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悪徳皇后の備忘録1【カマンディー公爵家 前編】
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『叔父様!これは皇后と摂政の罠に決まってますわ!私が皇帝に直談判して再調査を依頼すれば…』
『やめろ、メリア!それがバレれば今度はお前が皇后にっ!!』
鬼気迫る勢いで、叔父様が私に向かって吠えた。
…全身傷だらけでボロボロの満身創痍の姿で。
無理に大声を出したからか、叔父様が言葉に詰まりむせた。
ルシオ・ヴィア・カマンディー。
皇帝の実弟で、カマンディー公爵位を賜った…元皇位継承権第一位の皇族。
私の敬愛する叔父様。
叔父様は、民思いの素晴らしい人格者で孤児院によく寄付をしていて、民からの人望が厚かった。
皇位継承権第一位で発言力も強く、度々摂政と皇后に財政について苦言を呈していた。
なかなか思い通りに民から税を搾り取れないことで、摂政と皇后は叔父様のことを常に苦々しく思っていた。
叔父様も、民を奴隷同然に扱う摂政、皇后一派に不信感を募らせていた。
まさに一触即発の状態が長期間続いていた中。
叔父様が投獄された。
投獄される数日前から、貴族内である”噂”が広まっていた。
曰く、【カマンディー公爵が謀反を企てようとしている】という。
その噂が皇帝の耳にも入り、噂だけで反逆罪だとして投獄された。
皇后と摂政はこれ幸いとばかりに、証言をさせる名目で厳しい拷問をした。
その後、証拠だという謀反の計画書が叔父様の屋敷から見つかったという。
それが決定打となり、裁判にて下された判決は…叔父様は皇位継承権の剥奪となり、公爵家は取り潰しとなった。
叔母様とシルヴァーナは市井へ下る事になった。
そして叔父様はそれだけではなく…死刑も決まった。
元の身分が高い事を考慮して斬首刑ではなく、毒杯を賜る事になったと言っていた。
タイミング的にどう考えても、皇后一派の罠だとしか思えない。
『そんなのわかってます!でも…いくらなんでもこれはおかしいです!謀反の噂が立ったくらいで投獄、挙げ句の果てには死刑などと!』
普通、投獄されるとなると最初に調査が必要なはず。
皇后側の言い分は、【火のない所に煙は立たぬ】。
噂が立つ時点で黒だという、めちゃくちゃな理由だった。
『…メリア。よく聞きなさい。』
声を押さえて呻くようにそう切り出した叔父様の目は…生への執着を完全に諦めきっていた。
でも、私と同じアイスブルーの瞳は強く、私を射抜いた。
『生きなさい。生きて、生き抜きなさい。』
…いやだ。
私を置いて行かないで。
『叔父様、』
喉からするりと出た呟きは叔父様に遮られた。
『皇后一派に逆らってはいけない。逆らった者の末路は…君が一番よく知っているね?』
嫌だ、叔父様。行かないで。
言葉にならず、ただ嫌だ嫌だと泣きながら首を振り続ける私を、叔父様は牢ごしで困ったように笑った。
…本当はわかってる。
皇后一派が宮廷を牛耳っている限りは、皇帝なんかお飾りでしかなくて。
どんなに私がもがこうとも、叔父様たちを救うことはできない事は。
『僕らはもう、君を助けてあげることができない。君が無事に皇后になるだけで、僕らが守ってきた甲斐がある。』
第一皇女が、次期皇后がなんだ。
身分と肩書きだけは立派の、何も力を持たないただの小娘じゃない。
『…最後に、アルシオネとシルヴァーナに、こう伝えてはくれまいか。[不甲斐ない夫、父で申し訳ない。大変だろうが、どうか市井で生き延びてくれ。お前達の幸せをずっと願っている、…愛している]と。』
『やめろ、メリア!それがバレれば今度はお前が皇后にっ!!』
鬼気迫る勢いで、叔父様が私に向かって吠えた。
…全身傷だらけでボロボロの満身創痍の姿で。
無理に大声を出したからか、叔父様が言葉に詰まりむせた。
ルシオ・ヴィア・カマンディー。
皇帝の実弟で、カマンディー公爵位を賜った…元皇位継承権第一位の皇族。
私の敬愛する叔父様。
叔父様は、民思いの素晴らしい人格者で孤児院によく寄付をしていて、民からの人望が厚かった。
皇位継承権第一位で発言力も強く、度々摂政と皇后に財政について苦言を呈していた。
なかなか思い通りに民から税を搾り取れないことで、摂政と皇后は叔父様のことを常に苦々しく思っていた。
叔父様も、民を奴隷同然に扱う摂政、皇后一派に不信感を募らせていた。
まさに一触即発の状態が長期間続いていた中。
叔父様が投獄された。
投獄される数日前から、貴族内である”噂”が広まっていた。
曰く、【カマンディー公爵が謀反を企てようとしている】という。
その噂が皇帝の耳にも入り、噂だけで反逆罪だとして投獄された。
皇后と摂政はこれ幸いとばかりに、証言をさせる名目で厳しい拷問をした。
その後、証拠だという謀反の計画書が叔父様の屋敷から見つかったという。
それが決定打となり、裁判にて下された判決は…叔父様は皇位継承権の剥奪となり、公爵家は取り潰しとなった。
叔母様とシルヴァーナは市井へ下る事になった。
そして叔父様はそれだけではなく…死刑も決まった。
元の身分が高い事を考慮して斬首刑ではなく、毒杯を賜る事になったと言っていた。
タイミング的にどう考えても、皇后一派の罠だとしか思えない。
『そんなのわかってます!でも…いくらなんでもこれはおかしいです!謀反の噂が立ったくらいで投獄、挙げ句の果てには死刑などと!』
普通、投獄されるとなると最初に調査が必要なはず。
皇后側の言い分は、【火のない所に煙は立たぬ】。
噂が立つ時点で黒だという、めちゃくちゃな理由だった。
『…メリア。よく聞きなさい。』
声を押さえて呻くようにそう切り出した叔父様の目は…生への執着を完全に諦めきっていた。
でも、私と同じアイスブルーの瞳は強く、私を射抜いた。
『生きなさい。生きて、生き抜きなさい。』
…いやだ。
私を置いて行かないで。
『叔父様、』
喉からするりと出た呟きは叔父様に遮られた。
『皇后一派に逆らってはいけない。逆らった者の末路は…君が一番よく知っているね?』
嫌だ、叔父様。行かないで。
言葉にならず、ただ嫌だ嫌だと泣きながら首を振り続ける私を、叔父様は牢ごしで困ったように笑った。
…本当はわかってる。
皇后一派が宮廷を牛耳っている限りは、皇帝なんかお飾りでしかなくて。
どんなに私がもがこうとも、叔父様たちを救うことはできない事は。
『僕らはもう、君を助けてあげることができない。君が無事に皇后になるだけで、僕らが守ってきた甲斐がある。』
第一皇女が、次期皇后がなんだ。
身分と肩書きだけは立派の、何も力を持たないただの小娘じゃない。
『…最後に、アルシオネとシルヴァーナに、こう伝えてはくれまいか。[不甲斐ない夫、父で申し訳ない。大変だろうが、どうか市井で生き延びてくれ。お前達の幸せをずっと願っている、…愛している]と。』
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