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砂城院邸は門から屋敷まで徒歩1時間
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突き刺さるような視線を感じ、ウミは恐る恐る背後を振り返る。
「ウゥゥゥミィィィ。」
「ひゃぁ!」
悪霊に取り憑かれたかのような、ただならぬ顔つきで夫を睨む妻の姿がそこにあった。
「なにイチャイチャしてんのよ!
アンタ、私の知らぬ間に他の人と仲良くしていたのねぇ!
許さないからぁぁぁ!」
ソラは奇声を発してウミに掴みかかった。
「ばっきゃろぉ!誤解だ!誤解!」
「浮気なんかしていたらお尻を叩くだけじゃすまないからぁ!」
****
「すごい。豪華なホテルのレストランみたい。
こんな素敵な場所でディナーができるなんて。」
ヒロコは広い部屋を興奮しながら、愛用のカメラで写真を撮り続けている。
「ヒロコさん!景色もすっごいよ!」
セラは手招きをしてヒロコを呼んだ。テーブル席から見える壮大な景色に2人は息を呑む。
「ウソォ!あっちには大船駅前にあるような巨大な大仏が!
こっちはまるで、ジャングルよ!
どうなってるの?セラちゃん!」
「あたしに言われてもわかんないよー。
一つ言える事は砂城院家の凄まじい財力で作ったって事かな?」
セラは誰にでも言える平べったい発言をするのが精一杯だった。
「もうかつらちゃんの自宅って、テーマパークよりすごい!異世界よね!
ウチ、お呼ばれして頂けてほんと良かった!」
ヒロコは愛用の一眼レフを持って自分達以外、砂城院家の従業員しかいない広い部屋を幼児のように走り回った。
「セラちゃん!見て見て!」
「今度はゴジラかガンダムでも発見したかな?」
セラはふざけつつも興奮しながら、ヒロコが指をさす方角を見つめた。
「こ、これって。」
「さすがにセラちゃんもビビるでしょ?」
「あ、あのう、かつらちゃん、どうして自宅の庭に渓谷があるのさ?」
「はい。ワタクシが幼少の頃、父さんの仕事の都合で渡米した際、グランドキャニオンを見物する機会に恵まれまして。
いたく感動したワタクシは、無理を言ってワタクシのお誕生日にお庭に作って貰ったのです。
実物のグランドキャニオンに比べたら少々コンパクトですけどね。」
「アメリカのグランドキャニオンって無理言えば作って貰えるものなんだ…。あは、あはは…。」
セラは砂城院家のスケールの大きさに目眩がした。
セラとヒロコは興奮冷め止まぬなか、かつらはソラとウミが気掛かりで周囲を見渡している。
「ウミィ!歩くの早い。」
ソラはウミの腕を引っ張る。
「いてぇよソラ。」
「良かった。お二人とも仲直りしたのね。
ワタクシ、責任を感じてましたわ。」
2人が手を繋ぐ姿を見て、かつらはホッとしながら短くカットした黒髪を耳にかけた。
「んー。仲直りとはちょっと違うかなぁ。
今は旦那様を教育する段階だから。」
「教育?」
「うん。このとおり。」
手を繋いでいるように見えたが夫婦の互いの片腕には手錠が嵌められていた。
「若い家政婦さんに頼んだら、セキュリティ室なる場所から探し出して頂いたの。
さっきの件があったから不安を払拭したくてね。
これがあればウミと離れる事なく監視できる。」
ウミはかつらに手錠を嵌められているのを見られ屈辱に満ちた表情をしている。
「な、なるほど。ソラちゃんの狂おしいまでの愛がワタクシにも怖いほど伝わりましたわ…。」
「さぁ、ウミィ。私達も、かつらちゃんのお宅でディナーにしましょ?
どんな豪華なお料理かな?なんていっても、かつらちゃんのお家よ。ワクワクするぅ!」
「お姉ちゃん、旦那君!ここよ!」
ヒロコが手招きして呼んだ。
「ヒロコさぁん!」
ソラは嬉しそうに職場の上司と妹が座るテーブル席へかけていく。
「いってぇ待てよソラァ!」
「なによ?」
「待ってったら。」
「二人三脚みたいなものよ?ウミは妻の私に足並みを合わせなさい。」
ウミは呆れたようにため息を吐いた。
「飯を食う前に小便をしたい。手錠を外してくれ。」
「そんな見え透いた嘘をついて私から逃げるつもりでしょ?
おトイレには私もついて行ってあげるよぉ。」
下から高身長のウミを見上げて言った。
「おまえは正気か。」
「もちろん正気に決まっているじゃない。片手じゃ、オシッコもしにくいでしょうから、私もファスナーを下ろしてウミがオシッコするのを手伝ってあげる。
お互い片手しか自由のない夫婦が助け合うのよぉ。
それって私達は2人で1人だと強く認識できる行為だと思わない?」
ソラは笑顔でウミを見た。
「な、何を言ってんだ。おまえ?」
「パンツを汚さないよう、ウミがちゃんとオシッコできるように見ててあげるから心配しないで。
ウミ、そそっかしいから代わりに私が握ってコントロールしてあげてもいいのよぉ。」
「みんな見てねえで助けてくれよ!!誰かソラを止めてくれ!!」
ソラの発言にゾッとしたウミは必死に喚き助けを求める。
「いやだぁぁ。俺はガキじゃねぇよぉぉ。」
セラ、かつら、ヒロコはトイレに連行されるウミの悲痛な叫び声を聞き、顔を引き攣らせ見守る事しかできなかった。
「ウゥゥゥミィィィ。」
「ひゃぁ!」
悪霊に取り憑かれたかのような、ただならぬ顔つきで夫を睨む妻の姿がそこにあった。
「なにイチャイチャしてんのよ!
アンタ、私の知らぬ間に他の人と仲良くしていたのねぇ!
許さないからぁぁぁ!」
ソラは奇声を発してウミに掴みかかった。
「ばっきゃろぉ!誤解だ!誤解!」
「浮気なんかしていたらお尻を叩くだけじゃすまないからぁ!」
****
「すごい。豪華なホテルのレストランみたい。
こんな素敵な場所でディナーができるなんて。」
ヒロコは広い部屋を興奮しながら、愛用のカメラで写真を撮り続けている。
「ヒロコさん!景色もすっごいよ!」
セラは手招きをしてヒロコを呼んだ。テーブル席から見える壮大な景色に2人は息を呑む。
「ウソォ!あっちには大船駅前にあるような巨大な大仏が!
こっちはまるで、ジャングルよ!
どうなってるの?セラちゃん!」
「あたしに言われてもわかんないよー。
一つ言える事は砂城院家の凄まじい財力で作ったって事かな?」
セラは誰にでも言える平べったい発言をするのが精一杯だった。
「もうかつらちゃんの自宅って、テーマパークよりすごい!異世界よね!
ウチ、お呼ばれして頂けてほんと良かった!」
ヒロコは愛用の一眼レフを持って自分達以外、砂城院家の従業員しかいない広い部屋を幼児のように走り回った。
「セラちゃん!見て見て!」
「今度はゴジラかガンダムでも発見したかな?」
セラはふざけつつも興奮しながら、ヒロコが指をさす方角を見つめた。
「こ、これって。」
「さすがにセラちゃんもビビるでしょ?」
「あ、あのう、かつらちゃん、どうして自宅の庭に渓谷があるのさ?」
「はい。ワタクシが幼少の頃、父さんの仕事の都合で渡米した際、グランドキャニオンを見物する機会に恵まれまして。
いたく感動したワタクシは、無理を言ってワタクシのお誕生日にお庭に作って貰ったのです。
実物のグランドキャニオンに比べたら少々コンパクトですけどね。」
「アメリカのグランドキャニオンって無理言えば作って貰えるものなんだ…。あは、あはは…。」
セラは砂城院家のスケールの大きさに目眩がした。
セラとヒロコは興奮冷め止まぬなか、かつらはソラとウミが気掛かりで周囲を見渡している。
「ウミィ!歩くの早い。」
ソラはウミの腕を引っ張る。
「いてぇよソラ。」
「良かった。お二人とも仲直りしたのね。
ワタクシ、責任を感じてましたわ。」
2人が手を繋ぐ姿を見て、かつらはホッとしながら短くカットした黒髪を耳にかけた。
「んー。仲直りとはちょっと違うかなぁ。
今は旦那様を教育する段階だから。」
「教育?」
「うん。このとおり。」
手を繋いでいるように見えたが夫婦の互いの片腕には手錠が嵌められていた。
「若い家政婦さんに頼んだら、セキュリティ室なる場所から探し出して頂いたの。
さっきの件があったから不安を払拭したくてね。
これがあればウミと離れる事なく監視できる。」
ウミはかつらに手錠を嵌められているのを見られ屈辱に満ちた表情をしている。
「な、なるほど。ソラちゃんの狂おしいまでの愛がワタクシにも怖いほど伝わりましたわ…。」
「さぁ、ウミィ。私達も、かつらちゃんのお宅でディナーにしましょ?
どんな豪華なお料理かな?なんていっても、かつらちゃんのお家よ。ワクワクするぅ!」
「お姉ちゃん、旦那君!ここよ!」
ヒロコが手招きして呼んだ。
「ヒロコさぁん!」
ソラは嬉しそうに職場の上司と妹が座るテーブル席へかけていく。
「いってぇ待てよソラァ!」
「なによ?」
「待ってったら。」
「二人三脚みたいなものよ?ウミは妻の私に足並みを合わせなさい。」
ウミは呆れたようにため息を吐いた。
「飯を食う前に小便をしたい。手錠を外してくれ。」
「そんな見え透いた嘘をついて私から逃げるつもりでしょ?
おトイレには私もついて行ってあげるよぉ。」
下から高身長のウミを見上げて言った。
「おまえは正気か。」
「もちろん正気に決まっているじゃない。片手じゃ、オシッコもしにくいでしょうから、私もファスナーを下ろしてウミがオシッコするのを手伝ってあげる。
お互い片手しか自由のない夫婦が助け合うのよぉ。
それって私達は2人で1人だと強く認識できる行為だと思わない?」
ソラは笑顔でウミを見た。
「な、何を言ってんだ。おまえ?」
「パンツを汚さないよう、ウミがちゃんとオシッコできるように見ててあげるから心配しないで。
ウミ、そそっかしいから代わりに私が握ってコントロールしてあげてもいいのよぉ。」
「みんな見てねえで助けてくれよ!!誰かソラを止めてくれ!!」
ソラの発言にゾッとしたウミは必死に喚き助けを求める。
「いやだぁぁ。俺はガキじゃねぇよぉぉ。」
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