私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
上 下
182 / 275
反撃開始!

181

しおりを挟む
「待ちなさぁぁぁい!」

暴力団事務所や性風俗店が軒を連ねた路地をソラは走り慣れていないウサギのようにかけていく。

大通りをひた走るセラはソラの危機を救おうと新富福町交番を目指して鬼の形相で走る。

「待てー!変態ネズミ!シュゴシュゴシュゴ。」

妹は路地裏から聞こえる姉の声を聞き逃さなかった。

「姉貴の声だ!姉貴ぃ姉貴ぃ!どこにいるの?」

ここでソラを見失うわけにはいかない。
セラは大海原をちっぽけなボートで漂流した遭難者の如く大声で叫んだ。

「あっ!?ミカミだ!んん、どういう事?姉貴がミカミを追っている?」

目の前の交差点を横切っていくミカミをソラが追う展開に状況を把握ができなかったが、ソラに続きミカミを追った。

「セラ!?」

「姉貴、あとはあたしに任せて!」
 
ケンスケを相手に喧嘩をし、市中を東奔西走とうほんせいほうした為、疲労困憊であるはずだが大好きな姉や上司のヒロコを苦しめたミカミを捕えようと力を振り絞って追跡していく。

「てめぇ待ちやがれぇぇ!」

「嘘だと言ってくれ!俺は女神に嫌われたくない!ヒギャギャギャギャ!」

発狂しているミカミは姉妹に追われていることさえ知らずにいる。

「あとちょいだぁ!」

セラはミカミの襟首を掴み、強引に地面へ叩きつけた。

「このやらぁ!」

「ゴホッゴへッ!」

背中をコンクリートに打ち付けられたミカミは海老反りになって痛みが走った背中を押えた。

「手こずらせやがって!この変態ネズミめ!おまえはこれで終わりだ!」

ミカミの腹や肩に怒りのストンピングを何発も加えた。

「ふぐぁ…。」

怒涛のストンピングのシャワーを浴びてミカミはうめき声をあげ次第に立ち上がれなくなった。

「シュゴ、シュゴ、シュゴ、シュゴ!」

遅れてソラがヘロヘロになりながらやってきた。

「シュゴシュゴシュゴ、セラ、捕まえ、たよう、ね、でも、私、だって、でき、たん、だから、ね。」

「うん!姉貴が追い詰めたんだ。さすがはあたしのだよ…。」

「そう、よ。シュゴシュゴシュゴ、私は、決して、弱く、なんか、ないもん!」

手柄を自慢するように見栄を張ってソラは言った。

「…コイツにみだらな行為をされてないよね…?大丈夫だよね?」

青ざめた顔でソラに近づいて言った。

「もちろん、よ!シュゴー、指一本、触れさせ、なかった。」

「ほ、ほんと?あたしに心配をかけないように嘘をついてない?」

下唇をピクピク震わせてセラは姉の掌を両手で握った。

「嘘じゃない、ほんとのことよ。」

姉の手を握っていた傷だらけの両手で妹は姉を強く抱きしめた。

「あ、あたし、の事をどれだけ心配したかわかる?…ここまで来るのだって大変だったんだからね…。」

セラは我慢できず涙を流し声をあげて泣いた。

「セラ…。」

武装を外したソラも泣きじゃくる妹の背中に手を回した。
ソラは普段勝気である妹の大粒の涙を見て、どれだけ心配をかけたかーーーー
大切にしてもらえているかを痛感した。
周囲を見えなくなってしまっていた自分をいたく反省した。

「たくさんセラに心配をかけてごめんね…。
お姉ちゃんならほんとに大丈夫よ。」

まるで生き別れた姉妹が再会を果たしたかのように強く抱擁ほうようを交わしている。

昼間の風景から夜の街に変貌する境目で、汗だくで抱きしめ合う姉妹をオレンジ色の夕陽が差した。












しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

処理中です...