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オオニシの苦悩、ソラの決心
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「ごめん、部屋が散らかっているから女性を招き入れる事はできねえや。
変な事を言ってすまなかったねぇ。」
オオニシはしどろもどろになって発言を無理やり撤回した。
「そんな事ないですよ!ウチ、とっても嬉しかったんですから。」
午前中のさわやかな青空をバックにヒロコが笑顔になるのを見て、オオニシはドキッとしている。
「オオニシさんのお部屋、散らかっているんですよね。
助けて頂いたお礼に片付けさせてくれませんか?
ウチ、このくらいしかできないですから。」
「いやいや!お姉さんが想像している以上の散らかりようなんだ。
あんな部屋にお姉さんが入ったら、病気になってしまうかってくらいにな。」
オオニシはまさかの展開に動揺しているが、内心は嬉しかったのだ。
「ウチ、兄が2人いる男兄弟で育ちました。
だから男性のお部屋に抵抗はないですよ。」
ヒロコの目の前には、そびえ立つほど長身であるオオニシが玄関に立ち塞がっている為、部屋の様子が見えない。
背伸びをしたり、キョロキョロ顔を動かして横から部屋を見ようとしている。
「しかしだな、おっさんである俺の汚い部屋をうら若き乙女にやらせるなんて、そんな事は許されないよ。」
ヒロコは口に手を当てて笑い出した。
「ごめんなさい!我慢しなきゃと思ったんですが笑いが込み上げちゃって!」
なぜヒロコが笑い出したかわからずオオニシはキョトンとしている。
「"うら若き乙女"だなんて言葉をリアルで言った人はウチの29年の人生の中で初めてなんです。
だからつい我慢できなくって。」
そう言うとヒロコは声を出してまた笑い始めた。
「そうだったのかい?何はともあれ笑ってくれて良かったよ。
お姉さんが笑ってると俺みてぇな、おっさんは嬉しいものなんだ。」
「うら若き乙女だからですか?」
ヒロコはパチパチと手を叩きながら笑いを止められるずにいる。
涙を流してはいるが先程のような恐怖体験からくる涙ではなく笑いからくる涙であった。
オオニシの人柄にヒロコは親近感を抱いている。
玄関先でひとしきり笑ったヒロコは再度、オオニシに尋ねた。
「オオニシさんのお部屋を掃除させてください。
ウチ、男の人が思うほど抵抗はないんですよ。」
「あぁ、嬉しいけど、やめておくよ。」
「そうですか。わかりました。」
「本当にありがとう。ではまた。」
逃げるように部屋に入ったオオニシは玄関ドアを閉めた。
パタン
あっさりドアを閉められたヒロコは寂しげな表情を浮かべた後、無理やり笑顔を作り玄関ドアに一礼をした。
踵を返し道路を挟んだ向かい側にある自分が住むマンションへ向かおうとした時だ。
カチャ
オオニシはドアを勢いよく開けた。
「お姉さん!お、俺、年末の大掃除みたく部屋を綺麗にするよ。
その時、部屋に上がってくれないか?
もちろん、嫌ならいいんだ。」
変な事を言ってすまなかったねぇ。」
オオニシはしどろもどろになって発言を無理やり撤回した。
「そんな事ないですよ!ウチ、とっても嬉しかったんですから。」
午前中のさわやかな青空をバックにヒロコが笑顔になるのを見て、オオニシはドキッとしている。
「オオニシさんのお部屋、散らかっているんですよね。
助けて頂いたお礼に片付けさせてくれませんか?
ウチ、このくらいしかできないですから。」
「いやいや!お姉さんが想像している以上の散らかりようなんだ。
あんな部屋にお姉さんが入ったら、病気になってしまうかってくらいにな。」
オオニシはまさかの展開に動揺しているが、内心は嬉しかったのだ。
「ウチ、兄が2人いる男兄弟で育ちました。
だから男性のお部屋に抵抗はないですよ。」
ヒロコの目の前には、そびえ立つほど長身であるオオニシが玄関に立ち塞がっている為、部屋の様子が見えない。
背伸びをしたり、キョロキョロ顔を動かして横から部屋を見ようとしている。
「しかしだな、おっさんである俺の汚い部屋をうら若き乙女にやらせるなんて、そんな事は許されないよ。」
ヒロコは口に手を当てて笑い出した。
「ごめんなさい!我慢しなきゃと思ったんですが笑いが込み上げちゃって!」
なぜヒロコが笑い出したかわからずオオニシはキョトンとしている。
「"うら若き乙女"だなんて言葉をリアルで言った人はウチの29年の人生の中で初めてなんです。
だからつい我慢できなくって。」
そう言うとヒロコは声を出してまた笑い始めた。
「そうだったのかい?何はともあれ笑ってくれて良かったよ。
お姉さんが笑ってると俺みてぇな、おっさんは嬉しいものなんだ。」
「うら若き乙女だからですか?」
ヒロコはパチパチと手を叩きながら笑いを止められるずにいる。
涙を流してはいるが先程のような恐怖体験からくる涙ではなく笑いからくる涙であった。
オオニシの人柄にヒロコは親近感を抱いている。
玄関先でひとしきり笑ったヒロコは再度、オオニシに尋ねた。
「オオニシさんのお部屋を掃除させてください。
ウチ、男の人が思うほど抵抗はないんですよ。」
「あぁ、嬉しいけど、やめておくよ。」
「そうですか。わかりました。」
「本当にありがとう。ではまた。」
逃げるように部屋に入ったオオニシは玄関ドアを閉めた。
パタン
あっさりドアを閉められたヒロコは寂しげな表情を浮かべた後、無理やり笑顔を作り玄関ドアに一礼をした。
踵を返し道路を挟んだ向かい側にある自分が住むマンションへ向かおうとした時だ。
カチャ
オオニシはドアを勢いよく開けた。
「お姉さん!お、俺、年末の大掃除みたく部屋を綺麗にするよ。
その時、部屋に上がってくれないか?
もちろん、嫌ならいいんだ。」
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