私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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若妻ソラの決心

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「姉貴。しっかりしなよ。タクシーの中でも、ずっとボーとしてさ。
話しかけても、心ここに在らずって感じでなかなか気付かないじゃん。」

シャワーを浴びて浴室から出てきたセラが着替えながら話した。

「えっ?あぁごめんね。ちょっと考え事をしちゃってただけ。」

ミネラルウォーターを飲みながらソラは答えた。


「お義兄さんの事なんだろうね。きっと。」

ソラはセラのアイコンタクトを逸らし筋トレで使っているセラのダンベルに目線を合わせた。

「これからの事、色々考えなきゃいけないね。
ところでさ、あたしは明日から仕事なんだ。
タイから帰国してから初めての仕事。」

「なんの仕事をするの?」

着替えが済んだセラは脱衣所とのあいだにある仕切カーテンを開けた。

「フリーで仕事をしているカメラマンの撮影助手だよ。
主にモデルの撮影や企業のプロモーション撮影をしたり、七五三やマタニティフォトもやっているみたい。」


「ええ?すごいじゃない!写真なんて随分オシャレね。」

感心しているソラに、少し間を置いてからセラは言った。

「姉貴は明日からどうする?」

セラの問いに表情を曇らせた。
「私か…。私はまだなんにも決めてない。」

下着姿のまま、キッチンに行き冷蔵庫を開けてコップにミネラルウォーターを注いで、セラは一気飲みした。

「姉貴、今の質問は気にしないでよ。たださ、もしずっと家にいるのが苦痛だったら一緒に働かない?
お義兄さんの事を一時的に忘れられるかなと思ってさ。」

「撮影助手の仕事?」

「そう。面接の時、応募しても人がなかなか集まらないって嘆いていたから、たぶん受かると思う。」

「でも私にできるかなぁ?けっこう緊張しちゃう性分だし。」

「大丈夫だって!姉貴ならできるよ!あっ、無理強いするつもりはないからね。あくまで暇ならなんかやってみたら?という提案なだけだから。
寧ろ、外で働くより部屋を片付けてくれるのを手伝ってもらった方が、あたし的にはありがたいし。」

まさかの提案にソラは判断に迷った。

今までソラは正社員はおろかアルバイトの経験もなく、高校を卒業したと同時にウミと結婚。
それからすぐに専業主婦になっていた。

「ねぇ、セラ?ちょっと聞いてもいい?」

「いいよ。撮影助手の事かな?」

「うん、そう。セラはなんで撮影助手の仕事に就こうと思ったの?」

「それはね。面白そうだったから!」

セラは履いている黒いTバックの位置が気になるらしく指で位置を直しながら笑って話した。

「本当にそれだけ?」
ソラはもっと具体的な展望があるのかと思っていたので、少し驚いている。

「強いていうなら、実はあたしが住むこのマンションの中に、明日から働くスタジオがあるんだ。
同じマンションだから朝、ギリギリまで寝ていられるし通勤時間もかからない。
それも理由の一つだね。」

「あたしがここ(撮影助手)を選んだ理由はこんなもんだよ。
姉貴は深く考え過ぎじゃない?
もっと肩の力を抜いてリラックスしようよ。
話は変わるけど、姉貴から借りためっちゃ可愛いクマさんがプリントされたパンティ、洗濯機に入れたから。」






















 
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