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若妻ソラの決心
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「そんじゃ、俺行くから。戸締り忘れんなよ。」
背を向けたまま、そう言って出て行ってしまった。
ギィィ
パタン
「一本の連絡を入れるだけの事がそんなに難しいのかしら…。
新婚夫婦にこんな事があるなんておかしい…。」
ソラは絞りだすように声を出した。
「あたしは結婚どころか、彼氏さえいないからわからない事が多いけどさ。互いを思いやる事。
相手を信じる事が大事なのかもしれない。」
体育座りをしながらセラは言った。
「そうね。互いを思いやるって今の私達に当てはまる言葉だわ。
ウミは私の事、これっぽっちも考えてくれてないものぉ。」
エアコンからくる冷風が身体を冷やす。
ソラ達が家を空けていた時、ウミは冷房の温度を18℃に設定していた。
「人気が出れば忙しくなるのはわかってる。
でも、これではすれ違いばかりの生活で愛がないわ。
愛がなければ一緒にいる意味がないじゃない。
私、やっぱり家を出る。」
「家を出るって…どこへ行くの?」
「まだ何も決めていない…。ただねセラ?こうなってしまった以上申し訳ないけどさ、私の事、アンタの家に置いてくれないかなぁ?」
ソラは手のひらを合わせてお願いをしている。
「うん。あたしは問題ないよ。でもお義兄さんとの関係がさ…その、大丈夫なの?まさか別れたいとか、そういう気持ちでいる?」
「ううん。別れたい気持ちはないよ。セラの言う"別れたい"って離婚の事だよね?
それは絶対にない。」
姉は自らハッキリ否定したが妹はまだ困惑している。
「それなら家を出ずに、根気強く夫婦関係を修復したら?
今回一緒にいたから知っているけどタイミングの悪さや、誤解だってあったんだし。
家を出たら、もっとややこしくなってしまう気がするんだ。」
「でも私はこのままではダメだと思うの。一度、私はここを離れて、言葉以外で行動でウミに教えたい。
きっとこのアパートに残ったら、また喧嘩になるよ。
話し合いしたってウミは変わらない…。」
親指の爪を噛みながらソラは言った。
「それじゃ、離婚を前提とした別居ではないわけだね?」
「もちろんよぉ。だって私はウミの事、狂おしいほど愛しているんだから。
ずっっっとウミだけを見て、ウミの事を考えて生きてきたんだよ?
今も私はウミ以外の男の子なんてどうでもいいもん!
ウミとは離婚したくない。愛するだけでなく最愛の人を振り向かせたいからこそ、私は家を出る。」
この発言を聞いて、一般的な愛情とはズレてはいるが、ソラの愛は計り知れないほど深く、離婚を考えていないのを知りほっとした反面、もしもウミがソラを必要としておらず、家を出た事により関係が修復不能なまでに悪化してしまった場合を危惧している。
ましてや、夫のウミの現状をみれば大好きな音楽活動が軌道に乗っているのに、妻のソラに妨害されていると感じ、ウミはソラに愛想を尽かしてしまわないだろうか。
そう思うとセラはウミの心がソラから離れてしまい一方的に離婚を突きつけられてしまうのではと、とても心配になってしまった。
言いづらさはあったが、もしも衝動的な行動ならば冷静になって対処をしなければならない事を伝えるべきだと思い、心で考えたことをソラに丁寧に話した。
「セラの言いたい事は織り込み済みだよ。
そんな未来だってあるかもしれない。
でもね、このままではきっとまた喧嘩して同じ事を繰り返すだけ。
私が怖いのは夫婦でこそあるものの、行き違いばかりで、顔も合わせず心も離れていくこと。
そのうちそれが当たり前のようになり、ただの同居人に成り下がる。
私、絶対に嫌だわ!そんな結婚生活は!」
「…そっか、決心が固そうだな。姉貴。」
ソラは頷く。
「今こそ、私の愛がどれだけ尊いものだったかを思い知らせてやりたい。
わからないなら、わかるまでたくさん苦しめて泣かせてあげる。
ソラがいなくちゃ生きていけないと言わせなきゃ家を出るは意味がないわ。」
「そ、そう…。」
その日の夜、セラは物想いに耽り"愛"について辞書で調べた。
背を向けたまま、そう言って出て行ってしまった。
ギィィ
パタン
「一本の連絡を入れるだけの事がそんなに難しいのかしら…。
新婚夫婦にこんな事があるなんておかしい…。」
ソラは絞りだすように声を出した。
「あたしは結婚どころか、彼氏さえいないからわからない事が多いけどさ。互いを思いやる事。
相手を信じる事が大事なのかもしれない。」
体育座りをしながらセラは言った。
「そうね。互いを思いやるって今の私達に当てはまる言葉だわ。
ウミは私の事、これっぽっちも考えてくれてないものぉ。」
エアコンからくる冷風が身体を冷やす。
ソラ達が家を空けていた時、ウミは冷房の温度を18℃に設定していた。
「人気が出れば忙しくなるのはわかってる。
でも、これではすれ違いばかりの生活で愛がないわ。
愛がなければ一緒にいる意味がないじゃない。
私、やっぱり家を出る。」
「家を出るって…どこへ行くの?」
「まだ何も決めていない…。ただねセラ?こうなってしまった以上申し訳ないけどさ、私の事、アンタの家に置いてくれないかなぁ?」
ソラは手のひらを合わせてお願いをしている。
「うん。あたしは問題ないよ。でもお義兄さんとの関係がさ…その、大丈夫なの?まさか別れたいとか、そういう気持ちでいる?」
「ううん。別れたい気持ちはないよ。セラの言う"別れたい"って離婚の事だよね?
それは絶対にない。」
姉は自らハッキリ否定したが妹はまだ困惑している。
「それなら家を出ずに、根気強く夫婦関係を修復したら?
今回一緒にいたから知っているけどタイミングの悪さや、誤解だってあったんだし。
家を出たら、もっとややこしくなってしまう気がするんだ。」
「でも私はこのままではダメだと思うの。一度、私はここを離れて、言葉以外で行動でウミに教えたい。
きっとこのアパートに残ったら、また喧嘩になるよ。
話し合いしたってウミは変わらない…。」
親指の爪を噛みながらソラは言った。
「それじゃ、離婚を前提とした別居ではないわけだね?」
「もちろんよぉ。だって私はウミの事、狂おしいほど愛しているんだから。
ずっっっとウミだけを見て、ウミの事を考えて生きてきたんだよ?
今も私はウミ以外の男の子なんてどうでもいいもん!
ウミとは離婚したくない。愛するだけでなく最愛の人を振り向かせたいからこそ、私は家を出る。」
この発言を聞いて、一般的な愛情とはズレてはいるが、ソラの愛は計り知れないほど深く、離婚を考えていないのを知りほっとした反面、もしもウミがソラを必要としておらず、家を出た事により関係が修復不能なまでに悪化してしまった場合を危惧している。
ましてや、夫のウミの現状をみれば大好きな音楽活動が軌道に乗っているのに、妻のソラに妨害されていると感じ、ウミはソラに愛想を尽かしてしまわないだろうか。
そう思うとセラはウミの心がソラから離れてしまい一方的に離婚を突きつけられてしまうのではと、とても心配になってしまった。
言いづらさはあったが、もしも衝動的な行動ならば冷静になって対処をしなければならない事を伝えるべきだと思い、心で考えたことをソラに丁寧に話した。
「セラの言いたい事は織り込み済みだよ。
そんな未来だってあるかもしれない。
でもね、このままではきっとまた喧嘩して同じ事を繰り返すだけ。
私が怖いのは夫婦でこそあるものの、行き違いばかりで、顔も合わせず心も離れていくこと。
そのうちそれが当たり前のようになり、ただの同居人に成り下がる。
私、絶対に嫌だわ!そんな結婚生活は!」
「…そっか、決心が固そうだな。姉貴。」
ソラは頷く。
「今こそ、私の愛がどれだけ尊いものだったかを思い知らせてやりたい。
わからないなら、わかるまでたくさん苦しめて泣かせてあげる。
ソラがいなくちゃ生きていけないと言わせなきゃ家を出るは意味がないわ。」
「そ、そう…。」
その日の夜、セラは物想いに耽り"愛"について辞書で調べた。
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