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第4部 姉貴を尾行!
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ソラは外出する際に必要な武装で顔を覆いセラに言った。
「シュゴー、止めても無駄だからね。独りで戦わなきゃ意味ないのだから。」
「わかったよ、もうなんにも言わない。あたしは姉貴の気持ちを尊重する事に決めた。」
「ようやくわかってくれたみたいね。お姉ちゃんは嬉しいわ。
絶対にミカミを捕まえて責任を果たすからね。シュゴー。」
「うん、期待してる。」
ソラは玄関ドアを開けて颯爽と出て行った。
「1、2、3、4、5…」
セラは瞳を閉じて数を小声で数え始めた。
「6、7、8、9、10、姉貴は鈍臭いからまだ近くにいるはず。」
セラは30まで数えて距離を保った後、姉を尾行するつもりだ。
「27、28、29、30。さすがにもういいよな。
単独行動は許さないって言ったでしょ?姉貴。」
姉想いの妹は歩道に飛び出して辺りを見回した。
ソラは人が行き交う交差点を渡ろうとしている。
日中はまだ日差しが強く、日傘をさす女性が多い。
「一応、オシャレのつもりで買った伊達メガネをかけて変装したつもりだけど、あんまり意味がないか。
この程度の変装なんかじゃ、姉貴が後ろを振り返ったら1発でバレちゃうなぁ。」
さっそくセラの不安は的中した。
ソラは交差点を渡り切って顔を左右に向けると美しい黒髪を靡かせた。
それからすぐに立ち止まり後ろを振り返った。
「ひゃ、しまった!」
隠れる場所もないセラはあっけなく尾行がバレたのではないかと動揺したが、ソラはセラに気付く事はなくピンと張った尻を振って再び歩き出した。
「ほっ。気づかれずに済んで良かったけれど、伊達メガネをかけただけで姉貴を騙せちゃうなんて。
ちょっと心配になっちゃうな…。」
無意識に伊達メガネのフレームを人差し指と親指で触りながら思った。
老若男女問わずソラとすれ違う人々は、振り返って見たり声を出して驚く人もいる。
常に人から監視され追われる立場にいたソラには今更といった感じで、歩みを止める事はなかった。
「姉貴はどこへ行くんだ?当てがあるのかな?」
妹はソラの行動に疑問を感じながらも、バレないように注意深く尾行している。
明らかに昭和の時代に作られたであろう老朽化した駅前商店街のアーチを潜った。
商店街を行き交う人々は買い物袋を持った主婦や自転車に跨る老人ばかりだ。
ソラは一定の速度を保ち商店街を歩き続ける。
「あぁ、あたし追い抜いちゃいそう。」普段から早歩きのセラにはソラの歩行スピードが焦ったい。
「それにしたって、いったいこんな商店街になにがあるってわけ?
変態ネズミがこの辺に潜伏しているの?」
「いらっしゃい!」
威勢の良い昔気質の角刈り頭の親父が店に近づくソラに声をかけた。
首を傾げる妹をよそに姉は八百屋に行き、カボチャやキュウリを手に取っている。
「買い物をしているだけじゃん!」
「シュゴー、止めても無駄だからね。独りで戦わなきゃ意味ないのだから。」
「わかったよ、もうなんにも言わない。あたしは姉貴の気持ちを尊重する事に決めた。」
「ようやくわかってくれたみたいね。お姉ちゃんは嬉しいわ。
絶対にミカミを捕まえて責任を果たすからね。シュゴー。」
「うん、期待してる。」
ソラは玄関ドアを開けて颯爽と出て行った。
「1、2、3、4、5…」
セラは瞳を閉じて数を小声で数え始めた。
「6、7、8、9、10、姉貴は鈍臭いからまだ近くにいるはず。」
セラは30まで数えて距離を保った後、姉を尾行するつもりだ。
「27、28、29、30。さすがにもういいよな。
単独行動は許さないって言ったでしょ?姉貴。」
姉想いの妹は歩道に飛び出して辺りを見回した。
ソラは人が行き交う交差点を渡ろうとしている。
日中はまだ日差しが強く、日傘をさす女性が多い。
「一応、オシャレのつもりで買った伊達メガネをかけて変装したつもりだけど、あんまり意味がないか。
この程度の変装なんかじゃ、姉貴が後ろを振り返ったら1発でバレちゃうなぁ。」
さっそくセラの不安は的中した。
ソラは交差点を渡り切って顔を左右に向けると美しい黒髪を靡かせた。
それからすぐに立ち止まり後ろを振り返った。
「ひゃ、しまった!」
隠れる場所もないセラはあっけなく尾行がバレたのではないかと動揺したが、ソラはセラに気付く事はなくピンと張った尻を振って再び歩き出した。
「ほっ。気づかれずに済んで良かったけれど、伊達メガネをかけただけで姉貴を騙せちゃうなんて。
ちょっと心配になっちゃうな…。」
無意識に伊達メガネのフレームを人差し指と親指で触りながら思った。
老若男女問わずソラとすれ違う人々は、振り返って見たり声を出して驚く人もいる。
常に人から監視され追われる立場にいたソラには今更といった感じで、歩みを止める事はなかった。
「姉貴はどこへ行くんだ?当てがあるのかな?」
妹はソラの行動に疑問を感じながらも、バレないように注意深く尾行している。
明らかに昭和の時代に作られたであろう老朽化した駅前商店街のアーチを潜った。
商店街を行き交う人々は買い物袋を持った主婦や自転車に跨る老人ばかりだ。
ソラは一定の速度を保ち商店街を歩き続ける。
「あぁ、あたし追い抜いちゃいそう。」普段から早歩きのセラにはソラの歩行スピードが焦ったい。
「それにしたって、いったいこんな商店街になにがあるってわけ?
変態ネズミがこの辺に潜伏しているの?」
「いらっしゃい!」
威勢の良い昔気質の角刈り頭の親父が店に近づくソラに声をかけた。
首を傾げる妹をよそに姉は八百屋に行き、カボチャやキュウリを手に取っている。
「買い物をしているだけじゃん!」
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