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若夫婦に亀裂!?

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「んぐっ…おまえ殴りやがったな!」

「もうやめなよ!こんな事して誰が得すんのさ!」

セラは声を張り上げた。

「ウミとはもうこのまま一緒には暮らせない…。私、出ていくから。」

「待ちなって!ちょっとさ、2人でもっと話し合うべきだよ。」

仲裁に入ったセラはソラの目前に立って両肩を揺らした。
力で押されてグニャグニャと身体を揺らしている。
目は虚でほとんど声は届いていない。

「連絡ができないのはすまなかった。
だがよ、俺はバンドに集中したい。悪いが俺の身体が一つしかない以上、同時進行はできねえんだよ。
おまえとの約束は今後は守らねえ。」

ソラはセラの腕を払い何も言わずに玄関ドアを開けて表へ出て行ってしまった。

「姉貴、待ちなよ!」

と言ったそばから、カチャッと音が鳴り玄関ドアが開いた。

「ちょっと忘れ物をしただけだから。」

「姉貴!?」

ソラは部屋に行き、正方形のカラフルな箱からガスマスク用の特殊なポンプ、ゲリラのようなフェイスカバー、魔女のような大きな帽子、小顔のソラに不釣り合いな大きなサングラスをその場で素早く装着して、再び玄関を出ていった。

「お義兄さん、姉貴を止めなくていいの?
お義兄さんも知っての通り、姉貴はしないと表を歩けないんだよ。」

「大丈夫だよ。セラちゃん。
このクソ暑い中、顔面を覆って歩いたら身が持たないって。
すぐ音を上げて戻ってくる。」

ウミの言った事を無視してセラは姉の後を追った。

誰もいなくなった部屋でウミはキッチンへ行き水道の蛇口を捻って水を飲んだ。

「クソ不味いな。」

なまぬるくてカルキ臭い水道水には、心底辟易している。



ソラを探す為、アパートを飛び出したものの土地勘がなく、自分がどこを走っているかもわからなかった。

立ちどまりソラに電話をしたが繋がらない。
闇雲に走るよりネットで周辺を検索してソラが立ち寄りそうな場所をピックアップして、近所の公園、商店街、海沿い等を中心に街中を駆けまわった。

「姉貴、どこにいるんだろう?これだけ探して見つからないとなると、実家に戻ったのかな?
でも姉貴に限って実家に戻るなんてまねはしたくないはずだ。」


出て行った姉をなかなか見つけられないセラは公園のベンチに腰掛けて休んだ。
日陰にいたとて、夏の暑さは変わらない。

屋外にいてはギラギラ地上を照らす太陽から逃れられない。
ましてや、あんなをしているのでは、この暑さに耐えられないはずだ。

「はっ!」

セラは思った。

「もしかして屋内にいるのかも。」

セラはベンチから立ち上がると尻に食い込んだデニム生地のホットパンツを指で直して、また走り出した。

「もうここにもいなければお手上げだ。」

褐色の肌をしたショートヘアの金髪美女が炎天下でへばる人々とは反対に地面をしっかり踏みつけて、胸を揺らして走る姿はとても躍動感があり野生的なフェロモンを醸し出している。
通りすがる人々は男女問わず羨望の眼差しでセラを見ていた。

セラは駅前のショッピングモールの地上1階出入り口に入って行く。
動きが遅いエスカレーターは利用せず、滴り落ちる汗をまき散らしながらペースを落とす事なく階段を駆け上がった。

ガヤガヤうるさいフードコートやゲームコーナーとは違って、ソラがいると目星をつけたシックなインテリア売り場にやってきた。

































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