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ソラが女子高校生だった頃。逃亡先は新横浜

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つけてくる者がいないか細心の注意を払いホテルの部屋のドアを開けた。

「ふぅ。」

ウミは自分が有名な逃亡者になった気分だった。

「ソラ、腹減ってるだろ?カップ麺や弁当を買ってきたぞ。」

シャー

浴室のドアからシャワーを浴びている音が聞こえてくる。

「なんだ。風呂か。」

買ってきたばかりのコーラのキャップを開けてウミは口をつけた。

ガタッ

「だあれ?ウミなの?」

「あぁ、俺だ。
命懸けでアレコレ買ってきたから好きなもん食ってくれ。
それと、もう一つおまえに頼まれた湿布薬はコンビニで売ってなかったよ。
ドラッグストアまで行きゃあるんだろうけど、面が割れちまってるから迂闊うかつな行動は取れないしな…。」

ウミはベッドに座って言った。

「ウミィ、頼んでおいて悪いんだけど、私の下着は買ってきてくれた?」

脱衣所から声が聞こえてくる。

「そうだった。言うのを忘れていたけど俺、ちゃんと買ってきたんだぜ。
ただよ、女もんのパンツとかわかんねぇから、適当に買っちまったけど大丈夫かな?」

「今、シャワー浴びてパンティを履きたいから持ってきて欲しいの。」

「あ、あぁ。」

ウミは、顔を背けて下着が入ったビニール袋ごとソラに手渡した。

「ありがとう。うん、これで大丈夫よ。」

ソラはビニール袋からガサガサ下着を取り出して身に付けたあと、ドライヤーで髪を乾かし始めた。

「ソラァ?さっきみたいにおまえのスマホで情報収集をしていいか?」

ドライヤーを使用しているソラに聞こえるよう大きな声で言った。

「どうぞ!」

ソラのスマホの待ち受けは桜木町のレストランで食事をしていた時のウミだった。

「アハハ。こん時はまさかこんな事になるなんて夢にも思わなかったな。」

今より平穏な時間を過ごしていた事がウミにとって、遠い過去のように感じていた。

「あれから俺らを探している連中の動きはあるかな?」

ネットに接続して、掲示板に立てられているスレッドを見る。

「スーパー美少女の大嵐ソラを探せ、巨乳のソラちゃんはどこ、あの青髪の奴が街中で暴れたらしい、肉体関係が未経験と思われるソラちゃんは青髪のガキにだまされている。
なんだコイツら?最新の書き込みは俺の事かよ。
こんな情報しかないなら、安心…いや安心は出来ねぇよな。」

ベッドに座っていたウミは横になってスマホを真剣に見つめている。

「あん、着替えがないわ。
私ね、走っていた時のワンピは汗で気持ち悪いから今は着たくない。
下着姿でそっちに行くけどいいよね?」

情報収集で夢中になっていて深く考えていないウミは適当に返事をした。

「うん。」

「私も疲れちゃった。早くベッドで休みたいな。」

「あぁ。」

ソラは真っ赤なブラジャーと同じく真っ赤なショーツというあられもない姿でウミの前に現れた。






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