私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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砂城院邸は門から屋敷まで徒歩1時間

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一行は顔色の悪いかつらに代わってウミの運転で屋敷に到着した。

「ソラ、かつらに頼めばコイツを貰えるぜ?
なんてったって、世界的な大企業の令嬢だもんよ。
かつらからすりゃ、こんな車を100台俺にくれたところで10円ガム程度の出費だ。
いや、それ以下だな。」

皆がかつらの住む屋敷を見て興奮している時、ウミはソラに欲望を隠す事なく話した。

「そんなのダメに決まってるでしょ。
ウミが自分の力で買わなきゃなんの意味もないわ。
私の事、ガッカリさせないでよね。」

ソラは武装を外しながらウミに言った。

「なんて頭の固い女だ。」

「なんか言った?」

「い、いや。俺はいつまでも、ポンコツに乗りたかねぇの。」

凄む妻に恐れをなした夫は口答えをせず下を向く。

「ポンコツなんて言うけどね。私、ウミが中古で買った可愛い軽トラックにはお金では買うことができない素敵な想い出がいっぱいつまっているの。
これからも大切な"軽トラちゃん"に乗りたいな。ダメ?」

かつらのオープンカーに執着するウミの発言でムスッとした表情のソラは、軽トラックへの思い入れを語ると何事もなかったかのように、可愛らしいえくぼをみせた。

「…おまえがそこまで言うなら、まだあのポンコツに乗ってやるけどさ。」

頭の中でウミは仕方なく中古で購入した白い軽トラックを思い出し、妻がいったいどこであのポンコツに惚れる要素があったか想いを張り巡らせているが、まったくピンとこない。

一行が屋敷の付近に近づくと自動で玄関が開いた。

「皆様いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」

若い家政婦が出迎えた。

「顔色が悪いようですが、いかがなさいました?。」

若い家政婦は緊張しているのか堅苦しい。

「ワタクシなら大丈夫よ。それより、みなさんをお部屋へお連れして。」

「おいかつら。おまえ、家政婦さんにちゃん付けで呼ばれるようになったのか?」

「ええ。家政婦さん達とは今までよりもっと親睦を深めたくて、ワタクシの方から頭を下げてお願いしたのですわ。
ワタクシの過去が過去ですので、みなさんはまだよそよそしいですけどね…。」

「やっぱりかつらちゃんは優しい女の子なのね。」

ソラはかつらに抱きついた。

好きなソラに抱きつかれた事で頬を赤くしたかつらは、古いロボットのようにカクカクした動きをした。

「ソ、ソ、ソラちゃん。あ、あのワタクシ、ソラちゃんの、おかげで、あのその、か、変われたのよ。」

声の大きいウミを中心に笑いが起きた。

「ちょっとみんな、笑っちゃ失礼よぉ。」

「姉貴に続いてあたしもかつらちゃんに抱きついちゃえ!」

姉に変わってかつらを正面から抱きしめたセラは、尻尾を振る子犬のように人懐っこい。

「あ、あん。」

「かつらちゃんて清楚だよね。身体も華奢きゃしゃで折れちゃいそう。」

アマチュアながら格闘技にのめり込み、"女のまま男の中の男"になるを信条としているセラとでは体格が異なって当然だ。

「ウチ、お姉ちゃんとハグした写真とセラちゃんとハグする写真も撮ったよ。
撮るのは好きだけどね、ウチもその輪に入りたくなっちゃった。」

ヒロコは隣にいるウミに一眼レフを持ってもらい、かつらの背後に回り抱きついた。

「あ、あ、あの、お二人の甘い息が。
ワタクシ、女性同士とはいえここまでは初めて。」

「ウミ、写真撮って!早く早く!」

「えっ?これどうやって撮るんだ?」

「もう、私にかしなさい。」

はしゃぐ3人娘を手馴れた手つきでカメラを撮る。

初めて一眼レフで写真を撮る妻を見て、夫は感心したのと同時にロックスターを目指している為、スポットライトが好きなウミは血が騒いだ。

「よっしゃ!」

テンションが上がっているセラとヒロコに前後から抱きしめられて、かつらはサンドウィッチ状態だ。
そんな3人娘の前にウミが気取って立ち塞がる。

「はっ?邪魔だからどいてよね。」

「俺が邪魔だぁ!?バンドのフロントマンなんだぜ?」

プロカメラマンであるヒロコに丁寧に教え込まれたカメラの腕前を生かし、偶然の産物である3人が抱き合うという場面をどうしてもソラは撮りたかったのだ。

「しつこいわよぉ!」

「うるせぇ!俺を撮れ!」

「いい加減にしてウミィ!!!」

ソラはどでかい雷を落とした。

「そ、そこまで怒鳴らなくてもいいじゃんかよ…。」

苦笑いをしている若い家政婦の両隣で凛として立っている家政婦が反応した。

「今ウミって言ったよね?お兄さんはこないだモモちんの件で、出会ったウミ君?
やっぱウミ君じゃん!久しぶりね。私だよサナエ!」

「おお!あん時、助けてくれた姉ちゃんか!?
アンタがいなきゃヤバかったんだ。」

「キャバ辞めて今はこっちで働き始めたんだ。
求人誌のシティワークに掲載されていてさ。
砂城院家は好待遇だったから応募しちゃった。
まさかここで再会できるとはね。」

「アイツらはどうなった?」

「まだ拘置所だよ。たぶん執行猶予がついて実刑はないと思う。
ずっとウミ君の事、心配してたんだ。
元気そうで良かった。」

「サナエさんだけじゃないよ。ねぇねぇ覚えてる?
覚えているわけないか。髪色も金髪から黒に戻しちゃったし。
クソ宗成から彼女を守る為、砂城院家ここまで、バイクを2人乗りした事を。」

「覚えてるぜ!あん時、アンタがいなきゃ俺はソラを救い出せなかったんだからよ!
アンタにも感謝してんだ。格好良い隼に乗っているマキによ!」

「覚えていてくれたとは!しかもさ、あたしの名前と単車まで…。
姉ちゃん嬉しいよ。」

「へぇー。マキもウミ君と知り合いだったんだ?」

「彼とは高校の先輩と後輩って仲。この子、彼女を守る為にここへあたしと乗り込んだんだよ。」

「ウミ君はやっぱ男だね!私の時も独りで戦ってたもんなあ。」

サナエはしみじみと当時を振り返っている。

「意外だぜ。姉ちゃん同士も知り合いだったんだな?」

歳上の女性2人に武勇伝を語られ、照れくさくなったウミは話題を変えた。

「サナエさんとは今まで面識はなかったね。」

「私とマキはここで働き始めて知り合った同期だよ。」

歳上のサナエはマキと目を合わせ、クスッと笑った。

色気のある大人の女性2人と仲睦まじく会話をしている最中、ウミはとてつもない殺気を感じていた。












































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