
悶々とするウミはドアをノックされている事に気付く。
カズ達が来たと思い、ウミは怒りより安堵の気持ちが勝った。
「ばっきゃろぉ!遅えんだよてめえら!」
力任せにドアを開けた先にはソラ達が立っていた。
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