私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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ソラが女子高校生だった頃。ウチで生活しよっ!ね?

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「シュゴー、泥棒でも入ったの?」

「泥棒だってここまでしないぜ…。」

盗まれた物はないが部屋中を宗成に徹底的に破壊された部屋は、まるで街を壊滅させたトルネードによる爪痕のようだ。

「最悪だ…。」

ソラはウミが指をさす方向に顔を向けた。

「え、なあに?」

近づくと、公衆トイレから湧き立つようなアンモニア臭がソラの鼻腔を刺激した。

「うぅ!オシッコの匂いがするっ。」

鼻を押さえて後退りした。

「誰かが侵入したんだ。それでよぉ、クソムカつく事によぉ、俺の大切な…ギターに小便ぶっかけた上にメッチャクチャになるまでぶっ壊しやがった…。」

「酷い…。誰がそんな酷い事を…。」

ソラは湧き上がる涙を抑えきれなかった。

「悔しいぜ…。こんな事をしやがった犯人をみっけてぶっ殺してやりてぇ。」

「うぅぅ。あんまりだよね…シュゴー、あんなに大切にしていたウミのギターを、こんなにするなんて、シュゴー、許せない…。
ウミィ?学校や警察に相談しようよ?シュゴー。」

ウミは頭を横に振った。

「廃墟とはいっても、勝手に改修して音楽スタジオにしていたんだ。
電気だって無断で拝借してたんだしな…。
ギターを破壊されたのは、死ぬほどむかつくけど、スクワットをしていた俺は、おまわりや学校には相談できないんだよ。
話したら逆に捕まってしまうぜ…。」

「スクワット?」

「あぁ、不法占拠って意味さ。
俺にゃ野良猫同然で家がない。それだから、ここに住み着いて学校に行ってたんだよ。」

音楽スタジオが破壊された事と同等かそれ以上のショックをソラは受けた。

「ご両親は?」

「…そうだよな。みんなそれを聞くんだ。心配して聞いてくれているんだってのは、わかっているよ。」

「シュゴー、仲が悪いの…?」

「いや違う、親がいないんだ。身内は婆さんしかいない。」

ソラは言葉が見つからなくて黙ったまま立ち尽くしていた。
身体の震えを止めようとしたが、止める事はできなかった。

「まさか、ここに住んでいるなんて思わなかったろ?」

「うん…。でもウミはウミだから。どんな生活していても私はウミの事が…」

ソラが言いかけたところでウミが意地を張って言った。

「もう一度、綺麗にこの部屋を改修する。必要な建築材料はなんとか用意できるんだ。」

ウミは震えている声をソラにバレないようにコントロールしているつもりだったが、ソラには泣くのを堪えているのが痛いほど伝わっていた。

「でも、こんなにボロボロになってしまったお部屋じゃ、いくらウミでも修理するのに時間がかかるよ。
それに、せっかく建て直してもまた悪い人が来るかもしれないわ。」

割れた窓から強風とともに雨が入ってきた。




























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