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ソラがまだ女子高校生だった頃。ママ邪魔しないで!
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しおりを挟むソラは目覚まし時計が鳴る5分前に目を覚ましていた。
「ズズズ…。」
「ウミ、ぐっすり寝てる。ウフフ。」
いつもならカーテンを全開に開けて朝陽を部屋に入れるが、まだウミが寝ている為、カーテンは開けなかった。
タンタンタンタン
階段を下りて、薄暗い部屋に電気をつける。
朝が弱かったがウミの為に弁当を作るようになってから家族の中で1番早起きになり、部屋に明かりをつけるのが日課になっている。
ソラはキッチンでエプロンを締めた時、昨日、ウミに渡せなかった弁当箱を思い出した。
「あぅ、ウミのお弁当箱を洗うの忘れてた!」
カバンの中から取り出してからどこへ置いたっけ?
キッチンにもなければ食器乾燥機の中にもない。
探すところがなくなったので食器棚の戸を開けた。
「えーなんでここにあるわけ?
食器棚にお弁当箱を入れたつもりはないんだけどなあ。
しかも、ピカピカに洗われている。ママが片付けてくれたのかな?」
不思議に思いつつも、弁当箱の中で放置されたオカズが腐ってなくて良かった。ソラは安堵した。
心配事もなくなったので音程のズレた鼻歌を気分良く口ずさみながら弁当に入れるオカズを作り始めた。
「あぁ、良い匂いがするわ。これはハンバーグね。」
「ママ、おはよぉ。
昨日のウミのお弁当箱をママが洗ってくれたの?」
「ううん。ママじゃないわよ。」
ソラの母は首を横に振った。
「ええ。それなら誰だろう?」
エプロンに手を拭きながらソラは考えている。
「前から思ってたけど、ママが作った味を忠実に守ってくれているわね。さすがお姉ちゃんだわ。」
「やったねぇぇ!私、その言葉を待っていたの!」
太陽の光がキッチンに射し始めた頃、ウミが階段を降りてきた。
トタトタトタ
「ウミィ、おはよう。」
気分の良い朝を迎えられたソラは元気よく挨拶をした。
「おはよう、早起きだな。」
「ウミのお弁当も作っているからよ。」
「そうだった。ごめん…。」
気まずそうに頭を下げた。
「また謝るぅぅ。謝んなくて大丈夫よぉ…っあぁ!そうそう、あのねウミ?昨日のお弁当箱はもしかしてウミが洗ってくれたの?」
菜箸を持ちながらウミに聞いた。
「おぉ、俺だよ。食ってから弁当箱を洗ったんだ。」
「ウミが洗ってくれてたんだ…。しかも食べてくれたなんて。ねぇ、お腹は痛くない?大丈夫?」
「アハハ、腹は痛くなんかないぜ。美味いものを食べさせて貰ったんだ。
弁当箱くらい洗わせてくれよ。」
「ウミィ!!」
ソラはフライパンを持ったままウミに抱きついた。
「おい!?ソラ、あぶねぇよぉ!」
母がリビングからキッチンにやってきた。
「ウミ君、おはよう。」
「あ、おばさん。おはようございます。」
「ウフフ、ラブリィなクマのパジャマを着ちゃって可愛いわね。」
「コンビニに行ったら、おじさんみたいなのばっかりだったから、私が好きなクマのキャラクターものにしたの。
ウミって童顔だから可愛い服が似合うと思うわ。」
「お姉ちゃんは自分好みのものをウミ君に押し付けちゃってるわね。」
「パンツだってクマだよぉ。バックプリントはおしゃぶりを咥えている赤ちゃんのクマなの。」
「やだぁ。可愛いいじゃない。ウミ君、パジャマのズボンを脱いで、若い男の子の可愛いお尻をおばさんに見せてごらん。」
手のひらを合わせてニコニコしている。
「えっ、いやそれはちょっと…。」
「ママ、ほんっとに最低!!おウチに男の子がいるとこんなに変わっちゃうのね!!」
「ウフフ冗談よ。朝食はママが作るからここでバトンタッチ。ウミ君は顔を洗ってらっしゃい。」
「あ、はい。」
「ウミの歯ブラシとコップは洗面台に置いてあるから、それを使っていいよぉ。」
「あぁ、ありがとう…。」
洗面台に立ったウミはすぐに気付いた。
歯ブラシもコップも、パジャマやパンツと同じブランドのクマシリーズだった。
「アハハ…。」
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