私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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ソラが女子高校生だった頃。宗成の逆襲

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「ふぅ。昨日より進歩したかな?いやいや、こんなんで納得しているようじゃ、まだクソだ。
俺の欲しい理想の音色は掴めていねぇんだから。」

ブツブツ独り事を言いながら、額から流れる汗を袖で拭いている。


「ねぇ?ウミィ、質問していい?」

隅っこで、ちょこんと丸椅子に座っているソラが興味津々な顔で聞いた。

「あぁ?」

「シュゴー、なんでウミってさ、そこまでしてギターを弾くの?」

ウミはパントマイムをしているかのように動きがピタッと止まった。

「シュゴー、だって気になるじゃん!毎日、汗かいてさ、練習してるんだもん。なんでそんなになってまでギターを弾くのか早く答えてよ。」

ウミにおかしい事を聞いているのか不安になったソラは、誤魔化す為に怒ってみせた。

「ギターが大好きなんだ。」

ウミの目はまっすぐソラを見つめた。

「それだけ?シュ…ゴ。」

「あぁ。」

汗で汚れたギターを優しくクロスで拭いている。

「ウミってさぁ、自分の顔は制服の袖とか手で拭うのに、ギターの扱いの方がずっと丁寧だね。」

「自分のツラよりギターのほうが大切だからよ。コイツギターを喜ばせてやらねぇとなかなか良い音が鳴らねえんだ。」

「自分よりギターの方が大切なんだ…。」

「おまえだって、自分より大切なものってあるんじゃねぇの?」

アンプに置いてある飲みかけのコーラをウミは口にしたあと言った。

「私は…。」

自分より大切なもの?

"自分より大切なものなんてない"って言うのが、情けない、悔しい思いがどっと押し寄せてきて何か見つけてやろうと、心の中にある玩具箱や海底や宇宙空間やら、隅々まで探したが何も見つからなかった。

「将来的には、ていうか、今日からでもいいから最強のメンバーを集めてバンドを組みたいんだ。
残念ながらメンバーに恵まれなくてよ、解散ばっかなんだぜ。」

ソラの隣に丸椅子を置いてウミも座った。

「バンドマン?確かバンドをやっている人をバンドマンて言うよね?ウミもバンドマンになりたい?」

手を横に振ってウミは言った。

「言葉遊びになっちまうかもしれねえが、俺はバンドマンて言葉はあんま好きじゃないんだよ。
俺はミュージシャンだな、そこを目指している。」

手首のストレッチをしながらソラに話した。

「そっか。わかる人には言葉のニュアンスが気になるものなのね。
ウミなら目指しているミュージシャンになれる気がする!
だってギターは上手いし、オリジナルの曲を聴かせてもらった時は感動しちゃったんだよ、私は。」

「アハハハ、ありがとうな。ソラ!ところでよぉ。俺もおまえに聞きたい事があるんだ。」

「なあに?」

「おまえ、けっこう俺の事を知っているよな?」





















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