私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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妹のピンチ、姉は大ピンチ!?

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ガシャーン!

閉店したBARのシャッターを蹴飛ばす音がセラの耳に響く。

「うらぁー!おめえのせいだぞ!おぉ?クソアマがぁ!
俺の女房気取りには反吐が出そうだったんだぜ?」

「兄貴ぃ、こんなところでまずいっすよ。」

「すっこんでろ!」

うつろな表情から一変して般若のような顔のケンスケは自我をコントロールできずヤナセを手で吹っ飛ばした。

「はぁ…。どうやらこっから抜け出せないようだね。」

セラは姉を探したが、もはや姿はない。
カラスがゴミ捨て場の網を掻い潜り、生ゴミを黒く鋭いクチバシで物色しているなかを、ナンバープレートが外れかかった乗用車が突っ走っていった。

「あぁ姉貴が心配だよ…。あの女はムカつくけれど、このまんま放っておくわけにはいかないしな。
雑魚とはいってもヤクザだし、しかも頭おかしいし関わるのめんどくさ…。」

セラは断腸の思いでソラを尾行するのを中断して、モモに暴行を加えているヤクザがいる元へ戻った。

「おい、やめろ。警察呼ぶぞ。」

「やぁ、キミなら戻って来てくれると思っていたよ。」

ケンスケはフラフラした足取りで、セラにゆっくり近づいていく。

「…おまえさぁ、いったい何が狙いなんだよ?」

腰に両手を乗せ、セラは呆れた口調で言った。

「狙い?狙いはキミだ。」

「あたしはさぁ、おまえみたいな男は大嫌いなんだ。
弱いヤツには強いだけのじゃん。」

「てめぇ、俺らを舐め腐りやがって!ぶっ殺すぞコラ!」

ヤナセの頭の中から暴対法なんて言葉は吹っ飛んでいた。

「ヤナセ、おまえは黙っていてくれ。」

「しかし兄貴!コイツはカタギですよ!カタギに舐められてどうすんすか!しかもこんな小生意気な女なんかに…。」

ケンスケはヤナセの発言に一切、聞く耳はなくセラを半目で見つめている。

「弱いヤツには強いか。確かにお姉ちゃんは強いな。
でも俺もちょっと腕には自信があるんだよ。」

「へぇ。そのわりには手も足も出なかったようだけど?」

腰を掴んでいた両手は後頭部に添えられている。
セラのスベスベの脇が露わになった。

「お姉ちゃん。今から街の喧嘩じゃなくて、健全なスポーツ、それもキミが得意とする格闘技をしないかい?
リングではないが両者の合意の元、執り行えば仮に通報されても警察も納得せざるを得ないだろう。
まぁ、通報するもんもいないだろうけど。」

「まさか、その傷のままやるんすか?」

ケンスケはまたもヤナセの問いかけに答えなかった。

「いつもなら絶対に相手にしやしないけれど、おまえには心底腹が立っている。
うん。いいよ、やろうよ。」

セラはケンスケなんて30秒以内で決着をつけれるはず。
早く決着をつけてすぐさま姉貴を探そう。そう考えて合意した。

「ありがとう。でもただ殴り合うのは味気ない。
そこで俺から提案だ。
ひとつ互いに賭けをしよう。キミなら乗ってくれるよね?」















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