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オオニシの苦悩、ソラの決心
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オオニシは家賃を払えず生活が破綻しかけている。
絶望感に苛まれる状況にありながら、どこからこんな期待がやってくるのかと自らを恥じた。
そう考えた瞬間から頭から優しいソラの顔が消失した。
「クソ…おっさんの俺が未成年の女の子に恋するなんてどうかしてるだろ…気持ち悪りぃ…現実を見ろよ。情けねぇ。」
自分の頭を拳骨でコツコツひっぱたきながら我に返った。
「俺は底抜けのバカだ。大馬鹿者だ。口癖みたいに顔を合わせば俺をバカバカ言っていた死んだお袋の言う通りだよ。」
布団を捲りむくりと立ち上がる。
急ぐ事もなく、いつ洗濯をしたかわからない短パンを履き玄関ドアを開けた。
「はい。」
「あっ、おはようございます!
突然やってきてしまいすみません。
オオニシさんですよね?」
目の前にはソラではなく、ヒロコが手荷物を持って立っていた。
「あぁ、あん時の?あれから大丈夫でしたか?怪我とかしてないですか?」
オオニシはヒロコの突然の来訪に驚いた。
「ええ、おかげさまで怪我はしていません。
あの男に襲われた恐怖がなくなったわけではありませんが。」
ヒロコは俯いたが、暗い話をしに来たわけではないと気持ちを切り替えてオオニシを見た。
「ウチ、あの時のお礼をちゃんとしてなかったのでお伺いしたんです。」
「アハハハ、いいんだよ。礼なんて。
それよりアイツはまだ警察に捕まっていないだろ。
確か前にも話したが、アイツはきっとあなたの所へ再びやってくるはずなんだ。
だから気をつけた方がいい。俺はあなたとあの姉妹が心配でね。」
「ありがとうございます。」
ヒロコは泣きそうな表情を浮かべながら深々と頭を下げた。
「いやぁ、そんな大袈裟だよ。こんなんでも俺は男なんだ。助けるのは当たり前だよ。」
顔を上げたヒロコは涙を抑えきれず、人差し指や中指で涙を拭いた。
オオニシとっては妙齢の女性の涙を見るには耐えられず、いたたまれない気分になってしまっている。
「怖い思いしたよな…そりゃショックだよ…。あんな気持ち悪い野郎に脅されたんだからさ。
クソ!思い出したらムカムカしてきたぜ!
必ずみっけてぶちのめしてやる!」
先ほどとはうってかわり青筋を立てて怒りを露わにした。
「ごめんなさい!ウチのせいで嫌な事を思い出させてしまいましたね…。
これはご迷惑をかけたので、ほんの気持ちです。
つまらない物ですが受け取って頂けませんか?」
手に持っていた紙袋を両手でオオニシに手渡した。
「いやぁ、すまんねぇ。かえって気を遣わせてしまってさぁ。」
申し訳なさそうにオオニシは右手を頭に乗せて、何度も頭をペコペコと小刻みに下げた。
「もし、良かったら部屋に上がらないかい?」
俺はいったい何を口走っているんだ!?
どこかに頭をおもいきりぶつけて狂ってしまったかとオオニシは思った。
絶望感に苛まれる状況にありながら、どこからこんな期待がやってくるのかと自らを恥じた。
そう考えた瞬間から頭から優しいソラの顔が消失した。
「クソ…おっさんの俺が未成年の女の子に恋するなんてどうかしてるだろ…気持ち悪りぃ…現実を見ろよ。情けねぇ。」
自分の頭を拳骨でコツコツひっぱたきながら我に返った。
「俺は底抜けのバカだ。大馬鹿者だ。口癖みたいに顔を合わせば俺をバカバカ言っていた死んだお袋の言う通りだよ。」
布団を捲りむくりと立ち上がる。
急ぐ事もなく、いつ洗濯をしたかわからない短パンを履き玄関ドアを開けた。
「はい。」
「あっ、おはようございます!
突然やってきてしまいすみません。
オオニシさんですよね?」
目の前にはソラではなく、ヒロコが手荷物を持って立っていた。
「あぁ、あん時の?あれから大丈夫でしたか?怪我とかしてないですか?」
オオニシはヒロコの突然の来訪に驚いた。
「ええ、おかげさまで怪我はしていません。
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「アハハハ、いいんだよ。礼なんて。
それよりアイツはまだ警察に捕まっていないだろ。
確か前にも話したが、アイツはきっとあなたの所へ再びやってくるはずなんだ。
だから気をつけた方がいい。俺はあなたとあの姉妹が心配でね。」
「ありがとうございます。」
ヒロコは泣きそうな表情を浮かべながら深々と頭を下げた。
「いやぁ、そんな大袈裟だよ。こんなんでも俺は男なんだ。助けるのは当たり前だよ。」
顔を上げたヒロコは涙を抑えきれず、人差し指や中指で涙を拭いた。
オオニシとっては妙齢の女性の涙を見るには耐えられず、いたたまれない気分になってしまっている。
「怖い思いしたよな…そりゃショックだよ…。あんな気持ち悪い野郎に脅されたんだからさ。
クソ!思い出したらムカムカしてきたぜ!
必ずみっけてぶちのめしてやる!」
先ほどとはうってかわり青筋を立てて怒りを露わにした。
「ごめんなさい!ウチのせいで嫌な事を思い出させてしまいましたね…。
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つまらない物ですが受け取って頂けませんか?」
手に持っていた紙袋を両手でオオニシに手渡した。
「いやぁ、すまんねぇ。かえって気を遣わせてしまってさぁ。」
申し訳なさそうにオオニシは右手を頭に乗せて、何度も頭をペコペコと小刻みに下げた。
「もし、良かったら部屋に上がらないかい?」
俺はいったい何を口走っているんだ!?
どこかに頭をおもいきりぶつけて狂ってしまったかとオオニシは思った。
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