私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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若夫婦に亀裂!?

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朝の8時。
姉妹はちょうど朝食を食べ始めようとしているその時だった。

ガチャ。
ギィィ。

「ただい、ま…。え?」

ウミはソラの妹を見て驚いている。

ハッシュドポテトを口にしていたセラはリスのように頬を膨らませて挨拶をした。

「うぅん!うぅ!」

「セラ、大丈夫?」

姉のソラは背中を軽く叩き、コーヒーカップを渡してアイスコーヒーで流し込ませた。

「喉に詰まって息が出来なかったよ。あー苦しかった…。」
セラが胸をトントン叩いている横で、ソラはチラッとウミを見たが凍りつくような視線だ。

「ところで、隣りの娘は?」

怪訝な表情でウミはセラを見ている。

「おはよう。食べ物が喉に詰まって挨拶が遅れちゃった。
久しぶりだね。あたしはセラだよ。
昨日から泊まらせてもらってたの。」

「あぁ!セラちゃんか。何度か合った事があったね。
最後に合ったのは、確か大嵐家の実家でやったクリスマスパーティー以来かな?
それにしても随分肌が焼けたな。元気にしてたかい?」

「うん。元気!楽しくやってるよ。」

「そっか。それは良かった。ハハッ。」

「えへへ…。」

この2人は決して不仲ではないが、共通の話題などなく、たまに顔を合わす程度なので会話が成立しないのだ。

ソラは私になにか言う事はないのかという表情でウミを見ている。

「ソラ、悪かったよ。そんな目で見なくたっていいじゃねえか。
なんども電話をくれたのに通話ができなかったのは反省してる。
ただ俺らのバンドが、あるレーベルの社長の琴線に触れて契約する事になったんだ。
昨晩も日本のロック史を塗り替える最高で最強のバンドだと言ってくれてさ。
メンバーとも話し合った結果、レーベルに入ろうってなって社長に会いに行ったんだ。
それで、俺らと社長と関係者でメシ食いながら、音楽の話やこれからの活動について話し合ってたんだ。」

「ウミ、そんなとこに立ってないで座ったら?」

ウミは何も言わず、黙って座り込んだ。

セラはどうしようもない不穏な空気を感じて気まずそうにしている。

「ウミは私と約束したよね?それなのにことごとく約束を破っているよぉ?
それってどうなの?」

「悪かったよ…。」

ウミは手を伸ばしてテーブルにあるソラのアイスコーヒーを飲もうとしたがソラに制止された。

「いてぇ!何すんだよ!俺はギタリストだぜ。怪我でもしたらどうすんだよ。」

「勝手に飲まないでくれる?」

ソラはウミを睨み怒りを隠す事なく露わにしている。

「姉貴!やめなよ。」

「夫婦の事だからセラは黙っていて。ウミは私の事なんかなんとも思ってないのよ。だから平気で約束を破るの。
それに新婚早々、無断外泊なんて最低だと思わない?」

「ソラ、これから気をつけるからよ。朝っぱらからキレるのはやめてくれないか?」

「なに?そのネックレス?」

「あぁ?これか、これは社長から貰ったんだ。
俺が社長のネックレスを褒めたら、欲しいならウミにやるよって、いきなり首から外してさ俺にくれたんだよ。
20万の安物だとよ。
俺には大金だと言ったら、これからはこんなもんよりもっと高い物が手に入るだとさ。」

「私は別に今の生活でもいい!」

ソラはウミから顔を背けて言った。

「おいおい、ソラよぉ。こんなクソみたいな生活にいったい何の意味があるってんだ?
このオンボロアパートなんざ夢も希望もありゃしねえ。
ドアや床は軋むし、部屋は狭い。
いつまでもうだつの上がらない生活なんてごめんだぜ?
早く抜け出してぇのさ。
その為にはロックスターになって上にいかなきゃならねえんだよ。
ソラよ?金がなきゃエアコンだって買えなかったんだぜ?
暑さでバテたソラなら言ってる意味わかるよな?」

ソラは黙ってキッチンに立ち朝食の後片付けを始めた。

「姉貴…。」

「セラちゃんからも言ってくれないかな?
夫のやり方にもう少し寛容になるべきだとさ。」

セラは板挟みのような形になり困って下を向いた。

「とにかくよ。ソラ。
俺はビッグになるぜ!社長と話してから一晩で意識が変わった気がする。
社長は俺らに言ったよ…。
売れて人気になればなんでも手に入る。
札束、外車、高級なレストランでの食事、もって。でも俺は結婚…」


「美人な女達?今、美人な女達って言ったね!ロックスターになりたい理由は"美人な女達"と火遊びしたいだけだったわけ?」

「ちょっと姉貴?」

ガツン!

ソラの拳がウミの顎にヒットした。

あっという間の出来事だった。






































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