転生した悪徳皇后はこの国が嫌いなので、悪役らしく頑張ってみることにした

まかだみあ

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悪徳皇后の備忘録1【カマンディー公爵家 中編】

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あれから、どうやって自室へ戻ってきたかは覚えていない。

私は慢性的に皇后お母様から虐待をされて育った。
皇帝お父様は興味がないと見知らぬふりをして放置。

両陛下から冷遇されている私は、貴族はおろか、城の使用人でさえも憐れみこそあれど、味方になってはくれなかった。

そんな中、叔父様一家カマンディー公爵家だけが私を心から心配して心を砕いてくださった。

皇后達から身を挺して守ってくれることもしばしば。

…数えきれないほどの大恩があるのに。

私は、なにも返すことが…


『皇女殿下、しっかりしてください!あなた様には、皇弟殿下から託された大事なお役目があったはずです!』


わかってるわ、リノ。

むしろもう、私にはそれしか叔父様に対して何もできないのだから。


『…そうね。叔父様の最後のお願いだもの。』


これだけでも、果たさなくては。

…唯一できる、最初で最後の恩返し罪滅ぼしだもの。


『…明後日、予定は何もなかったわよね?』

『はい、明後日は午前の皇后陛下への謁見以外は何も』

『そう…では、城下へ降りるわ。もちろん、お忍びで。』


皇族専用の馬車は目立つし、皇后からは小さな時から城から出ることは一切禁止されている。

バレてしまえば、市民となってしまったシルヴァーナ達がどんな仕打ちを受けるか。

想像しただけで、怖くて歯がガチガチとなりそうだった。

身を守るための権力や資産は、全て皇后達が奪い取ってしまったのだから…

彼女らを守るものは、もう何もない。


『アルシオネ様方のお住まいはご存じなのですか?』

『ええ、お別れの挨拶のときシルヴァーナからこっそりメモをもらったの。』

わたしは身につけていたを開き、その中から小さな紙切れを取り出して広げて見せた。

『ここに住所が書いているわ。わたしは城下を歩いたことがないから、リノに案内して欲しいのだけれど…この場所わかるかしら?』

リノはじっと紙の上の住所を凝視して、それから笑った。

『…それでしたら問題ございませんね。当日までの諸々の手配はお任せください。…ただ。』

そこまで言い切って、リノは顔を顰めて

『もしかしたら、通りは色んな意味で荒れてるかもしれません。嫌な思いもなさると思います。お気をつけくださいませ。』

『ええ、よろしくね。』




あの時、リノが言っていたとはどういう事なのか。

本当の意味を理解していなかった私は。

今目の前に広がっている現状に、目を疑った。
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