私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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ソラが女子高校生だった頃。クラスメイトはサイコパス?

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「シュゴ、シュゴ、シュゴ、シュゴ。」

遅刻してなるものかと全力で走ったせいで、ソラは激しく息をポンプから吐き出していた。

「私の席は…。」

通路付近にいるソラは手前から1列ずつ席を探していく。
みんなは、異様な格好をしたソラと目が合えば引き攣った表情で目を逸らしている。

生徒が40人いるうち、窓際の1番奥に2席分の空席があるのを見つけ出し、ソラはそこへ座った。

「ちょっと!」

突然、髪に赤色の大きなリボンを付けたポニーテールの女子がソラに強い口調で呼びつけた。

「貴女、どこに座っているの?そこは男子の席で貴女の席ではなくってよ。
貴女の席は貴女が座っている席のお隣、窓際側の席なのよ。」

「あ、あん。ごめんなさい…。」

入学早々、ソラは強い口調で注意されてたじろいでしまった。

「黒板に座席表が張り出されているのに、どこに目をつけてるのかしら…?
左側女子、右側が男子で座っていることすらも気づかないなんて。

それはそうとあの被り物はなに?外国のテロリストの真似でもしているの?
せっかく名門、姫君学院に入学したと思えば、おかしな人と同じクラスになってしまうなんて、ワタクシつくづく幸が薄いわね…。」

赤いリボンを付けたポニーテールの女子は、小さな声でブツブツ言いながらソラから見て通路を挟んだ隣の隣に座った。

嫌味を言われているであろう事はわかっていたが、声が小さかった為、ソラには何を言っているかまでは聞き取れなかった。




キーンコーンカーンコーン、キンコンカーコーン

チャイムが鳴り、時刻は8時30分になった。

ガラガラガラ

時間ピッタリ、担任教師が引き戸を開けて入ってきた。

「みなさん、おはようございます。」

縁のない眼鏡をかけた背筋の良い30代半ばくらいの女教師が、桜と同じピンク色のジャケットを着て教壇に上がった。

「おはようございます。」

教室にいる40人の生徒達が一斉に挨拶を返した。

「とても良いお返事ですね。新一年生の皆さん、私がこのクラスを受け持つ事になった…」

女教師は生徒達に背を向けて黒板に自分の名前を書き始めた。

「花見桜子です。
実は35年前の今日、私はこの世に生を受けました。
両親から聞いた話によると、私が生まれた日はとても美しい桜が咲いていて、桜のようにみんなを喜ばす人になって欲しいとの思いからこの名前を付けられました。
みなさんが、担任は"花見桜子先生"で良かったよ、と思ってもらえるような教師を目指してやって行きたいと思っています。」

生徒達からパチパチと拍手が鳴り響いた。
ソラも担任となった花見桜子がとても明るく優しそうな教師だったので、拍手を送った手に力が入り少し痛くなるくらいだった。

「センセ?」
赤いリボンを付けたポニーテールの女子生徒が花見桜子を呼ぶ。

「はい?えっと、まだ名前がわからなくてごめんね。その席順だと…。」

花見が座席表に指を差しながら調べていると、「砂城院さじょういんかつらですわ。」と呼ばれるまえに伝えた。

「まずはクラスを代表してこのワタクシが花見センセに、お誕生日のお祝いの言葉を贈らせて頂きます。
花見桜子センセ、お誕生日おめでとうございます。」

黒板から見て1番後ろの席に座る砂城院かつらにクラスメイトの視線が集まる。

「砂城院さん、すぐに名前がわからずごめんね。お誕生日の言葉もどうもありがとう。」

砂城院かつらは、優雅な表情で瞳を閉じ、いえいえと小さく顔を2回振った。

「ところで花見センセ、あれをご覧になってください。あの女の子です。
ちょっとワタクシ、名前がわからないのですが、外国のテロリストのように顔を隠した子と言えばすぐにお気づきになるのかしら?」

そういうと砂城院かつらは、隣の隣に座るソラを指差した。





















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