私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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妹のピンチ、姉は大ピンチ!?

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顔を下げて深くため息をついたあと、セラは抉るような目付きでモモを睨んだ。

「またおまえか!さっきから何の用なんだ!」

ソラの尾行をしているセラは二度も邪魔をされて立腹している。

「ほら、モモがゆったとうり性格の悪い女でしょ?」

モモは興奮気味に二人に目配せをして言った。

「ねぇ、モモのゆったこと聞いてる?」

ケンスケとヤナセはモモの問いかけに、うんうん頷きはするもののセラの美しさ、セクシーさに度肝を抜かれて立ち尽くしている。

「何を言ってんだ!性格の悪い女はおめえだろうが!
二度もあたしにちょっかいだしてんだぞ!
今はおまえなんかにかまっている暇はねえんだよ!
早くあたしの前から失せな!」

怒り心頭のセラはモモを怒鳴り、スラッと伸びた長い脚を前に踏みだして、その場を立ち去ろうとした。

「あっ、また逃げるの?
ねぇ、コイツになんか言ってやってよぉ。啖呵たんか切られてモモくやしぃい~。」

ケンスケの胸元を飼い主と戯れる猫のように小刻みにネコパンチを繰り出している。

ケンスケの目はセラの顔、胸、脚を上から下、下から上へと繰り返し往復した後、ようやく我に返ったようにモモに答えた。

「おぉ、そうだよな悔しいよな。
どうしようか?
ヤナセ、おまえがあの女の子を事務所まで案内してやってくれないか?」

ケンスケは髪をクシで整えて身なりを気にする仕草をしている。

「えっ、事務所へ案内?俺がっすか?
でもどうやって声をかけりゃいいんですかね?
あんま手荒なまねはしたくないんで。」

ヤナセはセラに一目惚れをしてしまっている為、暴力的な振る舞いをして嫌われてしまうのを恐れいるのだ。

ケンスケは少し考えた後、ヤナセの耳元でモモに聞こえないよう小さな声で言った。

「…確かに突然事務所への案内は強引だな。
案内はしなくていい。
それより、おまえのツラを見てよくわかったよ。
あの娘に惚れたんだろ?
いいか、良く聞け。あの手のタイプはな、強引な男が好きなんだよ。
腕掴んで、"俺はおまえに惚れた。付き合ってくれ"こう言えば、すぐにとはいかないが仲良くなれる取っ掛かりにはなるぞ。」

「あの俺も今まで何人も女はいたんすよ。
さすがにそんな口説き方じゃ…。」

首を傾げてケンスケにやんわり反論した。

「…ヤナセ、事務所への案内は却下にしてやったが、これ以上俺のやり方にケチつけるんか?おう?」

ケンスケは凄んでみせた。

「わ、わかりましたよ。」

「ああ、もう!ケンスケ達がグダグダやってるうちに行っちゃったよ。」

しかめ面をしたモモがセラに指を差しながら二人に言った。

「オラ、はよ行け!」

セラが放つ野生的な妖艶さに、たじろぐヤナセの尻に前蹴りをした。

心の準備も整っていないまま、ヤナセはセラの歩く方向へ向かっていく。

「あっ、ちょっといいか?」

ヤナセはセラの前に立ち塞がる。
照れてニヤける顔を必死で真顔にしようと歯を食いしばった。

「いきなし話しかけてごめんな。今、忙しいか?
俺、綺麗な君に一目惚れしたんだ。
良かったら話だけでも聞いてくれないかな?」

目の前に短髪のフェードカットにした長身の男が立ち塞がった為、セラの視線からソラの姿は消えた。

この事でセラの怒りは頂点に達し、漫画の描写にあるような青筋が立つほどであった。

「あぁぁぁ!むかつくなぁぁぁ!
このクソがぁ!見失ったらどうすんだコラ!
おまえは、あのピンク女の仲間だろ?
なんのつもりかわからないが、これ以上あたしの邪魔はすると張り倒すぞ!」

「いや邪魔をするつもりなんかなくて、俺は君に惚れたんだ。どうしても気持ちを伝えたくてね。
それで、あのその、すぐにとは言わないから俺と付き合っ」

ヤナセが精一杯、愛の告白をしているなか、セラはおまえの告白なんぞクソ喰らえといわんばかりに遮った。

「あたしはおまえなんか好きじゃねえよ!
あのピンク女と遊んでろ!」

動くたびに谷間が見える露出度の高い白いタンクトップから、姉同様に大きな乳房が上下左右に揺れている。

一目惚れした女を初対面で激しく怒らせてしまった事で、俺の恋は一瞬で終わった。
怒り狂っている女を見て敗者復活のチャンスさえ望めないだろうーーーーヤナセはそう考え落胆した。

「あぁ…。」

現実を受け止める事ができないヤナセは、まるで宇宙服を着用しないまま宇宙空間に投げ出され酸素欠乏による窒息死寸前の状態であり、息も絶え絶えだ。

出会ってすぐ失恋したヤナセのそばで、ケンスケはセラを手に入れてやると意気込み心を燃えあがらせていた。






















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