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ソラを探して新富福町へ
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テーブルに置いてあった武装品をいつもより音を立てて装着し始めた。
「シュゴー、セラの気持ち、よくわかったわ。私がいると邪魔だったのね!」
「姉貴それは違うよ!」
「おい、ソラ。セラちゃんにそんな言い方はねえだろう。
だいたい外へ出ちまうとおまえをどうにかしたい危ない奴らがウジャウジャいるんだぞ。
ミカミだってまだ御用になってねえ。
独りは危険だぜ。」
いつものように感情的にならぬよう夫は自制しながら妻へ言った。
「シュゴー、ウミがいけないんだよぉ。ウミが私との約束を破ったんだからね。」
ソラが玄関へ向かう時、かつらは繋いだ手を離さなかった。
「お願いよソラちゃん。もうどこへも行かないで。」
かつらは目を赤く腫らして泣いている。
「ごめんね。かつらちゃん。シュゴー。
またこうして再会できた事は嬉しいよぉ。
でもね、私はこのままウミを許すつもりはないの。」
かつらと繋いだ手をゆっくり離した。
「シュゴー、わかってるよね?ウミィ。
アンタは誰の力も借りず私を探しださなきゃいけないの!」
また振り出しに戻るのか。
途方にくれたウミは時間をかけて並べたドミノを崩されたような気分だった。
セラは姉の夫が呆然としている顔を見て口を開いた。
「このままあたしの所を飛び出してどこへ行くつもり?
また新富福町の時みたいにヤバイ奴らに囲まれたいの?
あたしだって、姉貴を守る為に精もこんも尽きるほど必死だったんだからね!」
「…それに関しては悪かったわ。
本当にごめんね、セラ。
けれども、ここから先は夫婦である私とウミとの問題なの。
妹のアンタなら私がウミを愛する気持ちがわかるはずよ。シュゴー。」
「わかんないよ!わかるわけないじゃん!
そんな歪んだ愛情なんか!
せっかくお義兄さんが迎えにきたのに、なんたってまたどっかへ行くのさ!
自力も他力も関係ないよ!」
妹は声を張って姉に言った。
「アンタにもいつかわかる日がくるわ。」
ソラはそう言いい把手を引いて玄関ドアを開けた。
表は夜とはいえど高速道路をひた走る自動車のけたたましいノイズが鳴り止む事がない。
ソラはクルッと身体を回して部屋にいるウミを見つめた。
「ウミィ。ここを出る前にこれだけは言っておくよぉ。
私は気が狂うほどアンタを愛しているの。離婚なんか絶対にしないからね。
もしもウミの口から冗談でも離婚話がでたら…私はアンタの前で死んでやるから。
刃渡の長いナイフで自分の手首を切って、首にも突き刺すつもり。
ウミがいない人生なんて生きていても意味ないもの。」
かつらは寂しげな花柄のハンカチで目元を押さえている。
セラはソラから背を向けてしまった。
「ソラァ。」
名前を呼ぶだけで何もできないウミは、その後の言葉が見つからなかった。
"バカな事はやめて戻ってこい"
"一緒に帰宅するぞ"
そんな言葉を並べただけでは、ソラを止める事など出来ないとわかりきっていたからだ。
反対に呆然としているウミに対して喝を入れるかのようにソラは言った。
「私、家出するけどちゃんと探してよね!」
「シュゴー、セラの気持ち、よくわかったわ。私がいると邪魔だったのね!」
「姉貴それは違うよ!」
「おい、ソラ。セラちゃんにそんな言い方はねえだろう。
だいたい外へ出ちまうとおまえをどうにかしたい危ない奴らがウジャウジャいるんだぞ。
ミカミだってまだ御用になってねえ。
独りは危険だぜ。」
いつものように感情的にならぬよう夫は自制しながら妻へ言った。
「シュゴー、ウミがいけないんだよぉ。ウミが私との約束を破ったんだからね。」
ソラが玄関へ向かう時、かつらは繋いだ手を離さなかった。
「お願いよソラちゃん。もうどこへも行かないで。」
かつらは目を赤く腫らして泣いている。
「ごめんね。かつらちゃん。シュゴー。
またこうして再会できた事は嬉しいよぉ。
でもね、私はこのままウミを許すつもりはないの。」
かつらと繋いだ手をゆっくり離した。
「シュゴー、わかってるよね?ウミィ。
アンタは誰の力も借りず私を探しださなきゃいけないの!」
また振り出しに戻るのか。
途方にくれたウミは時間をかけて並べたドミノを崩されたような気分だった。
セラは姉の夫が呆然としている顔を見て口を開いた。
「このままあたしの所を飛び出してどこへ行くつもり?
また新富福町の時みたいにヤバイ奴らに囲まれたいの?
あたしだって、姉貴を守る為に精もこんも尽きるほど必死だったんだからね!」
「…それに関しては悪かったわ。
本当にごめんね、セラ。
けれども、ここから先は夫婦である私とウミとの問題なの。
妹のアンタなら私がウミを愛する気持ちがわかるはずよ。シュゴー。」
「わかんないよ!わかるわけないじゃん!
そんな歪んだ愛情なんか!
せっかくお義兄さんが迎えにきたのに、なんたってまたどっかへ行くのさ!
自力も他力も関係ないよ!」
妹は声を張って姉に言った。
「アンタにもいつかわかる日がくるわ。」
ソラはそう言いい把手を引いて玄関ドアを開けた。
表は夜とはいえど高速道路をひた走る自動車のけたたましいノイズが鳴り止む事がない。
ソラはクルッと身体を回して部屋にいるウミを見つめた。
「ウミィ。ここを出る前にこれだけは言っておくよぉ。
私は気が狂うほどアンタを愛しているの。離婚なんか絶対にしないからね。
もしもウミの口から冗談でも離婚話がでたら…私はアンタの前で死んでやるから。
刃渡の長いナイフで自分の手首を切って、首にも突き刺すつもり。
ウミがいない人生なんて生きていても意味ないもの。」
かつらは寂しげな花柄のハンカチで目元を押さえている。
セラはソラから背を向けてしまった。
「ソラァ。」
名前を呼ぶだけで何もできないウミは、その後の言葉が見つからなかった。
"バカな事はやめて戻ってこい"
"一緒に帰宅するぞ"
そんな言葉を並べただけでは、ソラを止める事など出来ないとわかりきっていたからだ。
反対に呆然としているウミに対して喝を入れるかのようにソラは言った。
「私、家出するけどちゃんと探してよね!」
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