転生した悪徳皇后はこの国が嫌いなので、悪役らしく頑張ってみることにした

まかだみあ

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暴力的描写があります。
苦手な方はご注意ください。
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「して、妾の可愛いアスメリアよ。」

皇后は広げていた扇子を閉じ、手に持ったまま私に近づいた。

「この一週間、親の妾に挨拶なしに何をしておったのじゃ?」

そう言って私の顎を扇子の先で掬い上げる。

見上げた先にある皇后のヘーゼル色の瞳は獲物を捕まえたとばかりにぎらついていた。




ーー怖い、怖い、怖い、痛いのは嫌だ、やめて、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、悲しい。

頭に、過去の皇后の声が響いた。

『お主は悪い子じゃ。こうして母を悲しませるのだから。』

そうだ、私は。
どうして、逆らってはいけない人に逆らおうとしてしまったのだろう。



「のう、だんまりか?アスメリア。」

皇后の楽しそうな声が耳にこびりつく。

、毎朝母であるこの妾に挨拶に訪れること。そう、言い聞かせておったのを一日のみならず、連日忘れておるとは…そなたは親である母の恩を忘れたと見える。悪い子よのう。」

ーバシッ。

手に持っていた扇子で、思い切り頬をはたかれる。

大人の腕力に貧弱な子供が勝てるわけない。

あっさりと私は床にしりもちをついてしまった。

それを見た皇后は傍らに控えていたビタに顎をしゃくって指図した。

それに応じてビタは皇后に、を差し出した。

「最後に灸を据えたのは、いつだったかのう」

皇后の虐待しつけの始まりだった。


「お主は悪い子」

ーバシッ。

「女に産まれて母を悲しませるだけで足らず、母から父の関心を奪い、」

ーバシッ、バシッ。

「それでいて、母を敬う事すらしない。」

ーバシッ、バシッ、バシッ。

「おまえは悪い子じゃ!」

頭の先から爪先まで、ひたすら打たれる。

鞭から逃げようとしたら髪を引っ張られ、そのまま蹴られた。

「うっ」

「みっともないのう」

あまりの痛さにうめき声を漏らすと、皇后が蔑むように笑った。

そのまま私の髪を引っ張り、涙でぐちょぐちょになった私の顔を覗き込む。

頭皮からブチブチと髪が無理矢理抜かれた。

「淑女たるもの、優雅に振る舞うことが美徳とされておるのに…まだ教育が足りていないと見える。」

それからさらに激しく暴力を振るわれた。

鞭打たれる、叩かれる、蹴られる。

ありとあらゆる暴力を全身で受け止めた。

このおかしな状況に声を上げる者は1人もいない。

血を吐いて、意識を失う直前に見えたのは。

皇后の恍惚とした、狂った笑みだった。
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