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ソラが女子高校生だった頃。ウチで生活しよっ!ね?
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破れたドアの穴から景色が丸見えでドアノブだけが残っている。
2人は穴から外へ出た。
「ソラ、もう泣くなよ。でもありがとうな。」
ギターが泣いている気がしてソラは振り返った。
大きく空いたドアの穴からちょうどエレキギターが見える。
ウミはスタジオの外に出てから一度も振り返らなかったが、私より辛いはずなんだとソラは思った。
俯きながら数メートル先を歩くウミを小走りで追いかけて、横に並んで歩く。
後ろ髪を引かれる思いでソラはウミを連れて自宅へ向かった。
「シュゴー、雨、止まないね。」
ウミの制服のズボンは膝まで濡れている。
「あぁ。」
「お願いがあるの。」
ウミはソラの顔を見た。
「腕を組んでもいい?」
「えっ?」
対向車線を通る車のヘッドライトが相合傘をする2人を照らす。
「シュゴー、何も言わないって事は良いって事だよね?」
「そういや、おまえが作った弁当はまだある?はらぺこなんだよな。」
話をすり替えたのはわかっていたが、質問に答えた。
「お昼はね、ウミが好きなハンバーグがメインのお弁当だったんだよ。」
「まだあるんだろ?後で食いたいな…。」
「カバンの中にあるけど、もう傷んでるかもしれないから食べるのはやめた方いいわ。」
ウミは傘をさすソラの手を少しの間だけ優しく添えるように重ねた。
「おまえの傘、男の俺が持つよ。」
傘に当たる雨粒はいっそう激しさを増していく。
2人は最寄駅に到着した。
駅の改札は帰宅ラッシュで人がごった返している。
「この時間は混んでんだなぁ。まぁしゃーねぇか。」
駅の照明の下でウミを見ると、片側部分だけブレザーがびっしょり濡れていた。
ソラは考えるまでもなくすぐ理由がわかった。
土砂降りの雨の中、ソラがさほど濡れずに済んだのはソラが雨に濡れないようウミは配慮をして傘の中心にソラを入れたからだ。
青い髪も半分だけぐっしょりして髪色が黒に近くなっている。
「ウミィ!びっしょり濡れてるじゃん。シュゴー、これじゃあ、相合傘をした意味がないよぉ。」
「だって俺は男だぜ。ソラは女だろ?これくらいは当然だって。」
「やだ!そんなの関係ない。シュゴー、2人で身体の半分を濡らせばいいんだもん。」
ソラは何も言わずにびしょ濡れのウミを置いて突然自販機に向かった。
「おい?どこへいくんだ?」
「シュゴー、温かい缶コーヒーがいい?それともホットシェイクプリンにする?」
クマがデザインされた、がま口財布を取り出して500円玉を自販機に入れた。
「俺は大丈夫だって。あんまり金をつかうなよ。」
ウミはとても気まずそうに言った。
「いいもん。私のお金だもん。そんな事よりウミが風邪を引いたら大変だもん。」
ガチャン
有無を言わさずソラはホットシェイクプリンを選んだ。
「シュゴー、コーヒーにしようかと思ったけど、カフェインが入っているでしょ。夜、眠れなくなっちゃうと思ってこっちにしたの。」
ソラは両手でウミに手渡そうとして、すぐ引っ込めた。
「待って!よく振っておかなきゃ固まったままだわ。シュゴー。」
片目を瞑りながら威勢の良い手つきで上下に振った。
「お待たせ!」
「ありがとう。」
ウミはホットシェイクプリンの缶を手にしようとしたが、またしてもスカされてしまった。
「あっ!缶のプルタブを開けるのを忘れてた!」
「そのくらい自分でできるって。」
「いいじゃん。やってあげたいの!はいどうぞ飲んでね。」
笑顔のソラは首を少し横に傾けて両手で渡した。
「俺の扱いが子どもみたいだな。」
「子どもじゃないぃぃ!ウミは私の彼氏になって欲しいぃぃ!」
ソラは幼い子のように、顔を横に振ってイヤイヤをした。
2人は穴から外へ出た。
「ソラ、もう泣くなよ。でもありがとうな。」
ギターが泣いている気がしてソラは振り返った。
大きく空いたドアの穴からちょうどエレキギターが見える。
ウミはスタジオの外に出てから一度も振り返らなかったが、私より辛いはずなんだとソラは思った。
俯きながら数メートル先を歩くウミを小走りで追いかけて、横に並んで歩く。
後ろ髪を引かれる思いでソラはウミを連れて自宅へ向かった。
「シュゴー、雨、止まないね。」
ウミの制服のズボンは膝まで濡れている。
「あぁ。」
「お願いがあるの。」
ウミはソラの顔を見た。
「腕を組んでもいい?」
「えっ?」
対向車線を通る車のヘッドライトが相合傘をする2人を照らす。
「シュゴー、何も言わないって事は良いって事だよね?」
「そういや、おまえが作った弁当はまだある?はらぺこなんだよな。」
話をすり替えたのはわかっていたが、質問に答えた。
「お昼はね、ウミが好きなハンバーグがメインのお弁当だったんだよ。」
「まだあるんだろ?後で食いたいな…。」
「カバンの中にあるけど、もう傷んでるかもしれないから食べるのはやめた方いいわ。」
ウミは傘をさすソラの手を少しの間だけ優しく添えるように重ねた。
「おまえの傘、男の俺が持つよ。」
傘に当たる雨粒はいっそう激しさを増していく。
2人は最寄駅に到着した。
駅の改札は帰宅ラッシュで人がごった返している。
「この時間は混んでんだなぁ。まぁしゃーねぇか。」
駅の照明の下でウミを見ると、片側部分だけブレザーがびっしょり濡れていた。
ソラは考えるまでもなくすぐ理由がわかった。
土砂降りの雨の中、ソラがさほど濡れずに済んだのはソラが雨に濡れないようウミは配慮をして傘の中心にソラを入れたからだ。
青い髪も半分だけぐっしょりして髪色が黒に近くなっている。
「ウミィ!びっしょり濡れてるじゃん。シュゴー、これじゃあ、相合傘をした意味がないよぉ。」
「だって俺は男だぜ。ソラは女だろ?これくらいは当然だって。」
「やだ!そんなの関係ない。シュゴー、2人で身体の半分を濡らせばいいんだもん。」
ソラは何も言わずにびしょ濡れのウミを置いて突然自販機に向かった。
「おい?どこへいくんだ?」
「シュゴー、温かい缶コーヒーがいい?それともホットシェイクプリンにする?」
クマがデザインされた、がま口財布を取り出して500円玉を自販機に入れた。
「俺は大丈夫だって。あんまり金をつかうなよ。」
ウミはとても気まずそうに言った。
「いいもん。私のお金だもん。そんな事よりウミが風邪を引いたら大変だもん。」
ガチャン
有無を言わさずソラはホットシェイクプリンを選んだ。
「シュゴー、コーヒーにしようかと思ったけど、カフェインが入っているでしょ。夜、眠れなくなっちゃうと思ってこっちにしたの。」
ソラは両手でウミに手渡そうとして、すぐ引っ込めた。
「待って!よく振っておかなきゃ固まったままだわ。シュゴー。」
片目を瞑りながら威勢の良い手つきで上下に振った。
「お待たせ!」
「ありがとう。」
ウミはホットシェイクプリンの缶を手にしようとしたが、またしてもスカされてしまった。
「あっ!缶のプルタブを開けるのを忘れてた!」
「そのくらい自分でできるって。」
「いいじゃん。やってあげたいの!はいどうぞ飲んでね。」
笑顔のソラは首を少し横に傾けて両手で渡した。
「俺の扱いが子どもみたいだな。」
「子どもじゃないぃぃ!ウミは私の彼氏になって欲しいぃぃ!」
ソラは幼い子のように、顔を横に振ってイヤイヤをした。
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