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第5部 追う人、逃げる人、悪い人。
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「呆れた。もうおしまいなわけ?」
モモは背を向けて寝ているヤナセに言った。
「…もう無理。これ以上は振れない…。」
「あんさ、モモはちっとも満足できてないんだけど?不完全燃焼。」
肩で呼吸をするヤナセの背中を形が残るくらい手のひらで叩いた。
「いてえよ。モモちゃん。」
ため息をついたモモはベッドから立ち上がった。
「どうしたの?シャワーを浴びるのか?」
「疲れたんでしょ?しばらく寝ていたら?」
質問には答えずモモは自分のスマホを持った。
「ありがとう。モモちゃんがそう言うなら。」
掛け布団を顔まで被ってヤナセは目を閉じた。
「ここでモモのゆった事に反発できない男とは未来はないな。」
一定のリズムで呼吸するヤナセの腹が掛け布団の上からでも動いているのがわかる。
便座に座り、新富福町で起きた例の暴動未遂事件についてSNSで検索した。
あの暴動未遂事件の続報を常に調べていたが、日を増すごとに呟きが少なくなっている。
これといった有力な情報を得られずにいたモモだったが、数分前の呟きが目を引いた。
それはソラのファン同士が情報交換をしていたものだった。
"最近ソラたんの推しになったはいいが、画像があんまないから誰か画像をクレメンス"
"ここのファンサイトにソラちゃんのめんこい写真がたんまりあるぞ"
⭐︎日本一可愛い美少女⭐︎大嵐ソラちゃんファンクラブ
「はぁ?ファンクラブ?」
モモは頭をポリポリ掻いた。
新しい情報に飢えていたモモは貼り付けられたURLを迷わずタップした。
「すごい美人…芸能人がゴミに見えちゃう。」
管理人のソラへの想いがこもった長い文章を流し読みして写真や暴動未遂事件以降の新たなコメントを貪った。
「あの時の金髪黒ギャルもいる!」
ソラとセラが双子の姉妹だとモモはマニアックなファンサイトを閲覧してようやく気付いた。
「コイツら姉妹だったんだぁ。タイプは違くても顔が瓜二つだもんね。
本名や自宅住所まで公開されてるよ。」
ボサボサに痛んだピンクヘアのモモは興奮して便座の蓋へもたれかかった。
「自宅を襲っちゃう?モモが姉妹の自宅を襲っちゃう?」
すり減った金属音のような笑い声を発し、両足で床を踏みドタドタと音を立てた。
「あの顔を隠したヘンチクリンが姉で金髪黒ギャルが妹…。さてさてどうやって料理しよっかなぁ。」
モモにとって憎き金髪黒ギャルのセラーーーー頭の中では残酷かつ猥褻な計画が夏祭りの打ち上げ花火のようにポンポン閃いていく。
しかしモモは恐るべき計画を練る事が出来ても、警戒を遂行するにあたってどうしてもカリスマ性のある悪役が必要不可欠だ。
モモは小便をしながら考えたが、誰がハマり役かとっくに答えはでていた。
無作法なモモはトイレを流さず、生まれたままの姿でベッドサイドまでやってきた。
「モモちゃん。随分トイレが長かったね。」
問いかけに無言のモモは掛け布団を捲り上げる。
ヤナセの下腹部が露わになった。
「まだ寝てる。」
「起きてるだろ?」
自分の目を見ろと見開いた目に指を差してヤナセは言った。
「グッスリ寝てるよ。モモの計画にはヤナセくんじゃ役不足なんよ。」
モモは背を向けて寝ているヤナセに言った。
「…もう無理。これ以上は振れない…。」
「あんさ、モモはちっとも満足できてないんだけど?不完全燃焼。」
肩で呼吸をするヤナセの背中を形が残るくらい手のひらで叩いた。
「いてえよ。モモちゃん。」
ため息をついたモモはベッドから立ち上がった。
「どうしたの?シャワーを浴びるのか?」
「疲れたんでしょ?しばらく寝ていたら?」
質問には答えずモモは自分のスマホを持った。
「ありがとう。モモちゃんがそう言うなら。」
掛け布団を顔まで被ってヤナセは目を閉じた。
「ここでモモのゆった事に反発できない男とは未来はないな。」
一定のリズムで呼吸するヤナセの腹が掛け布団の上からでも動いているのがわかる。
便座に座り、新富福町で起きた例の暴動未遂事件についてSNSで検索した。
あの暴動未遂事件の続報を常に調べていたが、日を増すごとに呟きが少なくなっている。
これといった有力な情報を得られずにいたモモだったが、数分前の呟きが目を引いた。
それはソラのファン同士が情報交換をしていたものだった。
"最近ソラたんの推しになったはいいが、画像があんまないから誰か画像をクレメンス"
"ここのファンサイトにソラちゃんのめんこい写真がたんまりあるぞ"
⭐︎日本一可愛い美少女⭐︎大嵐ソラちゃんファンクラブ
「はぁ?ファンクラブ?」
モモは頭をポリポリ掻いた。
新しい情報に飢えていたモモは貼り付けられたURLを迷わずタップした。
「すごい美人…芸能人がゴミに見えちゃう。」
管理人のソラへの想いがこもった長い文章を流し読みして写真や暴動未遂事件以降の新たなコメントを貪った。
「あの時の金髪黒ギャルもいる!」
ソラとセラが双子の姉妹だとモモはマニアックなファンサイトを閲覧してようやく気付いた。
「コイツら姉妹だったんだぁ。タイプは違くても顔が瓜二つだもんね。
本名や自宅住所まで公開されてるよ。」
ボサボサに痛んだピンクヘアのモモは興奮して便座の蓋へもたれかかった。
「自宅を襲っちゃう?モモが姉妹の自宅を襲っちゃう?」
すり減った金属音のような笑い声を発し、両足で床を踏みドタドタと音を立てた。
「あの顔を隠したヘンチクリンが姉で金髪黒ギャルが妹…。さてさてどうやって料理しよっかなぁ。」
モモにとって憎き金髪黒ギャルのセラーーーー頭の中では残酷かつ猥褻な計画が夏祭りの打ち上げ花火のようにポンポン閃いていく。
しかしモモは恐るべき計画を練る事が出来ても、警戒を遂行するにあたってどうしてもカリスマ性のある悪役が必要不可欠だ。
モモは小便をしながら考えたが、誰がハマり役かとっくに答えはでていた。
無作法なモモはトイレを流さず、生まれたままの姿でベッドサイドまでやってきた。
「モモちゃん。随分トイレが長かったね。」
問いかけに無言のモモは掛け布団を捲り上げる。
ヤナセの下腹部が露わになった。
「まだ寝てる。」
「起きてるだろ?」
自分の目を見ろと見開いた目に指を差してヤナセは言った。
「グッスリ寝てるよ。モモの計画にはヤナセくんじゃ役不足なんよ。」
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