私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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ソラが女子高校生だった頃。砂城院かつらの兄・宗成

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宗成は大きな門をくぐり、美しい日本庭園を通って錦鯉が優雅に泳ぐ池を横目にまっすぐ歩いた。

「庭が広過ぎるのも問題だな。なぜ父さんは敷地内を移動する手段としてカートやバイクを使う事を反対するのだろう?」

宗成はようやく玄関に到着した。
玄関の至る所に防犯カメラが設置されている。

若い家政婦が玄関を開いて宗成を出迎えた。

「お帰りなさいませ。宗成さん。」

「ただいま。」

歩き疲れた宗成は無表情でカバンを手渡した。

カバンを手に持った家政婦は、かつらから事付けある事を伝えた。

「かつらが俺に?なんの用件かな?」

「私もそこまでは把握しておりません。」

「そうか。わかった。」

玄関まで迎えに来ていたドーベルマン、シェパード、ボルゾイの3頭が飼い主である宗成の周りを嬉しそうに走り回っている。

「よしよし。おまえら、また後でな。」

3頭の頭を撫でて近くに置いてある犬用のスナックを食べさせるのが帰宅後のルーティンになっている。

愛犬達が食べている間に宗成はかつらの部屋へ向かった。

コンコン

「かつら。俺に用があるんだろ?」

ドアの向こうから、かつらが部屋に入るよう呼んでいる。

「入るぞ。」

ドアを開けると、かつらは全裸だった。
かつらは自宅で過ごす時はいつも裸であり、家族や家政婦の前でもそれは変わらなかった。
兄の宗成にとっても、かつらが肌を晒している事に違和感はない。

「そこに座って。」

かつらが指定した背もたれのない丸椅子に宗成は腰をかけた。

「けっ、指図をするとは生意気な妹だな。ところで俺を呼んだ理由はなんだ?」

「ズバリ同じクラスの大嵐ソラの事よ。
放課後、兄さんは私達のクラスへやってきて邪魔をした理由を聞きたいの。」

かつらは、ソラを追い詰めている時と同じくらい憎悪が表情に現れている。

「兄としておまえが、大嵐さんと揉めているのではないかと心配になったんだよ。」

「そんなの嘘よ!
わざわざやってきたのには、ほかに理由があるはずだわ!
性に自由奔放でナルシストの兄さんの事だもの。
何か狙いがあったに違いない!
きっと1年の女子の中で、お目当ての娘がいたのではないかしら?
でなければ、あんな臭い芝居はしないはずよ。」

「臭い芝居だなんて心外だな。俺は大嵐さんのように特殊な見た目をしている娘を、いじめてはいけないって伝えたかったのさ。
おまえは大嵐さんと同じクラスだ。仲良くしなければいけないぞ。」

「…狙いがわかったわ。兄さんは大嵐ソラの事が好きなんでしょ?
確かにスタイルは抜群よね。でも醜い顔を隠す為にあんな奇抜な格好をしているのよ。
さすがの兄さんも、大嵐のお胸の大きさに目を奪われてまんまと騙されたわね!」

かつらはソラの件で邪魔をされた恨みがある為、興奮している。

「落ちつけよ、かつら。
バレては仕方がない、正直に話すとしよう。
大嵐ソラは学年に1人はいる可愛い子ってレベルではない。
恐らく県内で、いや日本一かも知れない。
顔を隠したところで俺にはすべてお見通しさ。
匂いでわかるのだよ。
最良のメスを抱きたいオスとしての俺の本能が今までにないレベルで反応したんだ。
俺は彼女を手に入れたい。
今まで会った女達の中で1番の大物だ。」

「大嵐が日本一可愛いですって?笑わせないでよ。」

かつらは蔑んだ目で宗成を見た。

「兄さんもついに頭がおかしくなったようね。
大嵐は顔にコンプレックスを持っていて醜い顔なのよ。だからいつも顔を隠しているんじゃない。」

「おまえは何もわかっちゃいないな。」

「ええ、わからないわ。醜い大嵐の事なんか、美しいワタクシにはわかるはずがないわ。
とにかく兄さんはワタクシの邪魔はしないで。大嵐はワタクシのオモチャなんだから。」

「邪魔をするなだと?それは俺のセリフだ。
たとえ妹だろうが俺の邪魔をすれば許しはしない。」

丸椅子から立ち上がり、かつらの部屋のドアを開けた。

「今から俺は大嵐ソラをリサーチする。」

「リサーチ?」

「そうだ。時間が惜しい。これで話は終わりにする。じゃあな、大嵐ソラに嫉妬する貧乳娘。」

かつらは、野生動物のような唸り声をあげて、近くにあった花瓶を投げつけた。

怒声と花瓶が割れた音を聞きつけた家政婦が宗成とすれ違い、かつらの部屋へ急いで入っていった。



その夜、かつらは宗成に馬鹿にされた自分の胸について考えていると寝つけずにいた。

天蓋付きベッドから起き上がり電気をつけて部屋を明るくする。

壁にかけてある海外物の高級ミラーに顔を映した。

「大嵐ソラはなぜあんなにお胸があるのかしら…?それに比べてワタクシは…。」

かつらは乳房に手を当てる。
ほとんど膨らみのない乳房は簡単に手のひらに収まってしまった。

「まさか、このワタクシが大嵐に嫉妬をしているの?」




















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