8 / 275
外出禁止令が発令!若奥様に忍び寄る魔の手?
7
しおりを挟む
「はぁ。大変な事になっちゃった。」
ソラは玄関ドアに背中をもたらせて、夫であるウミが帰宅するまで独りで過ごす時間を苦々しく感じていた。
「怖いよぉ。ウミィ、早く帰ってきてちょうだい。」
ソラはまたしてもベソをかきそうになったが、泣いてばかりいられないと思いグッと腹に力を入れて気持ちを切り替えた。
「これは神様が私に与えた試練。
乗り越えれば、もっと素敵な奥様になれるはず。
それにウミだって、私の事、あれほど心配してくれたのだし…あはっ!愛されてるって嬉しいな。」
そうと決まれば私も頑張って家庭を守らなきゃ。ソラはそう心に誓い努めて明るく振る舞う事にした。
手始めに何をすべきかと部屋を見渡した。
「う~ん。外出は禁止だからお買い物はできないでしょ。
それならば、まずはお掃除よね。
綺麗なお部屋でなきゃ幸せが逃げていってしまうもの。」
ソラは掃除機を丁寧にかけた後、キッチン、シューズボックス、洗面所、トイレの順で掃除をおこなった。
「我ながらお部屋が綺麗になったわ。
水回りもピッカピカで気分がいいよぉ。
ウミも絶対喜んでくれるはず。
特にキッチンの掃除は捗ったので百点満点!」
さっそくソラは綺麗になったキッチンに置いてあったグラスを手に取り、水道の蛇口の栓を捻って水をなみなみと注ぐと一気に飲み干した。
「ゴクゴク、ぷはぁ~。喉が渇いて死にそうだった。
でも、真夏のせいで水道から出るお水はぬるくて不味い…。
お水を飲むたびに氷を入れるのは手間だし。
冷えたペットボトルのお水や麦茶を買いたいけどお買い物は怖くてできない。」
キッチンに備え付けられている長方形の閉めきった曇りガラスの窓を見ながら少し寂しげに呟いた。
水を飲んだグラスをすぐに洗うと水切りカゴに戻した。
そこにはウミ専用の大きなグラスが置いてある。
ソラは自分が使っているグラスをウミのグラスにピッタリくっ付けるように置いた。
そうしないと心が離れてしまうような気がして落ちつかないのだ。
「私も朝が早かったから眠たくなっちゃった。
これだけ家事を頑張ったのだから、少しくらい休んでもいいよね?」
6畳の部屋でグデンと横になって3本のエレキギターを愛おしげに見つめた。
「ギターを弾いている時、いつも以上に格好良いよ。
これからも、ずっと、ずっとそばで見ていたい…。」
ソラは重くなった瞼を閉じた。
一方、妻のソラに愛されている夫のウミはーーーー
「お疲れっす!
あ~待ちに待った昼休憩だ。
朝はあっという間に時間が経つくせに、仕事中は時計の針がなかなか動きやしねぇ。
しっかし腹減ったなぁ。
ソラの作った弁当、ワクワクするぜ!」
ウミは手際良く弁当箱を開いた。
「ぐっ!そうだった…。
何を期待していたんだ、俺は。
オカズが梅干しだけの日の丸弁当じゃねえか。
俺ら金がなくて肉や魚は買ってねえもんな。」
ウミは酸っぱい梅干しを口にして、スッパイ現実を思い知らされていた。
夫の悲哀などはつゆ知らず、午前中、モーレツに家事に勤しんだソラは汗だくのままスヤスヤ眠りについていた。
ソラは玄関ドアに背中をもたらせて、夫であるウミが帰宅するまで独りで過ごす時間を苦々しく感じていた。
「怖いよぉ。ウミィ、早く帰ってきてちょうだい。」
ソラはまたしてもベソをかきそうになったが、泣いてばかりいられないと思いグッと腹に力を入れて気持ちを切り替えた。
「これは神様が私に与えた試練。
乗り越えれば、もっと素敵な奥様になれるはず。
それにウミだって、私の事、あれほど心配してくれたのだし…あはっ!愛されてるって嬉しいな。」
そうと決まれば私も頑張って家庭を守らなきゃ。ソラはそう心に誓い努めて明るく振る舞う事にした。
手始めに何をすべきかと部屋を見渡した。
「う~ん。外出は禁止だからお買い物はできないでしょ。
それならば、まずはお掃除よね。
綺麗なお部屋でなきゃ幸せが逃げていってしまうもの。」
ソラは掃除機を丁寧にかけた後、キッチン、シューズボックス、洗面所、トイレの順で掃除をおこなった。
「我ながらお部屋が綺麗になったわ。
水回りもピッカピカで気分がいいよぉ。
ウミも絶対喜んでくれるはず。
特にキッチンの掃除は捗ったので百点満点!」
さっそくソラは綺麗になったキッチンに置いてあったグラスを手に取り、水道の蛇口の栓を捻って水をなみなみと注ぐと一気に飲み干した。
「ゴクゴク、ぷはぁ~。喉が渇いて死にそうだった。
でも、真夏のせいで水道から出るお水はぬるくて不味い…。
お水を飲むたびに氷を入れるのは手間だし。
冷えたペットボトルのお水や麦茶を買いたいけどお買い物は怖くてできない。」
キッチンに備え付けられている長方形の閉めきった曇りガラスの窓を見ながら少し寂しげに呟いた。
水を飲んだグラスをすぐに洗うと水切りカゴに戻した。
そこにはウミ専用の大きなグラスが置いてある。
ソラは自分が使っているグラスをウミのグラスにピッタリくっ付けるように置いた。
そうしないと心が離れてしまうような気がして落ちつかないのだ。
「私も朝が早かったから眠たくなっちゃった。
これだけ家事を頑張ったのだから、少しくらい休んでもいいよね?」
6畳の部屋でグデンと横になって3本のエレキギターを愛おしげに見つめた。
「ギターを弾いている時、いつも以上に格好良いよ。
これからも、ずっと、ずっとそばで見ていたい…。」
ソラは重くなった瞼を閉じた。
一方、妻のソラに愛されている夫のウミはーーーー
「お疲れっす!
あ~待ちに待った昼休憩だ。
朝はあっという間に時間が経つくせに、仕事中は時計の針がなかなか動きやしねぇ。
しっかし腹減ったなぁ。
ソラの作った弁当、ワクワクするぜ!」
ウミは手際良く弁当箱を開いた。
「ぐっ!そうだった…。
何を期待していたんだ、俺は。
オカズが梅干しだけの日の丸弁当じゃねえか。
俺ら金がなくて肉や魚は買ってねえもんな。」
ウミは酸っぱい梅干しを口にして、スッパイ現実を思い知らされていた。
夫の悲哀などはつゆ知らず、午前中、モーレツに家事に勤しんだソラは汗だくのままスヤスヤ眠りについていた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
偽りの結婚生活 スピンオフ(短編集)
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
前作のヒロイン、朱莉を取り巻く彼らのその後の物語
<偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡>
これはヒロイン朱莉に関わった人々のその後を追った物語。朱莉に失恋した航、翔、京極、蓮・・彼らはその後どうなったのか―?
※ カクヨムにも掲載しています
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
捨てられた王妃は情熱王子に攫われて
きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。
貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?
猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。
疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り――
ざまあ系の物語です。
初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。
梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。
王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。
第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。
常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。
ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。
みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。
そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。
しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる