上 下
1 / 1

しおりを挟む
 裕福な商家に嫁いだエリザは、もともとは子爵家の令嬢だった。

 だが貴族とはいえ、兄がふたり、姉がひとりの四人兄姉の末娘だったエリザは、比較的自由に育てられた。
 兄が同じ子爵家の令嬢と結婚し、姉が伯爵家に嫁いだあとは、それほど勉強や礼儀を強要されることもなく、町を探索したり、友人と遊んだりと気ままに過ごしていた。

 自由気ままに暮らしていたエリザと同じく、そのときは未婚だったもうひとりの兄が、警告してくれた。
兄や姉には自由がなかったかもしれないが、親が示した道をそのまま生きればいい。でも自分たちは、これからの人生を自分の力で生きていかなくてはならない。

 そう言われて、エリザは学校に通うことにした。
 その学校は貴族だけではなく、裕福な平民も通っているところだ。
 通っているのは上位の貴族ではなく、エリザと同じように子爵家や男爵家の子どもが多い。そして平民は大きな商会の子どもばかりだったようだ。
 その学校で経理や経営などを学んだエリザは、将来は自分で商会を立ち上げたいと思っていた。だから勉強も必死に頑張っていて、成績も常に上位だった。そんなエリザの頑張りを父親も褒めてくれて、商会を立ち上げるときはサポートをすると言ってくれたのだ。

 でも結果的に自分で商会を立ち上げるのではなく、比較的大きな商会の跡取り息子のロトムと結婚することになった。彼とはクラスメイトで、入学当時から仲は良かったが、卒業を間近に控えた時期にプロポーズされた。
 彼のことは好きだったが、自立したかったエリザは悩んだ。それでも姉や母が結婚を強く勧めてくれたし、勉強したことは嫁いだ商会のために生かせばいいと思い直した。
 娘が商会を立ち上げることを楽しみにしていたらしい父親は残念がったが、母は安堵していた。
 やはり女性がひとりで商会を立ち上げるとなると、いくら子爵の父の後ろ盾があるといえど苦労するのではないかと、心配していたらしい。

 だが幸せな結婚生活は、二年ほどしか続かなかった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

夫は運命の相手ではありませんでした…もう関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。

coco
恋愛
夫は、私の運命の相手ではなかった。 彼の本当の相手は…別に居るのだ。 もう夫に関わりたくないので、私は喜んで離縁します─。

愛することはないと言われて始まったのですから、どうか最後まで愛さないままでいてください。

田太 優
恋愛
「最初に言っておく。俺はお前を愛するつもりはない。だが婚約を解消する意思もない。せいぜい問題を起こすなよ」 それが婚約者から伝えられたことだった。 最初から冷めた関係で始まり、結婚してもそれは同じだった。 子供ができても無関心。 だから私は子供のために生きると決意した。 今になって心を入れ替えられても困るので、愛さないままでいてほしい。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

妻の私は旦那様の愛人の一人だった

アズやっこ
恋愛
政略結婚は家と家との繋がり、そこに愛は必要ない。 そんな事、分かっているわ。私も貴族、恋愛結婚ばかりじゃない事くらい分かってる…。 貴方は酷い人よ。 羊の皮を被った狼。優しい人だと、誠実な人だと、婚約中の貴方は例え政略でも私と向き合ってくれた。 私は生きる屍。 貴方は悪魔よ! 一人の女性を護る為だけに私と結婚したなんて…。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定ゆるいです。

夫が不倫相手を妊娠させたので、離縁します。

杉本凪咲
恋愛
夫は妻である私に何も望まない。 なぜなら、彼が欲しいのは妻であって、私ではないから。

さようなら、元旦那様。早く家から出ていってくださいな?

水垣するめ
恋愛
ある日、突然夫のカイル・グラントが離婚状を叩きつけてきた。 理由は「君への愛が尽きたから」だそうだ。 しかし、私は知っていた。 カイルが離婚する本当の理由は、「夫婦の財産は全て共有」という法を悪用して、私のモーガン家のお金を使い尽くしたので、逃げようとしているためだ。 当然逃がすつもりもない。 なので私はカイルの弱点を掴むことにして……。

旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。 私と旦那様は結婚して4年目になります。 可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。 でも旦那様は.........

処理中です...