私、家出するけどちゃんと探してよね!

スーパー・ストロング・マカロン

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外出禁止令が発令!若奥様に忍び寄る魔の手?

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「時間がねぇ。すぐ始めるぞ!
俺が変態ヤローの役をやる。
おまえはおまえ自身。要するに被害者役だな。」
 

玄関ドアを閉めて外に出たウミは夏の暑さで、玉の汗をかきながらも愛する妻の身を案じて防犯対策を講じるつもりだ。

ピンポン

「はぁい、どちら様でしょうか?」

ソラは躊躇せずドアを半分以上開けた。
ウミは右手で両目を覆い、不用心なソラを怒鳴った。

「バッキャロー!いきなりドアを開けるバカがいるか。
まずは相手がどんな奴かドアスコープで確認するんだよ!」

「あん。そ、そうね。フフフ…。もう一回やらせて。」

「…もう一回な。」

ピンポン、ピンポン

ウミは築40年前から交換されていない古い呼び出しブザーを、しかめっつらで2度押した。

怒鳴られてしまったソラは先ほどとは違い、慎重な声で訪問者役のウミに身分を問いドアスコープを覗く。

「…はぁい、どちら様でしょうか?」

「奥さん…宅配です…。ドアを開けてください…。」

「はぁい!」

ギィィ。

何の疑いもなくソラはチャチな玄関ドアを開けると、そこにはツノこそ無いものの顔を真っ赤にした"赤鬼"が立っていた。

「おまえは死にてぇーのか!?
明らかに怪しい人物を演じているんだぜ?
それなのに、なぜ疑いもせずドアを開けんだよ!
なぁにが「はぁい!」だ?
このタコ助!」

「ウッウッウッ。だって"奥さん宅配です"って言うんだもの…。
暑いだろうから早く開けてあげなきゃ可哀想だと思ったんだもん。
ウッウッウ、こんなに怒られるなんて…
私はどうすればいいのぉ…アァン、アンアン!」

スクールゾーンを歩いている色とりどりのランドセルを背負った小学生の集団が、号泣しているソラに気づき目を点にしてこちらを見ている。

「やっやべっ。これじゃあホントに俺が悪りぃ奴みたいじゃんかよ。
とにかくだ、ピンポンが鳴っても絶対に出るな。
わかったな!ソラ!」

「はい…。わきゃりまちたよぉ…ヒック、ヒックゥ…。」

ベソをかき激しく動揺した為、呂律が回らない。

「度が過ぎたよ。悪かったな。
俺はお前の事が心配なのさ…。
凄惨な事件に巻き込まれてしまったら、悔やんでも悔やみきれないからな。」

「それ、ホントに?私の事、心配してるの?」

"涙の洪水"で目を真っ赤に腫らしたソラだったが瞳に少し精気が宿り、明るさを取り戻しつつある。

「ホントにホント。」

「ほんとにホントマン?」

「ぐっっ。」

(ほんとにホントマンだぁ?)

コイツ、舐めてんのかと怒りが再び込み上げてきたウミであったが、アパートの屋根の上に引っ付いて見える立体的で手を伸ばせば届くような入道雲に怒りを投げ捨てた。

怪訝な表情でソラはウミに顔を近づけて覗きこむ。

「心配しているのはさ、それって愛する妻だからだよね?
もう一回、ウミの口から聞きたい。ほんとにホントマンかなぁ?ウミィ?」

「あぁ…。」

「やっぱし、怒ってるんじゃないの?」

「怒ってねえよ。俺の気持ちはホントにホントマンだって。信じろよ。」

「良かったぁ…。はっ、そういえば時間が!?」

ソラは腕時計を見て時刻を告げた。

「ウギャー!まじぃぃな!もう遅刻だっっ!」

そう叫ぶとウミは駐車場に止めてある軽トラックに急いで乗り込んだ。

「気をつけてぇー!早く帰って来てね!」

ソラは身体全体を使って腕を大きく振った。

プップー!

クラクションを鳴らして答え、入り込んだ狭い道を見事なドライブテクニックで大通りへと軽トラックを走らせて行った。


パタン

ガチャ!

先ほど泣くほど言われて学習したソラはウミを見送った後、素早く部屋に入ってしっかり鍵をかけた。





「まだあどけなさがあって可愛いなぁ。怖がる顔もそそるなぁ。」

ミカミは大きくため息を吐いた。

「それにしても、あのギター小僧をみくびっていたかもしれん。
まさか俺が愛する女神を監視している事に気付いていたとは…。」

ウミが物音に気づき玄関ドアを開けた際、ミカミは自身が所有している車に息を殺して身を隠し、全てを見ていたのだった。

「俺はギター野郎から美しい女神を奪い、いずれは妻に娶るのさ。
しかし、あの娘についてまだまだ知らないことばかり。
趣味、癖、下着、その美しい身体の隅々までよ~く見て調べてやらねばなるまい。
この俺が旦那になるのだ。それくらい当然のことよ。
ぬはははは!」

ミーン、ミンミンミーン!

短命のセミ達がその短い一生を地上で目一杯、輝かせようと鳴いている時、犯罪者に堕ちたストーカー男ミカミは既婚者のソラを略奪して妻に娶ると不埒な宣言を高らかに掲げた。


ミーン、ミンミンミーン!

「暑い…誰かお助けぇ。」

情けない変態男は熱中症になりかけていた。





















































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