私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

文字の大きさ
上 下
29 / 275
若妻ソラの決心

28

しおりを挟む
「姉貴。しっかりしなよ。タクシーの中でも、ずっとボーとしてさ。
話しかけても、心ここに在らずって感じでなかなか気付かないじゃん。」

シャワーを浴びて浴室から出てきたセラが着替えながら話した。

「えっ?あぁごめんね。ちょっと考え事をしちゃってただけ。」

ミネラルウォーターを飲みながらソラは答えた。


「お義兄さんの事なんだろうね。きっと。」

ソラはセラのアイコンタクトを逸らし筋トレで使っているセラのダンベルに目線を合わせた。

「これからの事、色々考えなきゃいけないね。
ところでさ、あたしは明日から仕事なんだ。
タイから帰国してから初めての仕事。」

「なんの仕事をするの?」

着替えが済んだセラは脱衣所とのあいだにある仕切カーテンを開けた。

「フリーで仕事をしているカメラマンの撮影助手だよ。
主にモデルの撮影や企業のプロモーション撮影をしたり、七五三やマタニティフォトもやっているみたい。」


「ええ?すごいじゃない!写真なんて随分オシャレね。」

感心しているソラに、少し間を置いてからセラは言った。

「姉貴は明日からどうする?」

セラの問いに表情を曇らせた。
「私か…。私はまだなんにも決めてない。」

下着姿のまま、キッチンに行き冷蔵庫を開けてコップにミネラルウォーターを注いで、セラは一気飲みした。

「姉貴、今の質問は気にしないでよ。たださ、もしずっと家にいるのが苦痛だったら一緒に働かない?
お義兄さんの事を一時的に忘れられるかなと思ってさ。」

「撮影助手の仕事?」

「そう。面接の時、応募しても人がなかなか集まらないって嘆いていたから、たぶん受かると思う。」

「でも私にできるかなぁ?けっこう緊張しちゃう性分だし。」

「大丈夫だって!姉貴ならできるよ!あっ、無理強いするつもりはないからね。あくまで暇ならなんかやってみたら?という提案なだけだから。
寧ろ、外で働くより部屋を片付けてくれるのを手伝ってもらった方が、あたし的にはありがたいし。」

まさかの提案にソラは判断に迷った。

今までソラは正社員はおろかアルバイトの経験もなく、高校を卒業したと同時にウミと結婚。
それからすぐに専業主婦になっていた。

「ねぇ、セラ?ちょっと聞いてもいい?」

「いいよ。撮影助手の事かな?」

「うん、そう。セラはなんで撮影助手の仕事に就こうと思ったの?」

「それはね。面白そうだったから!」

セラは履いている黒いTバックの位置が気になるらしく指で位置を直しながら笑って話した。

「本当にそれだけ?」
ソラはもっと具体的な展望があるのかと思っていたので、少し驚いている。

「強いていうなら、実はあたしが住むこのマンションの中に、明日から働くスタジオがあるんだ。
同じマンションだから朝、ギリギリまで寝ていられるし通勤時間もかからない。
それも理由の一つだね。」

「あたしがここ(撮影助手)を選んだ理由はこんなもんだよ。
姉貴は深く考え過ぎじゃない?
もっと肩の力を抜いてリラックスしようよ。
話は変わるけど、姉貴から借りためっちゃ可愛いクマさんがプリントされたパンティ、洗濯機に入れたから。」






















 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...