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しおりを挟む取材・撮影共に終わり、“親睦会”と銘打った接待を済ます。依頼主であった村木薫サイドの人間を見送くった。
ーー今日の仕事は、全て終わった。
本当の親睦会であろう、打ち上げの提案があった中、ナツメは疲労を理由に断った。
それに対して誰もが引き止めず、先程同様のお見送りモードのスタッフだった。
ーー言われなくたって、邪魔者は帰りますよー。
その群れをかき分けて、静がナツメの元までやって来る。
「お疲れ様。帰り、タクシー使う?」
「電車で帰ります。家も駅から近いので、大丈夫です」
「駅、何処だっけ?」
「H信駅ですけど……」
「ふーん。じゃあ、俺タクシーで帰るから」
『ええーっ!? 柊さん帰るって言ってるけどーっ!!』
静が帰宅する事を悟った側のスタッフが、ブーイングの声を上げる。
その後に続いたのは不快な笑い声。
誰一人、本気で静を止める人間は居ない。静自身もその声に気も止めず、自ら呼んであったのであろうタクシーに乗り込む。
ドアを閉めて良いかを尋ねた運転手に、静はあえて足を外に残した体制で、曖昧な声を上げる。
「ナツ君? 待たせてるんだけど」
「え……じゃあ、お願いします」
イラついた声色の問いかけに、反射的に肯定の返事を返す。
静はナツメの腕を掴み、車内へ招き入れた。車内の静は機嫌を取り戻しており、先程の問いがわざとだった事に直ぐ気がついた。
「お待たせ、出して良いよ」
『かしこまりました』
「……あの」
「どうかした?」
「いえ……静さんの家から、近いんですか?」
「A橋市なんだけど、わかる?」
「わかんない、です」
「まあ、こっちの方が近いのは確かだから。大丈夫だよ」
生まれて初めて乗ったタクシーだった。
ナツメの向かう予定だったH信駅とは別方向に走り出すも、大きな道に出るとUターンをした。
土地勘がなければ.車も持っていないナツメには、似た景色の続く道路は何処を走っているのか分からず、しばらく走った末に見えた、見覚えのある地域の標識を見てハッとした。
ーーS馬区? S馬駅って……自宅と真逆じゃん!
時間は間もなく23時。今タクシーを降りたところで、終電には間に合わないだろう。
「静さん、僕の家H信駅なんですけど……」
「うん。さっき聞いたよ」
「いや、その……逆方向に走ってません?」
『このまま走ってて、よろしいですか?』
「うん、大丈夫。そのまま向かってくれてて大丈夫だよ」
自分の言った駅名をスマホで調べるも、同じ名前の駅は出てこない。同様にA橋市を調べると……A県だった。
つまり、今いるS県と隣同士ではあったものの、丁度境目。県外の市だったわけだ。
ーー近いって言ったけど、感覚バグってんのか!?
「A橋市って……A県のですか?」
「そうそう。もしかして今調べたの? 地理弱いねー、ナツ君」
「僕の家、S松のH信駅の事ですけど……なんか、大丈夫ですか?」
「大丈夫って、何が?」
『ハハハ。静君は、いつもその手で若い子連れ込むんだから』
ーーえ。
「もー、誤解生む言い方しないでくれるー? これは仕事だから良いの!」
「仕事って、何の話ですか?」
「……え?」
『ほら~、やっぱり~』
堅苦しかった会話から一変、運転手は笑い出すと、静も砕けた様子で話し始めた。
ーーやっぱり? 仕事?
「だから、俺の家からの方が近いんだって! これ以上余計な事言うなら、今後、他のタクシー会社使うぞ?」
『余計な事、ですかね~……静君は言葉足らずな所ありますから、気をつけた方が良いと思いますよ?』
「うちに来る承諾得てるから! 連れ込むなんて言い方やめてくれるー?」
「えええ!? 今から静さん家行くんですか!?」
「……え? だからそう言ってるじゃん」
「言って無いです!」
『ほら~、やっぱり~』
静はーー謝罪した。
明日の現場は、ナツメにとっては県外のA県A屋市。
タクシーに乗ると言う概念が無く、車の無いナツメが現場に向かうには、H信駅からローカル線に乗り、新幹線の止まる大きな駅に行く必要がある。
S松駅に移動し、そこから新幹線に乗る事になるのだが、電車でも行ける距離。家を早めに出て、鈍行で行くつもりでいた。
それに対して、静の自宅からは県内。
最寄り駅であるA橋から数駅の位置にあるが、新幹線で移動する予定でいた。
静は、隣に知らない人間に座られるのが嫌いで、時間が許される限り、基本はタクシー利用者だった。
タクシーがダメな場合と言うのは、急な予定変更で、仕事が入った時だ。
当日でも必ず新幹線の指定席で、2人分購入するのが当たり前。会社内では有名な話だった。
それを、新人で初研修だったナツメが知る由も無く。
静は、「久々の新人研修で……正直、浮かれていた」と。テレビの謝罪会見を彷彿させる、発言をしたのだった。
無論、静に悪意は無かった。
明日の研修現場から遠くなる自宅へ、わざわざ帰ろうとするナツメに気を利かせて、現場から近い自分の自宅に招いたつもりだったのだ。
2人分取った席の一つは、仕事で一緒になったスタッフを座らせる。新幹線代は請求せず、静が払う。これも恒例だった。
その代わりと言っては何だが、移動時間中喋りっぱなしの静の話し相手として、強制的に付き合わせる事になる。これも、周知の事実だった。
立場的に静へ気を使うスタッフが多く、仕事で長く一緒になるスタッフは少ない。
交通費が浮く対価としては、仕事をする前に受けて良い負担量では無いのだろう……自ら申し出るスタッフは、滅多に居なかった。
付き合わせたスタッフへの申し訳程度の配慮。その手当ての代金として、静が良く取る手段だったのだ。
「言ったつもりだったんだ……なんか、ごめん」
「僕は大丈夫なんですけど、いきなり行って大丈夫なんqですか?」
『1人暮らしには広すぎる部屋だし、大丈夫でしょ』
「勝手に答えないでくださーい」
「あ……1人暮らしなんですね」
「実家暮らしの坊々に見えた?」
「いえ、その……彼女とか」
「ここ近年、仕事が恋人でーす」
『……ふふ、どうだかね~』
「こらこら、いい加減にしろよ!? 会社ぐるみでタクシー会社変えるぞ!」
『ハハハ。すみません』
静は1人暮らしで、ここ暫く恋人はいない。
興味が無い訳ではなく……仕事柄、見定める目が肥えてしまったとか。
流石に童貞では無い、とか。人並みに興味も性欲もはある、年下で若い子の方が好き、背が高く痩せた子が好き、黒髪が良い……静は、聞いてもないのに口々に好みを上げていった。
ーー女って特定させない言い方はわざとなのかな、なんて。考え過ぎか。
歳は26歳であると言われて、驚いてしまった。予想以上に若かったと伝えれば、「そんなに老けて見えるかな?」と自虐して笑った。
現場リーダー。店舗も構えており、店長をしながら学校の講師も兼業。授業や研修で使う資料のモデルだけかと思えば、アルバイトで他社のモデルをやっているという。
金も地位もあるのに、働き過ぎ。出来過ぎた、人間だった。
この能力を所持する為には、26という年齢は、あまりにも若すぎると思ったのだ。
ナツメにとって、6年後。恵まれているであろう彼でも、どれだけの努力をすれば彼に近づけると言うのだろうか。
ーーでも。友達が少なくて、移動時間寂しいってのは……幼過ぎでしょ。
この二面性を知る人間が、彼の回りにどれだけいるのだろうか。
ーーそれにしても。このタクシーの運転手、気に入られてるよなあ。
特定の人間への依存体質。似ていると思うのは、自惚れが過ぎるだろうか。
静の話は尽きぬまま、気付けば自宅前に到着していた。
深夜。窓から光は漏れないこの時間、夜空に同化した最上階は見えない。高級感漂うマンションだった。
「……ったく、明日も朝イチで頼むからね。おやすみ」
『毎度ありがとうございます。あ、お連れ様も、今後ご贔屓下さいませ』
「はい。ありがとうございました」
運転手は車内で挨拶をすると、運転席のドアを開け、降りた。
直ぐに後部座席のドアを開け、降車する静に深々と頭を下げた。それに続いて降りて来たナツメにも同等に頭を下げ、名刺を差し出した。
【 柊タクシー株式会社 柊 雅美 】
ーーえ? 柊って……。
軽く挨拶をして、手慣れた様子で別れた。
運転手の柊は、2人が建物に入るのを見送る。
静がカードキーを通すと扉が開き、2人が中に入ると、扉は自動で閉まる。
先程まで聞こえていたタクシーのエンジン音が鳴り止む。
外からの音は全て、聞こえなくなった。
ナツメが振り向くと、柊はまだそこにいた。
口を大きく動かして、「おやすみなさいませ」と言ったのがわかった。
小さくうなづき手をふり返すと、細かった目は更に細くなり、手をふり返してくれた。
ーーああ……これは、誰でも気に入るわ。あの人、かわいい。
ボタンを押すと、既に到着していたエレベーターの扉が開く。
2人が乗り込み、静がカードキーをかざすと、扉が閉まった。
不快な揺れも音も無く移動するエレベーター。2桁まである階層。透明なガラス張りの壁。高所恐怖症だったら失神物の景色が広がっていた。
エレベーターが上がると、共有玄関が丁度見える位置だった。
小さくなっていくタクシーが、そこにあった。それを見つけたのは静も同じで、見えもしないだろうに、手を降っている。
ーー可愛い大人って、世の中に沢山いるんだなぁ。
「ナツ君、見て見て。今、タクシー動くよ」
チカチカと光っていたハザードが止まり、ライトが切り替わる。
「ハハハ。偶然じゃ無いですか?」
「じゃあ、見てて。ここからが面白いから」
そう言って、静は遠いタクシーに向けて三本指を立てて見せた。
……すると、タクシーはハザードを3回光らせた後、走り出した。
ーー2人の姿が見えなくなっても、待っていた?
あえて帰って居なかった、とでも言うつもりか?
「嘘だ~。事前に何か決めてるんでしょ?」
「まあ、一回じゃ信じないよね~。これ出来るのここのマンションだけだから、次の機会は、しばらくお預けだなあ」
「種明かし無しですか?」
「また今度が……あったらね」
ーーまあ、正直。トリックも、運転手の正体も。どうでも良いんだけど、ね。
階数指定も、開閉ボタンも無いエレベーターは、緊急ボタンがあるだけで、触れては行けないオーラを放っていた。
壁はガラス、開閉する扉、触れられない電子版に囲まれた空間を改めて認識し、縮こまる。
このランクのマンションへ、この若さでの1人暮らしは、常識では、無い。
ーー選ばれし者……努力した人間結果として、暮らすべき場所だ。
高校時代にいた友人は、家族と暮らしていて、持ち家だった。
専門学校時代の1人暮らしの友人は小さなアパートだった。
ナツメは中学から。このランクの光景に、馴染みがあった。
ーー僕のは、汚い金。天と地の差だ。
電子版の数字が順に光り、静の自宅のある階層で停止する。
自動で開く扉。2人が降り、空になった事を感知したエレベーターの扉は自動で閉まり、誰に指示されるでもなく、自動で下まで降りて行った。
ピロリロリンッ。ピロリロリンッ。
ナツメの携帯が間抜けな音を立て、それに合わせてバイブ音も鳴らしていた。
深夜の共用廊下は不気味な程にその音を響かせたが、その音に静は笑った。
「っぷはは。なんか、通知? 変な音使ってんね」
「えっと……ちょっと、電話してきて良いですか?」
「なになに、彼女~? まあ、急だったしね。何か言われたら、ごめんね」
「すみません、大丈夫です、えと……ありがとうございます」
「はは、全部言うじゃん。ここじゃ音響くからさ、とりあえず中に入って」
「はい」
ーー実際は、アラーム音だった。
毎日一回。この時間に別人格達と会話を試みると決めていた。
会話をしたい、情報共有したいと人格同士で思えば、出来ている……気がする。
リアルな夢を見ている感覚。朝の寝起きに、起きて朝食を食べる夢を見てしまった時の様な、あの感覚を利用して会話をする。
それには、片方が声に出して会話をする必要がある。
両方が脳内で会話してしまうと、心境と妄想がごっちゃになって、会話にならなず、完璧な夢と同様の状態になってしまうからだ。
今まで自分以外の人間の介入が無かったのと、夢と同じ感覚な為、この時の会話内容は記憶に残り辛い。
無理に思い出したり、記録する”夢日記“的な行動は、脳や精神への負担が大きく、危険だというのは聞いた。
それでも毎日続けてきたのは、サボったその夜に会えなくなる可能性の方が、何倍も怖かったからだった。
咄嗟に出た“電話”と言う嘘は、偶然とはいえ、随分と機転が効いたものだ。
ーー静さんに怪しまれずに、条件を遂行出来る。
案内された静の部屋は、とにかく物が少なかった。ミニマリストとは何か違う……違和感。
ーー人が住んでる匂いがしない、この感じ……僕の部屋と、一緒だ。
それが何故か心地良い。そんな自分がバレるのが嫌で、自ら話を振った。
「この部屋、引っ越したばかりなんですか?」
「ううん。契約したのは年単位で前。今の職場から遠いから、久々に来たんだけど……業者入れてるから、汚くは無いと思うよ」
「え? ここ、自宅じゃないんですか?」
「自宅だよ。いくつかある内の、ね」
ーー違う。僕とは、理由の次元が違う。
ナツメの物の無い自宅は、ただのわがままで作り出した空間だった。
両親からの汚い金で暮らす家で、幸せを感じたくなくて……最低限の空間にした。無駄な反抗意識だけでで作り上げたナツメの家とは、次元が違う。
ーー似てるとか、思っちゃった……馬鹿みたい。
「……んじゃ、何かわかんない事あれば、声掛けてくれて良いから」
ナツメが電話をしている間、静は気を遣ったのか、風呂に入って来る旨を伝えた。その際、バルコニーがある事も伝えられた。
言われたその場所から景色は、夜でも絶景だった。
空と大地がひっくり返り、小さな星が散らばる夜空が広がっているかの様に、錯覚させられた。
ーーこんな時間まで、灯りがついてる。都会だな……。
現実の夜空は、月だけが光る真っ暗な空間。星はなかった。
人々が寝静まり、灯りのない大地がそこにあるかの様だった。
ーー都会は星が見えないって、本当だったんだな。
昼間見れば、また違った壮観な景色が広がっているのだろう。
その景色を眺める為の、新品同様の椅子と机があった。数年前と言ったのが嘘の様に、手入れが行き届いている。
“バルコニー”と聞いて、パッとしなかったナツメだったが、ベランダと言うには物足りなさがあるのはわかった。予想以上の、立派な憩いスペースだった。
幸いにも、心地よい程度の風で、外は寒くない。
風の音と、微かに走る車の音は多少気になったが、今からするのは所詮、“相手の居ない電話”だ。何も問題は無い。
防音ガラスの窓は、ナツメの会話が室内へ漏れるのを遮断してくれるだろう。
安心しきった所で、話しかける相手を曖昧に、発言する。
『あれから、“あの子”どう?』
ナツメは、ナツメの女性人格へ話しかけている。
ーーしまった。気を抜き過ぎた!
話始めを、脳内でしてしまった。
会話条件として、声を出して話すのが必要になる為、強制的に相手の人格が外に出てきてしまう。
「……大丈夫よ。悪さなんてしないから、安心して」
『そんなの当たり前だよ……で、どうなの』
「あの子って、どの子の事? 薫? 静? 運転手の柊?」
『全部違う! 病院での、あの子だよ』
病院。数日前の話の続きだった。
半日で終わった学校帰り、眠気に襲われたナツメだったが、気が付いた場所は自宅だった。
その翌日。下ろしたはずの現金が無くなっている事に気付き、慌ててコンビニで下ろしていた際、鞄の中に見覚えのない領収書があったのだ。
他の人格へ聞けば、昨日の意識の無い間に病院に行って、一悶着あって、自宅に帰って来ていた後だったと言うのだ。
ーー何で僕だけ記憶共有出来ないんだ~!?
【 女性医療クリニック ジェンダー外来 初診 】
ーー救急車じゃ無くて良かった……いや、良くはないんだけど。
数日前、ホルモン注射の相談へ行きたいと言い出していたのは、なっちゃんだった。
ナツは反対していたが、ツバキは今後の仕事に役立ちそうだからと半分賛成。
ナツメはと言うと。主張の強くなって来た別人格との会話は睡眠不足に直結しており、話半分に聞き流してしまっていたのだ。
そんなナツメの隙をついた、彼女の強行突破だと……思われていた。
「ああ! ……この前、出来ちゃった子ね」
『妊娠みたいな言い方しないでよ。気持ち悪い』
「似たようなもんじゃなーい?」
病院へ行き、待っている間は何ともなかった。
ーーなんとも、なさ過ぎたのだ。
他の人格から多少は反対されていた事ながら、なんの抵抗も無く家を飛び出し、直通バスへ乗り込んだ。
ナツメ以外の人格も、互いに別人格が主格で動いているのだと思い込み、黙っていた結果……気付いたら、病院に到着していた。
待合室に座り、名前が呼ばれるその時まで。無心で、真っ暗な携帯画面を見つめていた。
ーー家を出て、病院行ったこの人格は……誰?
なっちゃんが胸を弾ませるでも無く、ナツが抵抗を見せるでも無く、ツバキの無関心さによる冷静でもない。
ナツメに至っては、その時意識が飛んでいたのだ。
診察室へ通された途端、ナツメの体は突然騒ぎだて、暴れた。何かされたわけでも無いのに号泣し始め、それ以上されるのを拒否した。
ーー可能性としては、”名前の呼び間違い“への“拒絶反応”。
それぞれの人格毎に名前があるのは、脳と精神の安定の為だ。本人達でさえ理解しきれていないこの現象。混乱せずに日常を送る為の、苦肉の策だったのだ。
ーー見知らぬ人間の前で泣く様な、弱みを見せる人格は、いなかった。
安定させて来た結果が、これだった。突然の、原因不明の新人格の、誕生。
ーー君は誰? 大丈夫なの? 僕らに、出来る事は無い?
ナツメらが幾ら問いかけても、返事は無かった。
『あの人格は、女? 男?』
「わかんないわよ。私達どころか、病院の人間とも、殆ど会話してないのよ?」
『人格の精神年齢って、人によっては差が出るみたいだね。僕らは、殆ど一緒だけど』
「……まともに会話出来ない赤ちゃんなのかもね。はぁ~、最悪~」
『成長って、するのかな。だったら、話したくても出て来れないって、危なく無い?」
「危ないも何も……2度と出てこないで欲しいわ」
『聞いてるかもしれないんだから。そんな事、言うもんじゃないよ』
「可愛いベイビィ人格には優しくしろって事? 無理無理。両親の血が流れてるんだから、虐待方法しか知らないも~ん」
『そんな事ないよ。なっちゃんは、優しいって』
「どうかしらねぇ……あの人格が死んでくれたら、わかるんだけどなあ」
『いい加減にしろって!』
「人格とは言え、誰かが死んだ時。気持ち良くなっちゃうメンヘラのか、悲しくて涙が出る人間なのか……楽しみねぇ?」
両親は、人間じゃない。
でも、それしか知らないナツメ達は、ひたすら両親に似ていき、その遺伝子は濃厚に成長して行く。
ーーこの遺伝子は、絶対に遺伝させちゃいけない。僕の代で、抹消させる。
ナツの同性愛者としての人格は、この意識故に、愛を求めた結果から、生まれた人格なのかもしれない。
ナツメはバイだと認識しているが、女性を好きになった事は、まだ無い。
いつまでたっても、女性のイメージが、“母親もどき”から離れないから。
母親からは、いつも。父親の会社で作ってる、化粧品と、香水の香りがした。
ーー女の匂い。僕は、嫌いじゃない人間の匂いを、知らない。
ーー普通の母親人からは、どんな匂いがするんだろう。
******
ある日突然。家政婦が居ない数分の時間、2人っきりになった時間があった。
幼いナツメに、アイツは脅迫したのだ。
「ねえ、ナツメ。私の事、好き?」
「うん、好きだよ。パパも好きだよ」
「私も懐石さんだーいすき。でも、ナツメの事は大っ嫌いよ」
「何で? どうしたらいいの?」
「ナツメが□□じゃったら、全部上手く行くんだけど……■■して欲しいなあ~?」
当時のナツメにはまだ意味のわからない言葉を羅列して、楽しそうに不安を煽ってきた。
ーーわかんないから、出来ないよ……ごめんね、ママ。
母親に良く似た息子を、父親は可愛いと可愛がったが、彼女はそれが気に食わなかった。
浮気をしないであろう彼でも、自分以外の人間へ愛を囁くのが、許せなかった……その相手が、実の息子だろうとも。
全てが、母親思い通り進んで行く。ーーこんな世界、狂っている。
結婚をして、法律での束縛。
椿の苗に代わり、夏目の夏の字を捨てる代わりに、愛する男の名前の“懐”の字を使って、無理矢理つけた名前、懐目。
綺麗な理由を繕って、納得させた。離婚した際には、夏目×懐目の歪な並びを脅し文句に使える様に、保険をかけて。更に束縛した。
そんな小細工は無駄だった。ーー父親もまた、狂っていたから。
子供と言う理由が無くとも、自分に依存する彼女気付いてしまった。母親である理由がなくなった。
ーー妥協策で作った息子が、只々、邪魔なだけの存在になったわけだ。
「自殺だけは絶対するな。彼女を支える為の仕事に汚点をつけられては困るからな。
生きていけるだけの金は振り込み続けてやる。
普通の人間なら、人生3回分。一生遊んで暮らせる位の額だ」
ーー金だけだった。言葉の通り、金だけだった。そこに、愛はない。
他には何もくれず、求めても来なかったから……僕は、愛の与え方も、求め方も、知らない。
「自殺してよ。これじゃ、足りないのよ。
回りが私に圧倒されて、彼に手が出せ無くなるくらいの理由が……圧倒的魅力が!」
ーー殺してはくれなかった。2人共、綺麗好きだから……自分の手は汚さない。似た者同士、お似合いだ。
他人の手も汚させ無いのは……僕が、他人以下の存在って事?
「お金があれば、嫌でも人が寄ってくる。その中から好きな人間を選べば良い」
ーー汚い金はお前の落とした糞だ。
それに寄って来たのは人間じゃない。ただの虫だよ。
「ママね……絶対的悲劇のヒロインになる必要があるの。だから、お願い」
ーーママ。僕の自殺を懇願した時の、たった一度だけ自称した。
「ワカリマシタ」
ーー2人共、僕の事が嫌いなんだね……僕はこんなにも、愛しているのに。
「「懐目は良い子だね。ありがとう。さようなら」」
ーー良い子じゃないよ。嘘だもの。こんなの、愛じゃない。わからなくなんか、ない。
ーー初めてで最後の感謝。嬉しかった。ありがとう。
ーーママとパパの物語が、最高に盛り上がるシチュエーションを用意するから……それまで、良い子に待っててね。
ーー■■して、□□したら。永遠に愛せるし、愛してくれるだろうから。
******
『なっちゃん……敬語使える?』
「何、その質問」
『すぐ戻れそうもないし、明日早いから……不自然に思われない様に会話して、すぐ寝てね』
「わかったわ。おやすみ、ナツメ」
『おやすみなさい、なっちゃん』
ーーあははっ。五月蝿いのが、やーっと寝たわ。
なっちゃんが、脳内で発言した。
この瞬間を狙えば、ナツメの人格は外に出れたであろうも、昼間の疲労が祟り、睡魔に近い感覚が襲う。このまま飲まれれば、記憶が共有出来ない。
ナツメの体は、眠らないのだ。主人格が、乗っ取られる。
「嘘嘘。大丈夫よ、ナツメ……静はコッチの人間だから。安心して眠りなさい」
ーーコッチって……自惚れて、傷付くのはいつも…………なの、に……
***
風呂から出て来た静と目が合った。
静は空を掴み、電話をする素振りを見せ、「終わった?」と問いかけている様子だった。
ナツメは窓を開け、部屋に入るなり携帯の画面を見せる。
【 アラーム1 毎日 0:00 スヌーズオフ 】
「……ん? どうした? 目覚ましなら、俺がかけとくから。朝、起こすよ」
首を横に振る。携帯を手元に寄せ、別画面を開き、操作する。
ピロリロリンッ。ピロリロリンッ。ピロリロリンッ……
先程の通知音を、故意で鳴らし続けた。
此処は、防音機能のある壁に包まれた部屋だった。洗濯機も回る中、今更、物音を気にする必要がないのにも関わらず、深夜のその音は不安を沸き立て、落ち着かなかった。
静かな空間で鳴り続けるその音は、先程あった愉快さは皆無で、ただ不愉快に鳴り響く。
止める素振りを見せ無いどころか、ナツメは静を見て笑っていた。
ピロリロリンッ。ピロリロリンッ。ピロリロリンッ……まだ、なり続ける。
【アラーム2 1回 0:47 スヌーズオフ 】
再び見せて来た携帯画面は、アラーム通知画面だった。
設定された時間は、現在時刻の1分前になろうとしている瞬間だった。
アラームは止まり、また別の画面を開き、操作する。
「……今、家族と話したんです」
「ああ、そうだったの。ごめんね、彼女だなんて茶化したりして」
「フフフ……ホント、酷い奴」
次は、まっさらな着信履歴を見せて来た。
「着歴、豆に消すタイプ、とか?」
「フフフフフ……気付かないふり続けて、優しいですね?」
「何、ナツ君って役者志望? ……詐欺師とかだったりして」
「詐欺師……ハハハハハ! 人の家で電話するふりする、ヤバイ奴で~すっ」
静の髪は、まだ濡れていた。その水を受け止めたであろう湿ったタオルが首にかけられており、ナツメはそれを握り、体ごと引き寄せた。
気を抜いていた静は抵抗することはなく、わずかにあった身長差を埋めた。
息のかかる距離で、目が合う。焦点が合わない視界に目が眩み一瞬目を瞑ったその時、あたたかいモノが静の唇に触れた。
「……ナツメから頼まれたの。不自然にならない様に会話して……すぐ寝て、って」
「ナツメに頼まれた、って……君は誰なの?」
「フフフ。飲み込みが早くて助かるわ。物分かりの良い人、大好きよ」
「ナツ君じゃ、無いんだね」
「そうやってさぁ、ナツって、気軽に呼んじゃダメよ。あなたは、ナツには会ったことないんじゃ無い? あなたが知ってるのはきっと……ナツメだけだわ」
「色々聞きたい事は山ほどあるけど、これだけ先に答えて」
「なあに?」
「君は、誰? もうこれ以上、君の名前を間違えたく無い」
「私は、なっちゃん。ナツメのなっちゃん。私みたいなのが……あなたの好みなんでしょ?」
「まあね。もしかして、気付いてた?」
「あなたのいやらしい視線に気付いたのは、私だけ。ナツメは純粋で、自分嫌いだから。人に好かれているって感覚を、まだ知らない」
「君だけが……僕の気持ち、知ってたんだ?」
「ナツメを通して、初めて出会ったあの瞬間から知ってたわ。
唯一、私だけが……愛し愛され方を、知ってる人格だから」
「なるほど。興味深いね」
「ずっと、こうなる事を……期待してた」
「童貞じゃないとは言ったけどさ……僕も、君みたいな子を“抱く”のは、初めてだからね?」
「明日早いんでしょ? お互い、痛いのは無しよ」
新品同然のベットに、皺ひとつないシーツ。
シングルにも関わらず、ダブル同様のサイズのベットへ、2人は倒れ込んだ。
***
♪~、♪~……小刻みなバイブレーションと、オルゴール音のメロディ。
肌触りの良いシーツが体に纏わりつく。目を開けても薄暗い室内は、再び瞼を閉じるよう誘う。
ーーダメだ、臭い。汗臭い……吐き気がする。
目覚めた意識中で立てた寝息は現実へ引き戻す。シーツから覗く体には、不快感しかなかった。
眠気、疲労感。臭い、ベタつき。それに反した喉の渇き……嫌悪。そして、熱。
ーー暑い。
熱を持った体が、温まった現在地を拒否する。冷たいシーツを求めて寝返りをうつも、何かにぶつかる。
「痛っ……」
「あ、ごめん。おはよう……2時間も寝て無いけど、動けそう?」
「…………え?」
「はい早く起きて。時間無いから、手短にね」
目の前には、昨日と違う格好の静。髪も整え、すぐにでも出掛けられる状態だった。珍しく、眼鏡をかけている。
部屋の電気が点灯し、静は険しい顔でナツメを見つめると、「よしっ」と何かを確認した様子で、掛けていた眼鏡をずり上げて見せた。
「どう? 眼鏡無しだと、バレるかな?」
「……何がですか?」
「クマだよ、クマ。朝見たら酷かったんだよね~……ちゃんと隠れてる?」
「メイクしてるのはわかりますけど。凄いですね、言われてもわかんないです」
「ふふ~ん、伊達にプロ名乗って無いよね~ん」
「僕は、大丈夫ですか?」
「……若いって良いね~、クマとか全然無いんだもん。才能も、若さには敵わんよ。あ、ナツメ。化粧とかする?」
「いいえ。ケアくらいで、授業でした事あるくらいです」
「潔癖症は……流石に無いよね? ナツメが人の物で平気なら、俺の私物貸すから。自由に使って」
「あ、はい……ありがとうございます」
「じゃあ、ついて来て」
そう言い残し、静が部屋を出て行く。
ーー何が?
無理に推測するのは辞めた。考えた所で、情報量的に理解出来ない可能性の方が高い。
昨日の事もあり……静の事だ、本題が抜けて先走っているに違いない。案の定、保けるナツメを残し、部屋を出て行ってしまった。
少し離れた部屋で、ピッピッと機械音が数回鳴った後、洗濯機が回り始めた音と同時に、再び「ナツメ~!」と呼ぶ声がした。
ーーって言うか、さっきから何で呼び捨てなんだよ!?
ベットから降りた足は素足。綺麗なフローリングを裸足で歩くのは躊躇われたが、脱いだ靴下は見当たら無い……所では無かった。
ーーま……まーじ? これ、ズボンどころか……パンツも履いて無いじゃん!
『ナツメってばー! シーツも洗うから、持ってきてくれるー?』
その言葉に救われ、ベットから剥がしたシーツを腰に巻きつけた状態で部屋を出るも、移動に手間取っていたナツメを待ち侘びた静と鉢合わせる。
「いや、これは……その」
「あ~! ごめんごめん、パンツも洗っちゃってたのか……気付かんかった。寒かった?」
「寒くは……無いですけど」
「ナツメ、結構良い値段するボクサー履いてたみたいけど、安いパンツでも大丈夫?」
「大丈夫ですけど……って、そうじゃなくて!」
「本当に記憶共有出来ない無いタイプの別人格っているんだー」
「…………え?」
「信じるしか無いよね~…だって、どう見ても演技には見えないし」
ーーあのアマ、何が悪さしない、だ……何、したんだ!?
「静さん、僕。その……」
「ナツメと、ナツと、なっちゃんは話した……ツバキはまだ会ってない、と思う」
「ど、どこまで知ってるんですか……?」
「知らなかったとはいえ、上司とは言え……普通に、馴れ馴れしかったよね。今まで名前間違えてて、ごめんね?」
「……何で。そんな直ぐに、信じられるんですか?」
「ナツメは記憶途切れるってのは、聞いた。“俺の場合”、少し話すね」
ーー『静はコッチの人間だから』って。まさか……!
「俺は、ハッキリ区別も付けて無いし、名前とかつけて無いけど……似たような感覚あるんだ」
「静さんも、そう……何ですか?」
「この病気? って言っていいのかわかんないけど。個人差あるんだろうね」
「静さんも……多重人格、なんですか?」
「人格、なのかなー。ナツメと違って、記憶は全部共有してるから、忘れない夢?映画見てた感覚に近いかなー」
「そう、なんですか……」
「んじゃあ、これ……貰うよ、っとーー」
そう言うと、静はナツメからシーツを剥ぎ取り、洗濯機の中へ放り込んだ。
そこには、あられもないナツメの姿だけが残る。
「ええ゛!? ちょ、ちょっと~~っ!!!!」
「大丈夫大丈夫! 昨日あんなで説得力無いとは思うんけど……俺、#無性愛者_アセクシュアル__#だから、気にしない、気にしな~い!」
「気にしますよ!! こんな格好で、どうしろって言うんですか!?」
「だから、風呂入れって言ってんじゃん」
ーー言って無い!!
「服とか食事は、出るまでには用意しとくし……あ! これ使って」
手渡されたのは、使い捨ての歯ブラシだった。
「あ、ありがとうございます。朝食後に、使わせて貰います」
「朝食後にも新しくもう一本やるから。まず、磨いた方が良いと思うよ? 風呂場で磨いてくれて構わないからさ」
「……え? そんな、勿体無いですし。時間も無いだろうしーー」
「良いから!! お、俺は、お前と違って記憶残ってんだってば!」
「……と、言いますと?」
「見てる事しか出来なかった俺が……悪かった。なんかあったら責任も取る。だから黙って、歯磨いてくれ」
「…………はい。わかりました」
ーー何したんだよ、なっちゃんと静さんはぁ~~っ!!?
察しは、ついた。静は人格と言うよりかは、多重性癖。その記憶を共有する事があるデメリットとして、言った内容と脳内の内容がごっちゃになり、管理しきれない部分があるようだ。
ーー何を見たんだよ、柊静!
汗とは違う臭さは感じていた、が……一瞬脳裏に過った物は、未知の世界過ぎて確定することを拒んだ。再びそれはしつこく脳裏に過ぎる。過ぎるのだが……何臭いとは、言い難い。
髪を洗って、体を洗って。シャワーを浴びる間、ずっと歯を磨き続け、ふやける程に舌も磨いた。
静の用意したパンツも、服も、朝食も文句無しの一流品。
食事中には、濡れた髪をプロの技術でが乾かし、セットする。
2本目の歯ブラシは使い捨てじゃなく、コンビニで一番高い物を買ってきたらしい。
文句無しの完璧な待遇に、ナツメの別人格達が満足だったにも関わらず、お礼の一つどころか、ナツメからの会話は殆ど出来なかった。
ーーナツメ、心ここに在らず。
それでも動くこの体。一体どうなってんだよ、ホント。
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ーーベテランタクシードライバー柊は、考えていた。
今までどんな客を乗せようと、欠かさず挨拶をし、明るい接客で乗客を不快にすることなく難を逃れてきた。
しかし、今までに感じた事のない常連客の放つ異様な空気を、長年掛けて鍛え上げて来た勘をフル稼働し、読み取った。
ーー答えは、沈黙。
まさか、ファンタジー漫画で得た知識を、現実に使う日が来るとはねぇ……。
後方確認ついでに確認した2人の様子は、まるでーー
「「ゴ、ゴホン……っ!?」」
わざとらしい咳払いをシンクロさせた所で。柊は笑いを堪えつつ、タクシー発進させた。
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