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大嵐セラVS変態ミカミ

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ユウシンはソラとセラの安否が気になって、いてもたってもいられなくなり玄関ドアを開けた。

「ユウシン、どこへ行くの?」

「パトカーがこのマンション付近に停まったんだ。気になるから見に行ってくる。」

「事件だったらどうするの?危ないからやめなさい!」

「行ってきます。」

母の忠告を無視してユウシンはエレベーターに向かった。
行き先は先ほどソラとセラが降りたフロアだ。

エレベーターに乗ってユウシンはすぐに気がつく。
床には血痕が付着していた。

「え?血痕?まさかお姉さん達が危ない人に刺されたとか?まさかね…。」

チン

ユウシンが乗ったエレベーターはセラが借りている部屋があるフロアに着いた。

ドアが開くと、道標みちしるべのように血が点々としている。
真っ赤な血はまだ新たらしかった。

エレベーターを降りて血痕をなぞるように通路を歩くと、美人姉妹と警察官が話している。

「不安が的中した。やっぱりお姉さん達の身に何かがあったんだ。」

「お姉さんに婚姻届を手渡した男は以前のお住まいの隣人なんですね。
ならば、男はストーカーでしょうな。」

50代くらいの警察官がソラに言ったのがユウシンの耳にも聞こえてきた。

「ストーカー?」

お姉さんはストーカー被害にあっているのか。ユウシンはギョッとした。

警察官と姉妹は一通り話をした後、ソラとセラはお礼を言い始め、警察官も頭を下げた。

「それにしても美人な姉妹だな。」

50代くらいの警察官が若い警察官と話しながらユウシンがいるエレベーター方面に向かってきた。

「あれ?あの子。」

2人の警察官の後ろにいるセラがユウシンに気づき、隣にいるソラに伝えた。

「あの子と会うのもこれで3回目だわ。」

「アイツも姉貴のストーカーじゃね?」

「さすがにそれはないと思うよ。ちょっと呼んでお話ししてみる。」

「おいで、おいで。」ソラは手招きした。

「マジで呼ぶの?」

ソラに手招きされたユウシンは挙動不審になりながら姉妹に近づいた。

「こんばんわ。」

「あっ、こんばんわ…。」

ユウシンは呼び出されて嬉しい反面、なぜここにいるのかを問われてしまったら「お姉さん達が心配だった。」なんて返答はできない。

「でも、なんでここにいるのぉ?」

さっそくソラからの質問にユウシンは口篭くちごもってしまった。

「偶然、パトカーから降りてきた2人の警察官とエレベーターで乗り合わせたんです。それで…。」

ユウシンは咄嗟に嘘をついた。

「それでここまで来たの?」

「はい。自分が住むマンションでなにがあったのか気になってしまって。」

「実はね、私が以前住んでいたアパートの隣人が婚姻届を持って突然現れたの。」

「えっ!それは怖い思いをしましたね…。」

「その後、私の妹がその男に、ん~と、なんて技だっけ?」

ソラはセラに聞いた。

「ムエタイ仕込みのパンソーク!日本語では肘打ちね。アイツ、ノックアウトしたつもりだったけど警察を呼んだ瞬間、飛ぶように逃げていったわ。
逃げる体力はあったみたい。」

セラは怒った顔をしながら腕を組んでいて、シャツからはみ出そうなくらい胸の谷間が盛り上がっている。

セラの大きな乳房を見てはいけないと思ったユウシンはすぐ目線を外して郵便受けに視線を変えた。


































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