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第75話 復活
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俺の作戦はこうだ。
フルーレティに≪リプレイス≫をかけ、パラメータを交換する。
レベル400相当といわれるフルーレティの力ならばこの程度の氷は簡単に破壊できるはずだ。
「そうですね、その手でいきましょうか。でもくれぐれも慎重にお願いします」
≪リプレイス≫を使用した瞬間、氷の中のフルーレティのパラメータはレベル1の魔導士レベルになる。
力の加減を間違えて中にいるフルーレティまで破壊してしまわないように、マリーニャが釘を刺す。
「それじゃあ。いくぞ」
俺は精神を集中し魔力の詠唱を始める。
「待って、誰か来る!」
「えっ!?」
俺はシズハナの声で詠唱を中断し後ろを振り向くと、そこには予期せぬ人物の姿があった。
「やっと見つけましたよ。これが伝説の悪魔、フルーレティですか」
「ホリックさん、どうしてここに!?」
そこには王都のギルド本部で俺達を見送って別れたはずのホリックさんの姿があった。
「以前からあなた達の行動に引っかかるものを感じていましてね。マークしていて正解でした」
「それで俺達の後をつけてきたと?」
「ええ、シズハナさんの探知能力を掻い潜るのは大変でしたよ。フルーレティを生かしておくと後の世の災いになります。早く殺してしまわないといけません」
「待ってください、フルーレティは私の───」
マリーニャがフルーレティを守るように前に出て、自身の秘密を打ち明ける。
ホリックさんとて横暴な人間ではない。
マリーニャの告白に耳を傾けるが、しかしそれでもその主張は変わらない
「だからといってこのまま放置する訳にはいきません。フルーレティは存在するだけで世界の脅威になります。チェインさん、≪リプレイス≫を使えるあなたなら簡単に始末できますよね」
ホリックさんもあくまでこの世界の事を考えた上での決断をしている。
彼女の言う事にも一理ある。
俺は目を閉じて深呼吸をし、少し考えた後に答える。
「分かりました。俺が責任を持ってフルーレティを始末します」
「チェイン、何を言うんですか!?」
悲痛な声を上げるマリーニャを手で制止し、続ける。
「但し───フルーレティが本当にこの世界の脅威になると確証されたらの話です」
「そう来ましたか。……いいでしょう。しかしどうやってそれを確かめるつもりですか」
「本人に確認をすればいいでしょう。どの道俺達はフルーレティを目覚めさせるつもりでしたし」
「分かりました。やってみて下さい」
俺は氷漬けのフルーレティに正対し、≪リプレイス≫を放つ。
今回はパラメータだけでなく『能力』の交換も追加している。
フルーレティの力と能力が俺の中に入ってくると、まずはどのような能力があるのかを把握するところから始める。
極限氷結魔法≪絶対零度≫。
これがフルーレティ自身を覆う氷の正体か。
極限電撃魔法≪轟天雷≫。
今回電撃は役に立ちそうにないな。
極限爆砕魔法≪混世魔王≫。
こんなものを使ったらフルーレティまでバラバラになってしまう。
肉体変化魔法≪摸着天≫。
変化の術ってやつか。今は使いどころがないな。
どれも見た事も聞いた事もない魔法ばかりだ。
極限炎上魔法≪滅却業炎≫。
この魔法なら氷を解凍できるかもしれない。
「危ないから皆は後ろに下がってて」
俺は皆を安全な場所に移動させると、氷の塊に向けて魔力を解き放つ。
「紅蓮の炎よ眼前の氷を消し去れ、≪滅却業炎≫!」
その瞬間、俺の杖の先から放出された超高温の熱線が氷に向けて放たれる。
「あ、熱っ!」
一瞬で洞穴の温度が跳ね上がる。
「なんですのこの異常な熱さは?」
ルッテが咄嗟に氷結の杖で周りの空気を冷却しなければ全員焼け死んでいたかもしれない。
たった一発でそれ程の熱量だ。
確かにこんな力を持つフルーレティを野放しにしたら世界の危機になる。
ホリックさんの懸念も頷ける。
フルーレティを覆っていた氷は一瞬にして蒸発していた。
あとはフルーレティが目覚めるのを待つだけだ。
俺は万が一に備えてマジックポーションを飲み、魔力を回復させる。
マリーニャが横たわるフルーレティに近付く。
「もうすぐ目覚める……」
フルーレティの気配の変化を察知したシズハナが俺達に注意を促す。
「……」
フルーレティはゆっくりと目を開き周囲を見回す。
辺りの空気が張り詰める。
「…………」
「私達を攻撃する意思はなさそうですね」
まずは一安心だ。
フルーレティはマリーニャに視線を定める。
「…………」
「マリーニャに何か話しかけているようですが、私の知っている世界中のどの言語とも違いますね。これでは何とも……」
「いえホリックさん、私には分かります。…………αΞ∑θβμτ」
フルーレティの謎の言葉に反応して、マリーニャも同じ言葉を話し出した。
「……ιΩλρΖ」
フルーレティはマリーニャの言葉に頷くと、身体が光り出してその形が変わっていく。
やがてフルーレティは人の姿に変化した。
どことなくマリーニャの父、エーヴィルの面影がある。
「この姿の方が話しやすいだろう、と言っています」
「マリーニャ、今の言語は一体?」
「かつて私達の部族が話していた言語です。ギルガリア王国に併合されてからは言語が統一されたので普段は使いませんが」
フルーレティに≪リプレイス≫をかけ、パラメータを交換する。
レベル400相当といわれるフルーレティの力ならばこの程度の氷は簡単に破壊できるはずだ。
「そうですね、その手でいきましょうか。でもくれぐれも慎重にお願いします」
≪リプレイス≫を使用した瞬間、氷の中のフルーレティのパラメータはレベル1の魔導士レベルになる。
力の加減を間違えて中にいるフルーレティまで破壊してしまわないように、マリーニャが釘を刺す。
「それじゃあ。いくぞ」
俺は精神を集中し魔力の詠唱を始める。
「待って、誰か来る!」
「えっ!?」
俺はシズハナの声で詠唱を中断し後ろを振り向くと、そこには予期せぬ人物の姿があった。
「やっと見つけましたよ。これが伝説の悪魔、フルーレティですか」
「ホリックさん、どうしてここに!?」
そこには王都のギルド本部で俺達を見送って別れたはずのホリックさんの姿があった。
「以前からあなた達の行動に引っかかるものを感じていましてね。マークしていて正解でした」
「それで俺達の後をつけてきたと?」
「ええ、シズハナさんの探知能力を掻い潜るのは大変でしたよ。フルーレティを生かしておくと後の世の災いになります。早く殺してしまわないといけません」
「待ってください、フルーレティは私の───」
マリーニャがフルーレティを守るように前に出て、自身の秘密を打ち明ける。
ホリックさんとて横暴な人間ではない。
マリーニャの告白に耳を傾けるが、しかしそれでもその主張は変わらない
「だからといってこのまま放置する訳にはいきません。フルーレティは存在するだけで世界の脅威になります。チェインさん、≪リプレイス≫を使えるあなたなら簡単に始末できますよね」
ホリックさんもあくまでこの世界の事を考えた上での決断をしている。
彼女の言う事にも一理ある。
俺は目を閉じて深呼吸をし、少し考えた後に答える。
「分かりました。俺が責任を持ってフルーレティを始末します」
「チェイン、何を言うんですか!?」
悲痛な声を上げるマリーニャを手で制止し、続ける。
「但し───フルーレティが本当にこの世界の脅威になると確証されたらの話です」
「そう来ましたか。……いいでしょう。しかしどうやってそれを確かめるつもりですか」
「本人に確認をすればいいでしょう。どの道俺達はフルーレティを目覚めさせるつもりでしたし」
「分かりました。やってみて下さい」
俺は氷漬けのフルーレティに正対し、≪リプレイス≫を放つ。
今回はパラメータだけでなく『能力』の交換も追加している。
フルーレティの力と能力が俺の中に入ってくると、まずはどのような能力があるのかを把握するところから始める。
極限氷結魔法≪絶対零度≫。
これがフルーレティ自身を覆う氷の正体か。
極限電撃魔法≪轟天雷≫。
今回電撃は役に立ちそうにないな。
極限爆砕魔法≪混世魔王≫。
こんなものを使ったらフルーレティまでバラバラになってしまう。
肉体変化魔法≪摸着天≫。
変化の術ってやつか。今は使いどころがないな。
どれも見た事も聞いた事もない魔法ばかりだ。
極限炎上魔法≪滅却業炎≫。
この魔法なら氷を解凍できるかもしれない。
「危ないから皆は後ろに下がってて」
俺は皆を安全な場所に移動させると、氷の塊に向けて魔力を解き放つ。
「紅蓮の炎よ眼前の氷を消し去れ、≪滅却業炎≫!」
その瞬間、俺の杖の先から放出された超高温の熱線が氷に向けて放たれる。
「あ、熱っ!」
一瞬で洞穴の温度が跳ね上がる。
「なんですのこの異常な熱さは?」
ルッテが咄嗟に氷結の杖で周りの空気を冷却しなければ全員焼け死んでいたかもしれない。
たった一発でそれ程の熱量だ。
確かにこんな力を持つフルーレティを野放しにしたら世界の危機になる。
ホリックさんの懸念も頷ける。
フルーレティを覆っていた氷は一瞬にして蒸発していた。
あとはフルーレティが目覚めるのを待つだけだ。
俺は万が一に備えてマジックポーションを飲み、魔力を回復させる。
マリーニャが横たわるフルーレティに近付く。
「もうすぐ目覚める……」
フルーレティの気配の変化を察知したシズハナが俺達に注意を促す。
「……」
フルーレティはゆっくりと目を開き周囲を見回す。
辺りの空気が張り詰める。
「…………」
「私達を攻撃する意思はなさそうですね」
まずは一安心だ。
フルーレティはマリーニャに視線を定める。
「…………」
「マリーニャに何か話しかけているようですが、私の知っている世界中のどの言語とも違いますね。これでは何とも……」
「いえホリックさん、私には分かります。…………αΞ∑θβμτ」
フルーレティの謎の言葉に反応して、マリーニャも同じ言葉を話し出した。
「……ιΩλρΖ」
フルーレティはマリーニャの言葉に頷くと、身体が光り出してその形が変わっていく。
やがてフルーレティは人の姿に変化した。
どことなくマリーニャの父、エーヴィルの面影がある。
「この姿の方が話しやすいだろう、と言っています」
「マリーニャ、今の言語は一体?」
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