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ソラが女子高校生だった頃。砂城院かつらの兄・宗成

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「フン。案の定、揉めているな。かつらが顔を隠している大嵐ソラを放っておくわけがない。」

砂城院かつらの兄、宗成が廊下を歩いて1年4組へ向かっていた。

周りにいた女子生徒達は高身長で端正な顔立ちの宗成を見て、ざわつき始めた。

「すごくイケメン!」
「下級生で好きな子いるのかな?だから来たんじゃない?」
「砂城院かつらさんのお兄さんらしいよ!」
「彼女いるのかな?」

イケメンがいるという情報がすぐに広まり、あとから駆けつけてきた女子生徒達も宗成の元に大勢集まってきて廊下は人でごった返している。

「1年生のみんな、お騒がせしてごめんよ。4組にいる妹に用があってね。道を開けてくれないかい?」

「えっ?なに、あの人集りは?」

隙をついて走って逃げているソラは、宗成を見つけた。

「あれは、宗成さん?」

宗成目当てで廊下に群れる女子生徒がバリケードのように道を塞いだ。

「これじゃあ捕まってしまうよぉ!」

ソラは後ろを振り返って見た。

かつらと取り巻き、それからマツダイラは無言で廊下を練り歩いてくる。

ソラは逃げ場を失って頭を抱えた。

「兄さんじゃない。突然なんの用かしら?」

かつらは目の前にいるターゲットのソラには目もくれず、兄の宗成だけを見ている。

宗成を見に現れた女子生徒達は宗成に話しかける妹のかつらを見た。

「僕がここにいたって特に問題ないだろう?それよりかつら。
おまえはなぜ、大嵐さんに因縁を付けるんだい?」

女子生徒達は視線をかつらから、一斉に宗成を見た。

ソラは兄妹が対立している状況を理解できずにいる。

「因縁?聞き捨てならないわね。ワタクシは大嵐さんが、奇妙ないでたちで登校して来て授業を受けているから注意をしているだけよ。
その注意を快く思わない大嵐さんに暴力を振るわれて鼻から血を流した事もあったわ。」

血を流した話を聞いて女子生徒達は再び、かつらを見た。

「おまえが過剰に追い詰めたからではないのか?彼女がそんな事をするなんて僕には想像がつかない。みんなもそう思うよな?」

女子生徒達はソラの味方をしたが、それは単に憧れの貴公子である宗成の発言を盲目的に受け入れているだけに過ぎない。

「大嵐さんがかわいそう!」
「いじめ撲滅!」
「顔を隠したっていいじゃん!多様性を認めてよ!」

宗成派の女子生徒達は次々に声を上げた。

「兄さんたら、マヌケな女達を味方につけて汚いわ…。」

劣勢に立ったかつらは歯軋はぎしりをして、悔しがっている。

「心優しいみんなに頼み事がある。
是非聞いて欲しい。
ここにいる大嵐ソラさんは事情があって素顔を隠しているんだ。」

女子生徒達は宗成が指差したソラに視線をうつした。

ソラはたくさんの女子生徒の視線が自分に向けられて動揺している。

「僕らの世界はどうしてこうも残酷なのだろう…。
人の容姿や感性が異なるだけで、周囲の人々から冷たくあしらわれ追い詰められて心を壊されていく。
実はこの僕も大嵐さんと同様に仮面をつけて生きている…。
みんなから嫌われないように、みんなから異質な存在だと思われないようにね。
でもこれは本当の僕の姿じゃない!僕の魂は地中深くまで潜って太陽の光さえ当たらない!」

宗成は社会には救済がないと嘆く、行き場を失ったガラスの貴公子然とした態度だ。

「大嵐さんと僕らは本質的にはなんら変わらないんだ。
僕らは決して強くない。ペルソナを被って生きている。
ならば、僕らは同じ悲しみを共有する仲間ではないかな?
見た目が自分とは異なるから排除するのではなく、互いの違いは認め合い、手を取り合って助け合うべきではあるまいか!」

宗成は両膝を落として泣き始めた。
女子生徒達は、その宗成へ惜しみない拍手を送っている。


砂城院かつらは「なんて薄っぺらい演説なのでしょう。」と言い、取り巻きを引き連れてその場から立ち去っていった。


宗成の話を聞いたソラはというと、助けてくれた事に感謝こそしているが女子生徒の前で酔いしれている宗成を、どうしても信用できずにいた。




















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