私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
上 下
40 / 275
それぞれの人生、それぞれの生き方

39

しおりを挟む
「写真スタジオで撮影助手か。
あの娘達はカメラマンを目指しているのかもな。
まだ若いから可能性はいくらでもある。
それに比べて俺ときたら…。」

オオニシはムナカタと揉めた帰りに酒屋で購入しておいた安物の焼酎を水割りにして飲んでいる。

家賃は滞納こそしていないものの、毎月の支払う金を捻出するのに苦労していた。

「俺は何やっても上手くいかねえ。今年に入ってから4回も仕事を辞めている。
なぜだかわからねぇが、いっつもムナカタみてぇなクソ野郎に目をつけられて揉めちまうんだ。
自分じゃあ真面目に働いているつもりなんだがな。」

やるせない気持ちが焼酎を飲む手を休ませない。

「もし…俺も家庭があったら、こんな生活をしていないよな。
気立てのいい女と結婚して、それからすぐガキが生まれて…家族を野球観戦や遊園地に連れていく親父になっていたはずだ。」

ウミの住むアパートにも負けず劣らず、部屋は狭くがらんとしている。
その上、"勝手気ままな独身男の部屋"なんて言葉は言い訳にもならないくらい部屋が散らかっていた。

「あの娘達、特にお姉さんの方は好みだな。
もっと俺が若けりゃデートの誘いでもしたかもしれねえ。
若かったとしてもあんな美女と俺じゃ釣り合わねえか…。」

深酒したオオニシはその場で眠りについた。



****

「どうだい?ウミ。おまえの書いた曲のアレンジ、すごくいいだろ?」

「正気かよ!?なんだこのアレンジは?」

ウミは曲のアレンジが自分の理想とする音楽からかけ離れている事に激しい憤りいきどおを感じていた。

「ニシさんの意向もあってこういうアレンジになったんだ。」

「これがロックだと胸を張って言えっか?どうなんだ?おまえら。」

ベーシストはウミに言う。

「ロックつっても、定義は人それぞれ。俺はニシさんのやり方に文句ねえよ。」

続けてリードギターはニヤけた顔でウミに言った。

「ウミ。もうニシさんに楯突くのは止めな。
俺達は"売れる音楽"を作りたいんだ。
つまらないプライドはいらないだろ。」

「おまえら目先の金に目が眩みやがったな。」

ウミは変わり果てたメンバーの発言に唇を噛み締めた。

「それが金だけじゃねえんだ。女もだ。
さっそくニシさんが連れてきた美人な女達と楽しんだよ。
俺の欲望はまだまだ尽きる事をしらねえなぁ。」

リードギターは腰を動かして卑猥なポーズをとった。

「つまらん奴に成り下がったな。」

リードギターはウミの発言に声を荒げた。

「おまえだって金、金、金、言ってたじゃねえかよ。
それにおまえと違ってたくさんの女と俺らは寝たいんだよ!
急になんだってんだ。人が変わったように俺らを悪者扱いしやがって!」

「おまえが金や女に執着するのは構いはしないが、中身のスッカラカンなバンドでのし上がれるわけねえよ。
それとな、もう一度言うが俺の曲にクソみたいなアレンジは加えるな。それは絶対に許さねえ。」

「そいつは無理だ。この曲は金になる。ニシさんがアルバムに入れずシングルで売り出す計画だしな。」

「なんだそりゃ?俺はそんな話をひとつも聞いてねえぞ。ニシがそんな事を言ってんのか?」

ウミはショックだった。
バンドの中心メンバーであったはずが、自身が作った曲にも関わらず勝手なアレンジを加えられ、更には曲をシングルで売りだそうとしているプランを全く聞かされていなかったからだ。

リードギターとベーシストは目を合わせて何か合図を送り合っていた。

「もうよ、こういう不毛な喧嘩は俺らしたくないんだわ。これからの活動の妨げになるからよ。」

「ウミ、一度ニシさんと話し合ってみろよ。忙しい人だからなかなか会えないかもしれないが、おまえが相手なら時間を作ってくれるよ。」

「話し合う?てめえに言われなくてもニシに接触するつもりだ。」

ウミは2人を睨みスタジオを出た。

ニシの思惑を探り出す為、連絡を入れようとした矢先にニシから着信が入った。























































 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...