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これじゃどうする事もできねえよ!!
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(ライブ本番当日の昼)
サングラス、黒いスーツという出立ちでマンションまで迎えに来ている砂城院家の従業員達がウミを出迎えた。
「おっ、すっげぇ雰囲気あるな。
こんな人らが会場まで送ってくれるんだ。
やる気が漲ってくるぜ!」
不安げなソラがセラと見送りにきている。
「ウミィ…。」
「安心しろよ。あの砂城院家が全面的にバックアップしてくれてるんだぜ?
大船に乗ったつもりってのは、この事を指すんだな!」
ご機嫌ななめのウミは、ヴァンヘイレンの「Jump」を歌い出した。
「うん。かつらちゃん家の方々だから私も心強いよぉ。
でもね、妻だから愛する旦那様が心配なの。
もし、ウミの身に何かあったら私…。」
「おいおいソラァ?大丈夫だっての。俺の心配は無用だ。」
「そんな事言ったって心配するもん。
出来る事ならライブは今すぐやめてほしいもん。」
白いエプロン姿のソラは、まるで命を賭けて決闘に向かう男を止めるかのような深刻な精神状態だ。
「俺だけでなくおまえもミカミに狙われているんだぞ。
自分の事より、野郎である俺の身ばかり心配してんだもんよ…おまえらしいよな。」
「だって…。」
「さっきも言った通り、庭にグランドキャニオンを作るような連中だ。
ひ弱な変態ネズミが忍び込めるスペースなんてねえよ。」
「私、嫌な予感がするよぉ…。」
ジャケットを掴み、上目遣いで夫を見つめる。
「ガハハ大丈夫だっての!」
ウミはソラにキスをして、頭を手でポンポン撫でた。
「じゃ、行ってきます!セラちゃんも今夜のギグを楽しんでくれよ!」
「うんお義兄さんの事、応援してるからね!」
エレキギターを背負ったウミは背を向けた状態で手を振った。
ノリに乗っているとはいえウミからキスなんて。
突然キスをされたソラは嬉しさよりも、シャイなウミが日常では見せない態度に不安が頭を過った。
今後の音楽活動を左右する、人生をかけた晴れ舞台を応援する言葉はおろか、"いってらっしゃい"の言葉さえも口にできなかった。
ウミは砂城院家の従業員が後部座席のドアを開けるとリムジンに乗り込んだ。
「俺の軽トラとはどエライ違いだ!」
はしゃぐウミの声を聞いているソラは押し潰されそうな心境で、ウミに「お願いだから何事もなく帰ってきて!」と大声で泣き叫んだ。
「奥さん。」
オガタが優雅に後部座席のドアを開けた。
号泣するソラに砂城院家のタフなボディーガード達が周囲を気にしながら、優しく声をかけながら姉妹をロールス・ロイスファントムに乗せ、かつらがいる砂城院家に向かった。
涙の乾かないソラに、ヒロコ、オオニシ、ユウシンとトモキのコンビ、若い家政婦、同じく家政婦のサナエとマキ、そしてかつらが勢揃いして出迎えた。
「ソラちゃん。ご安心してください。
自慢ではありませんが砂城院家のボディーガードは世界一ですわ。
何人たりとも、危害を加える事など到底不可能です。」
「姉貴!あたし達もついているんだよ!
もちろんお義兄さんも大丈夫だ!」
「お姉ちゃん…泣かないで。お姉ちゃんが泣くとウチも、我慢できなくなってくる…。」
感極まったヒロコは涙を流してソラを抱きしめた。
「まったくあの変態ネズミめ!娘さんをここまで苦しめやがって。
今回の件が終わっても、必ずブチ殺してやらぁ!」
「そうっすよ!俺らもマンションで一度やられてるから、絶対に借りを返さなきゃ気が済まないっす!
なぁ、ユウシン!」
「僕だってソラさんを苦しめる奴は許さない!」
「姉貴、皆んなに慕われてるんだなぁ…。」
優しいみんなを見て、ホロリと涙を流したセラが独り言を言うと、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そうよね。お姉ちゃんは今回の事で一回りも二回りも成長したわ。
年齢も性別も問わず良いお友達に恵まれたわね。」
「えぇ!ちょっと待って!お母さんいつの間にいたの?」
セラは飛び跳ねるほど驚いている。
「久しぶりね、セラ。
私は事前にウミくんとお姉ちゃんから招待されていたのよ。
そんな事よりも、アンタもたまには顔を見せにきてちょうだい。
パパもそう言っていたわよ。昔からやりたい事があると夢中になって周りが見えなくなるんだから。」
「ミナサンコンニチワ。」
「あら、宗成くん。お昼寝から目を覚ましたのね。」
「ハイ。ママサン。」
「今度は何をして遊びましょう?ピンポンがいいかしら?」
「お母さん、コイツの面倒まで見ていたのね…。」
サングラス、黒いスーツという出立ちでマンションまで迎えに来ている砂城院家の従業員達がウミを出迎えた。
「おっ、すっげぇ雰囲気あるな。
こんな人らが会場まで送ってくれるんだ。
やる気が漲ってくるぜ!」
不安げなソラがセラと見送りにきている。
「ウミィ…。」
「安心しろよ。あの砂城院家が全面的にバックアップしてくれてるんだぜ?
大船に乗ったつもりってのは、この事を指すんだな!」
ご機嫌ななめのウミは、ヴァンヘイレンの「Jump」を歌い出した。
「うん。かつらちゃん家の方々だから私も心強いよぉ。
でもね、妻だから愛する旦那様が心配なの。
もし、ウミの身に何かあったら私…。」
「おいおいソラァ?大丈夫だっての。俺の心配は無用だ。」
「そんな事言ったって心配するもん。
出来る事ならライブは今すぐやめてほしいもん。」
白いエプロン姿のソラは、まるで命を賭けて決闘に向かう男を止めるかのような深刻な精神状態だ。
「俺だけでなくおまえもミカミに狙われているんだぞ。
自分の事より、野郎である俺の身ばかり心配してんだもんよ…おまえらしいよな。」
「だって…。」
「さっきも言った通り、庭にグランドキャニオンを作るような連中だ。
ひ弱な変態ネズミが忍び込めるスペースなんてねえよ。」
「私、嫌な予感がするよぉ…。」
ジャケットを掴み、上目遣いで夫を見つめる。
「ガハハ大丈夫だっての!」
ウミはソラにキスをして、頭を手でポンポン撫でた。
「じゃ、行ってきます!セラちゃんも今夜のギグを楽しんでくれよ!」
「うんお義兄さんの事、応援してるからね!」
エレキギターを背負ったウミは背を向けた状態で手を振った。
ノリに乗っているとはいえウミからキスなんて。
突然キスをされたソラは嬉しさよりも、シャイなウミが日常では見せない態度に不安が頭を過った。
今後の音楽活動を左右する、人生をかけた晴れ舞台を応援する言葉はおろか、"いってらっしゃい"の言葉さえも口にできなかった。
ウミは砂城院家の従業員が後部座席のドアを開けるとリムジンに乗り込んだ。
「俺の軽トラとはどエライ違いだ!」
はしゃぐウミの声を聞いているソラは押し潰されそうな心境で、ウミに「お願いだから何事もなく帰ってきて!」と大声で泣き叫んだ。
「奥さん。」
オガタが優雅に後部座席のドアを開けた。
号泣するソラに砂城院家のタフなボディーガード達が周囲を気にしながら、優しく声をかけながら姉妹をロールス・ロイスファントムに乗せ、かつらがいる砂城院家に向かった。
涙の乾かないソラに、ヒロコ、オオニシ、ユウシンとトモキのコンビ、若い家政婦、同じく家政婦のサナエとマキ、そしてかつらが勢揃いして出迎えた。
「ソラちゃん。ご安心してください。
自慢ではありませんが砂城院家のボディーガードは世界一ですわ。
何人たりとも、危害を加える事など到底不可能です。」
「姉貴!あたし達もついているんだよ!
もちろんお義兄さんも大丈夫だ!」
「お姉ちゃん…泣かないで。お姉ちゃんが泣くとウチも、我慢できなくなってくる…。」
感極まったヒロコは涙を流してソラを抱きしめた。
「まったくあの変態ネズミめ!娘さんをここまで苦しめやがって。
今回の件が終わっても、必ずブチ殺してやらぁ!」
「そうっすよ!俺らもマンションで一度やられてるから、絶対に借りを返さなきゃ気が済まないっす!
なぁ、ユウシン!」
「僕だってソラさんを苦しめる奴は許さない!」
「姉貴、皆んなに慕われてるんだなぁ…。」
優しいみんなを見て、ホロリと涙を流したセラが独り言を言うと、背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そうよね。お姉ちゃんは今回の事で一回りも二回りも成長したわ。
年齢も性別も問わず良いお友達に恵まれたわね。」
「えぇ!ちょっと待って!お母さんいつの間にいたの?」
セラは飛び跳ねるほど驚いている。
「久しぶりね、セラ。
私は事前にウミくんとお姉ちゃんから招待されていたのよ。
そんな事よりも、アンタもたまには顔を見せにきてちょうだい。
パパもそう言っていたわよ。昔からやりたい事があると夢中になって周りが見えなくなるんだから。」
「ミナサンコンニチワ。」
「あら、宗成くん。お昼寝から目を覚ましたのね。」
「ハイ。ママサン。」
「今度は何をして遊びましょう?ピンポンがいいかしら?」
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