165 / 275
妹のピンチ、姉は大ピンチ!?
164
しおりを挟む
「そんな遠くからガンつける事なんて、誰だってできるよーだ!この弱虫!」
ソラに怒鳴られたあげく願いを拒否されたモモは、その恨みをセラにぶつけた。
「ヘンチクリン女に変わってアンタをスカウトしよっかなと思ったけどさ、止めたよ。
だってアンタ、ビッチじゃん。
変なビョーキを持ってたら怖いもん。
ほらほら!
もう用無しなんだからいつまでもガンつけてないでどっか行っちゃいなよー。
バイバーイ!キャハハハハ!」
「ビッチだぁ?人が我慢していれば調子にのりやがって!むかつくからアイツ、やっちまおうかな…。」
元来、野生的なセラは喧嘩を売られた際にする、メスのトラのような鋭い眼光を放った。
姉と瓜二つの顔をした妹ではあるが、ソラにはない生まれ持った表情を持ち合わせている。
「な、なにあの顔…ちょっとヤバくない?」
先ほどより睨みを効かせた本気のセラにモモは恐れをなした。
恐怖に支配されつつあるモモはジリジリ、後ずさっていく。
セラはハッとした。
思わず口にしたくらいだった。
何より大切な事を思い出したのだ。
思いもよらないモモという頭のおかしい人物から挑発をされ、ソラから目を離してしまった事に気付く。
慌てたセラはすぐさま、後ろを振り返った。
死んだ街をゾンビのようにあてもなく蠢く人々のなかにいても、決して混じる事のないソラを探す手間は不要だった。
ソラの歩行速度は決して速くはない。
同年代の女子に比べれば遅い方だろう。
それでもピンと背筋を伸ばし、指先に力を入れ両手をしっかり振って歩く姿は以前のソラとはひと味違っていた。
何かを掴んだような凛とした後ろ姿で歩く姉を、見失わずに済んだ事でホッとしたのと同時に怒りに支配された自分を恥じた。
もしもここで大好きな姉を見失い、凄惨な事件にでも巻き込まれてしまったらーーーー尊い命こそ奪われなかったとしても、大切な身体と心に一生の傷を負わされてしまったらーーーー
セラにはその十字架を背負って生きられないだろう。
「あらぁ?あらあらあら?さっきの威勢はどこへ行ったのかなぁ?
あんなにモモをガンつけておいて、今になってビビっちゃったわけ?
ダッサー!クソダッサー!」
物事を縦にしか考えられず奥行きのはない思考力のモモには、セラを単なるハッタリだけの女だと判断した。
セラの握り拳は震えていたが、数十メートル先のソラを追いかけるのに集中させた。
「アホや、あの女。なんにも知らんから突っかかっていけるんだ。
妹ちゃんの怖さをとくと味わった俺には命知らずにしか思えん…。」
ミカミはとある事務所の敷地内でブツブツ呟いているその時だ。
「おう、誰が命知らずだって?」
ソラに怒鳴られたあげく願いを拒否されたモモは、その恨みをセラにぶつけた。
「ヘンチクリン女に変わってアンタをスカウトしよっかなと思ったけどさ、止めたよ。
だってアンタ、ビッチじゃん。
変なビョーキを持ってたら怖いもん。
ほらほら!
もう用無しなんだからいつまでもガンつけてないでどっか行っちゃいなよー。
バイバーイ!キャハハハハ!」
「ビッチだぁ?人が我慢していれば調子にのりやがって!むかつくからアイツ、やっちまおうかな…。」
元来、野生的なセラは喧嘩を売られた際にする、メスのトラのような鋭い眼光を放った。
姉と瓜二つの顔をした妹ではあるが、ソラにはない生まれ持った表情を持ち合わせている。
「な、なにあの顔…ちょっとヤバくない?」
先ほどより睨みを効かせた本気のセラにモモは恐れをなした。
恐怖に支配されつつあるモモはジリジリ、後ずさっていく。
セラはハッとした。
思わず口にしたくらいだった。
何より大切な事を思い出したのだ。
思いもよらないモモという頭のおかしい人物から挑発をされ、ソラから目を離してしまった事に気付く。
慌てたセラはすぐさま、後ろを振り返った。
死んだ街をゾンビのようにあてもなく蠢く人々のなかにいても、決して混じる事のないソラを探す手間は不要だった。
ソラの歩行速度は決して速くはない。
同年代の女子に比べれば遅い方だろう。
それでもピンと背筋を伸ばし、指先に力を入れ両手をしっかり振って歩く姿は以前のソラとはひと味違っていた。
何かを掴んだような凛とした後ろ姿で歩く姉を、見失わずに済んだ事でホッとしたのと同時に怒りに支配された自分を恥じた。
もしもここで大好きな姉を見失い、凄惨な事件にでも巻き込まれてしまったらーーーー尊い命こそ奪われなかったとしても、大切な身体と心に一生の傷を負わされてしまったらーーーー
セラにはその十字架を背負って生きられないだろう。
「あらぁ?あらあらあら?さっきの威勢はどこへ行ったのかなぁ?
あんなにモモをガンつけておいて、今になってビビっちゃったわけ?
ダッサー!クソダッサー!」
物事を縦にしか考えられず奥行きのはない思考力のモモには、セラを単なるハッタリだけの女だと判断した。
セラの握り拳は震えていたが、数十メートル先のソラを追いかけるのに集中させた。
「アホや、あの女。なんにも知らんから突っかかっていけるんだ。
妹ちゃんの怖さをとくと味わった俺には命知らずにしか思えん…。」
ミカミはとある事務所の敷地内でブツブツ呟いているその時だ。
「おう、誰が命知らずだって?」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる