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ソラが女子高校生だった頃。砂城院かつらの兄・宗成
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1年4組の教室のドアを開ける。
クラスメイトの凍りつく視線を浴びながらソラは自分の席に座った。
昨日のような落書きはなく、机の引き出しや教室内にあるロッカーにもイタズラをした形跡は見当たらなかった。
ソラは砂城院を見た。
相変わらず取り巻き達と何やら話している。
砂城院は旧校舎の音楽室に私が取り巻きやマツダイラに連れ込まれた事を知っているのかな?
それも兄の宗成が止めてくれた事も。
兄妹だから、もしかしたら昨日の出来事を話し合っているかもしれない。ソラは思った。
廊下側に座っている太ったマツダイラに視線をやると、誰かと話すこともなく黙ってスマホを弄っている。
今のところ何事もないけど、これって嵐の前の静けさなのかな?
このまま穏やかに過ごせるはずがないもんね。
先々を考えてソラは一気に気が滅入ってしまった。
朝礼が終わると1限は英語で始まる。
英語教師の指示でペアワークをする事になったが、隣の神園は今日も休んでいる為、相手がおらずペアワークができない。
教師はソラの近くで座っている砂城院の取り巻き達に声をかけ、3人で学習をするよう指示をだしたが輪に入れてもらえずソラは孤立していた。
ソラは疎外された事よりも、隣の席の神園が一度も学校へ来ない事を不思議がっている。
隣の男子はなんで学校に来ないのかな?
重い病気を患っていたりして?
交通事故で長期入院しているとか?
もしかしたら、すごく繊細な男の子で集団生活に馴染めないのかも?
あらゆる理由を想像していたら、いつの間にか英語の授業は終わっていた。
6限の数Iもすんなり終わり、帰りの支度をする。
ここまでは何事もなかったが、最後の関門がある。
ソラにとってもっとも恐怖を感じる時間…それはなんといっても下校の時間だ。
砂城院と取り巻きは、また私を攻撃をしてくるはず…。このままあっさり帰れるはずがないわ。ソラは思った。
今回も有効な策はなかったが、昨日のように急いで逃げようとしないで敢えて堂々とした態度で廊下へ向かった。
「待ちなさい大嵐さん。」
砂城院が呼び止めた。
ほらきた。
このまま帰らせてはくれない。ソラは思った。
「マツダイラくぅぅぅん。マツダイラ君もこちらへ来てぇ~。」
砂城院が猫撫で声で呼ぶと教室の隅で座っていたマツダイラが、ダッーと走って砂城院の所までやってきた。
「昨日はワタクシの兄に止められて、旧校舎の音楽室に入れなかったとの事…。ワタクシでは汚い旧校舎に忍び込むなんて考えもつかなかったプランだけれど、なかなか愉快だから、昨日の続きをしてもらいたくて。
そこで、互いに恋人がいない大嵐さんとマツダイラ君の為に、ワタクシ恋のキューピットになってあげたいの。」
「キューピット?それはどういう事?顔を隠した大嵐より、俺は砂城院さんの事が…。」
砂城院に好意を寄せているマツダイラは困った口調で話した。
「2人が裸になって肌と肌を合わせてとろけちゃうような場面に立ち会ってあげる。ほら、貴女達!例の音楽室へ連れて行きなさい!」
マツダイラを無視した砂城院は取り巻きに告げた。
(セラ?お願い助けて!)
(姉貴、姉貴!?)
(セラ!)
(助けを呼んで、すぐにその場を離れて!)
セラとテレパシーらしきやり取りをするのは今日で3日目。
ソラはさほど驚く事はなく、すぐ助言を実行した。
「誰か助けてぇぇぇぇ!」
ソラは力の限り叫んだ。
廊下を歩く別のクラスの生徒達が4組に集まってきている。
砂城院達は狼狽した。
「さすがにワタクシ達もこれでは分が悪いわ。先生方に見つかれば色々と面倒よ。」
この隙にソラは走って教室を出た。
クラスメイトの凍りつく視線を浴びながらソラは自分の席に座った。
昨日のような落書きはなく、机の引き出しや教室内にあるロッカーにもイタズラをした形跡は見当たらなかった。
ソラは砂城院を見た。
相変わらず取り巻き達と何やら話している。
砂城院は旧校舎の音楽室に私が取り巻きやマツダイラに連れ込まれた事を知っているのかな?
それも兄の宗成が止めてくれた事も。
兄妹だから、もしかしたら昨日の出来事を話し合っているかもしれない。ソラは思った。
廊下側に座っている太ったマツダイラに視線をやると、誰かと話すこともなく黙ってスマホを弄っている。
今のところ何事もないけど、これって嵐の前の静けさなのかな?
このまま穏やかに過ごせるはずがないもんね。
先々を考えてソラは一気に気が滅入ってしまった。
朝礼が終わると1限は英語で始まる。
英語教師の指示でペアワークをする事になったが、隣の神園は今日も休んでいる為、相手がおらずペアワークができない。
教師はソラの近くで座っている砂城院の取り巻き達に声をかけ、3人で学習をするよう指示をだしたが輪に入れてもらえずソラは孤立していた。
ソラは疎外された事よりも、隣の席の神園が一度も学校へ来ない事を不思議がっている。
隣の男子はなんで学校に来ないのかな?
重い病気を患っていたりして?
交通事故で長期入院しているとか?
もしかしたら、すごく繊細な男の子で集団生活に馴染めないのかも?
あらゆる理由を想像していたら、いつの間にか英語の授業は終わっていた。
6限の数Iもすんなり終わり、帰りの支度をする。
ここまでは何事もなかったが、最後の関門がある。
ソラにとってもっとも恐怖を感じる時間…それはなんといっても下校の時間だ。
砂城院と取り巻きは、また私を攻撃をしてくるはず…。このままあっさり帰れるはずがないわ。ソラは思った。
今回も有効な策はなかったが、昨日のように急いで逃げようとしないで敢えて堂々とした態度で廊下へ向かった。
「待ちなさい大嵐さん。」
砂城院が呼び止めた。
ほらきた。
このまま帰らせてはくれない。ソラは思った。
「マツダイラくぅぅぅん。マツダイラ君もこちらへ来てぇ~。」
砂城院が猫撫で声で呼ぶと教室の隅で座っていたマツダイラが、ダッーと走って砂城院の所までやってきた。
「昨日はワタクシの兄に止められて、旧校舎の音楽室に入れなかったとの事…。ワタクシでは汚い旧校舎に忍び込むなんて考えもつかなかったプランだけれど、なかなか愉快だから、昨日の続きをしてもらいたくて。
そこで、互いに恋人がいない大嵐さんとマツダイラ君の為に、ワタクシ恋のキューピットになってあげたいの。」
「キューピット?それはどういう事?顔を隠した大嵐より、俺は砂城院さんの事が…。」
砂城院に好意を寄せているマツダイラは困った口調で話した。
「2人が裸になって肌と肌を合わせてとろけちゃうような場面に立ち会ってあげる。ほら、貴女達!例の音楽室へ連れて行きなさい!」
マツダイラを無視した砂城院は取り巻きに告げた。
(セラ?お願い助けて!)
(姉貴、姉貴!?)
(セラ!)
(助けを呼んで、すぐにその場を離れて!)
セラとテレパシーらしきやり取りをするのは今日で3日目。
ソラはさほど驚く事はなく、すぐ助言を実行した。
「誰か助けてぇぇぇぇ!」
ソラは力の限り叫んだ。
廊下を歩く別のクラスの生徒達が4組に集まってきている。
砂城院達は狼狽した。
「さすがにワタクシ達もこれでは分が悪いわ。先生方に見つかれば色々と面倒よ。」
この隙にソラは走って教室を出た。
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