防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり

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第36話 皆まとめてひん剥いてしまえばいい

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「いたぞ、奴が山賊団のボスクサナギだ! 捕らえろ!」

 タカミ王子の命を受けた兵士達が俺に弓矢や魔法を放つ。
 白旗を掲げて戦う意思はない事をアピールして接触を試みたのだが無駄に終わった。
 話し合いをする余裕など全くなく、俺は何の成果も上げられないまま村まで戻ってきた。


「クサナギの兄貴、お早いお帰りで。首尾は如何でした?」

「取り付く島もなかった。あれは本当にタカミ殿下なのか?」

 ムスヒの事だ、俺を惑わせる為にタカミ王子そっくりの影武者を仕立てている可能性もある。
 しかし本人が操られている可能性がある以上、俺はあの司令官を手に掛ける事は出来ない。

 そうこう悩んでいる間に討伐軍は村の付近まで進軍していた。

 村は完全に包囲され、総攻撃の合図を待つばかりとなった。

「敵の兵力は約一万に対してこちらの数は五百人か。いくら籠城戦は守備側が有利とはいえ厳しいな」

「なあに、平地ならともかく山中での戦いはあたいらの専売特許さ。奴らに目にもの見せてやるよ」

「いや、兵士達は命令で仕方なく戦わされているだけだ。出来れば命まで奪いたくない」

「しかし戦場で敵に情けを見せたら味方に犠牲者が出るよ」

 トモエの言う事も十分承知している。
 俺はお互いに犠牲が出ない方法を考える。

 考えが纏まらない内に陣頭で指揮を執っているタカミ王子から総攻撃の命令が下された。

「突撃せよ!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 兵士達は鬨の声を上げながら俺達の村に殺到する。

「始まりましたぜ! 兄貴も行きますよ!」

「山中の戦いか……待てよ……」

 俺はその時一つの策を思いついた。

「お前達、兵士達に手を出すな! ここは俺が何とかする」

 俺は討伐軍を迎撃しようとする子分達を止めると、魔法の呪文の詠唱を始めた。


「……クロースレス!」

 次の瞬間、村を包囲していた兵士達の身体が赤い光を帯び──

 パァン!

 ──という破裂音と共に彼らの身に付けている全ての物がはじけ飛んだ。

「うわああああああああああああ、俺の鎧が!?」

「私のローブが!?」

「クサナギだ! 奴がクロースレスを使ったんだ!」

 村の外は阿鼻叫喚の地獄絵図となっている。

 今の俺のクロースレスは一度に半径数キロにわたる全ての物に影響を与える事ができるように進化していた。
 バトルトーナメントが終わってからも一日も休まずに魔力を高める修行を続けてきた甲斐があったというものだ。
 もちろん味方には影響が及ばないように対象を選ぶ事もできる。

「くそっ、こんな事で怯むな! 俺達は誇りある王国兵だぞ!」

 しかしさすがはタカミ殿下率いる王国の正規兵である。
 兵士達は裸にされようとお構いなしに進軍を続ける。

「兄貴、折角のクロースレスですが当てが外れましたね。もうやるしかありませんぜ」

「ジセン、俺のクロースレスの本来の効果を忘れたのか?」

「え? 相手の身包みを剥がす魔法ですよね?」

「違う、それは副作用に過ぎない。クロースレスはガードレスの進化形だ。これで相手の防御力が極限まで下がってるはずだ」

「兄貴、そうだとしたら今のあいつらは軽く小突いただけでも致命傷になるって事ですよね。逆に手を出し辛くなってませんか?」

「いや、もう攻撃をする必要もないさ。見てご覧」

 村に向かってくる兵士達に視線を移すと、ひとりまたひとりと歩みを止めて苦しみ出している。

「ぐ、ぐああああああああ!!」
「何かが俺の腕に噛みつきやがった!?」
「痛ッ、俺の足に何かが刺さってる!?」

 ジセン達はそれを不思議そうに眺めている。

「兄貴、これは一体……?」

「虫にでも刺されたんだろ。山の中にはそこら中にいるからね」

 更に進化したクロースレスで防御力が極限まで下がった兵士達には、ただの虫刺されですら戦闘不能になるには十分なダメージを与えていた。

 これで兵士達は無力化した。
 後は指揮官であるタカミ王子を捕縛すれば俺達の勝利だ。
 もう本人だろうが影武者だろうが関係ない。

 俺は先程までタカミ王子が指揮を執っていた場所に視線を移す。

「クサナギ、覚悟しろ!」

 配下の兵が戦意を喪失している中、タカミ王子は剣を構え勇敢にもこちらに向かってくる。
 彼も虫に刺されているはずだがそれをものともしていない。
 タカミ王子は俺のクロースレス対策をしていたのであろう、予め用意していた別の鎧に着替えていた。
 一国の王子を裸で戦わせるのには抵抗があったので、俺はそれを見てほっと胸を撫で下ろす。

 タカミ王子は剣の使い手としてその名が知られている。
 正面から戦ったら俺も分が悪い。

 しかしこちらには無傷の山賊五百人がついている。

「お前達、今だよ!」

 トモエの合図でタカミ王子に向けて一斉に網が投げ掛けられた。

「くそ、山賊どもめ卑怯だぞ!」

 タカミ王子は剣を振るいその網を切り裂いて脱出を図るが、今度はその手足を目掛けて投げ縄が飛んでくる。

 如何に剣の使い手とはいえ両手足を封じられては何もできない。
 タカミ王子は奮戦空しく俺達の捕虜となった。

「タカミ王子は捕らえた! 兵士達は武器を捨てて降伏せよ!」

「殿下が山賊達に捕まったぞ!」
「くそっ、これでは手が出せん。やむを得ぬ、降参だ!」

 王子を人質にされては誇り高き王国兵といえども俺達に降伏する以外の選択肢はなかった。
 俺は兵士達の降伏を受け入れると、彼らに掛けたクロースレスの魔法を解き、虫刺され用のポーションを与えて治療をする。

 消し飛ばした兵士の鎧については代えの衣服が足りなかったので何割かの兵士にはしばらく裸のままでいて貰うしかなかった。

 こればっかりは仕方ないね。
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