私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
上 下
117 / 275
ソラが女子高校生だった頃。逃亡先は新横浜

116

しおりを挟む
雑踏の中、2人は当てもなく街中を駆け回った。

「シュゴ、シュゴ、もう私、限界だよ。どこかで休みたい。シュゴ、シュゴ。」

「はぁ、はぁ、駅やタクシー乗り場は異様に人がいて俺らを捕まえようと張ってるんじゃないのか?」

「ウミィ、これからどうすればいいの…。」

ソラが抱きついてきた。

「…あそこのビルで身を隠そう。」

注意深く周りを警戒しながらソラの手を引いて雑居ビルの中へ入った。

街中を輩達に追われたソラは疲れ果てて、雑居ビルの階段で座り込んだ。

チン

一階のエレベータードアが開く。

雑居ビルの共有スペースで身を隠す2人は、エレベーターから降りてきた作業服姿の男3人とウミは目が合った。

「あ、コイツ?青髪のガキだ!」

「おぉー!大嵐ソラちゃんじゃん?昨日も写真でお世話になりました。」

「クソ、まただ。」

「シュゴー、ウミィ、もう私、歩けない…。」

ソラは作業服を着た男達が近づいて来ても、座り込んだままで動けなくなっている。

「そんなら早く乗れよ!さぁ早く!」

「ウミィ…。」

「泣いている場合じゃねえ!」

ソラをおぶって、再び当てもなく走り出した。

体力には自信があるウミだが、細身とはいえソラをおぶった状態で追ってから走って逃げるのは至難の業だ。
ウミもまた限界を感じていた。

「うぅ、はぁ、クソ…キツイな…。」

2人はまたビルの中に入っていく。

「また、こんなとこに居たってさっきみたく襲われるぞ。」

汗だくのウミは息を切らしながら言った。

ウミにおぶられていたソラはお礼を言って背中から降りると辺りを見渡した。

制服を着たフロントスタッフがキャリーケースを携えた宿泊客に笑顔で対応している。

「ウミ、ここってホテルみたいだよ。」

「ビジネスホテルか?」

「たぶんそうだと思う。」

自動ドアのある出入り口付近にいたウミはソラの隣まで行き、フロントを見た。

「ホテルだな。外国人観光客らしき人もいるし。」

「ここで休もう。私はもう足が痛くて歩けないよ…。」

「確かに外にいるよりホテルの方が安心かもな。ただ、未成年でも泊まれるもんか?部屋は空いてんのか?」

ウミは疑問を口にした。

「…とりあえず私、フロントで宿泊の手続きをしてみるね。」

ソラはヨロヨロした足取りでフロントへ向かう。
かなり足が痛いようで右足を庇いながら歩いている。

遅れてウミもフロントへ向かった。
すぐにソラに追いついて2人でフロントで宿泊手続きをした。



****

「あいつら、ネットがどうたら言ってたけど、これの事か。」

ソラと一緒にスマホの画面を覗いた。

「こんなに詳しく俺らの足取りが書かれてやがるとは、さすがに俺も怖えよぉ。」

「雑居ビルで見かけた後、行方不明。
どこにいるかわからない。
神隠しみたいに消えた…。
この書き込みを読むと私達がホテルで宿泊しているのは気付かれてないみたい。」

ソラは掲示板に書かれた言葉を読んだ。

「これくらいじゃあ安心できねえけど、居場所が特定されていないだけマシだな。」

ウミはスプリングの効いたベッドの上で大の字になった。

ソラの身体は振動で揺れた。






























しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...