防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり

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第33話 光の矢

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「クサナギ、久しぶり! ……って程でもないかニャ?」

「バトルトーナメント以来ですね、マドウカさん」

 その日俺はS級冒険者パーティエキゾチックスの四人を火焔山に招待してもてなしていた。

「それにしてもまさかあんな魔法が存在するとは……クサナギ達と当たる前に敗退して逆に良かったと思うミャ」

「ははは、もし当たってたとしてもマドウカさん達にクロースレスを使うつもりはありませんでしたよ」

 俺とエキゾチックスの仲間達は先日のバトルトーナメントの話題に花を咲かせるが、もちろん世間話をする為にわざわざ呼んだ訳ではない。
 適当なところで切り上げて本題に移る。

「そろそろ仕事の話をしましょう。君達には王宮へ忍び込んでムスヒが何を企んでいるのかを調べて貰いたい。それからタカミ殿下の現状も知りたい」

 途端に彼女達は真剣な表情になる。

「そういう事かミャ。確かにそんなヤバい案件は冒険者ギルドを通せないミャ」

「もちろん報酬は弾むよ」

 幸いこの火焔山にはトモエ達が悪徳貴族から強奪してきた金銀財宝がたんまりと蓄えられている。
 並の冒険者が一生かかっても稼げない程の報酬を要求されたとしても大して懐は痛まないだろう。

 液体化魔法リキッドブレイクを使う彼女達はどんな隙間にも潜り込めるし、もし警備兵に見つかったとしても液体状態になっていればどこかから水漏れしているぐらいにしか思われないだろう。
 密偵としてはこの上ないの人材だ。

「私達あのムスヒとかいう奴は嫌いだミャ。喜んで協力するミャ」

「ありがとう、助かるよ」

 エキゾチックスの四人もバトルトーナメント以降のムスヒ一派の動向に不信感を募らせていた為スムーズに話が進んだ。

「ところでチルちゃん達はどうなってるかニャ? 短期間でかなりの実力を身に付けたとはいえ、まだまだ上位の魔獣相手では厳しいと思うミャ」

「それなら大丈夫。先日会った時に回復アイテムを持てるだけ持たせておいたし、いざという時の為にジョーカーを送り込んであるから」

「ふーん、まあお手並み拝見と行くミャ」



◇◇◇◇



 幻獣の森ではチル達勇者パーティと鈺熊との戦闘が続いていた。

 サクヤの口から出た実戦訓練という単語を耳にしたサギリとネネコはその意味を理解できずに首を傾げている。

「私とお姉様が初めてクサナギさんに連れられて魔獣の討伐に向かった時、ああやってあえて自分より強い魔獣と戦わされたんですよ。自分で言うのもなんですが、おかげで短期間でかなり強くなれたと思います」

 サクヤはその時の記憶を懐かしむように目を細めながら答えた。

「強力な魔獣といっても、身を守る事だけに集中していればそうそう致命傷は受けませんからね」

「クサナギさんって意外とスパルタなんですね……」

「サクヤ殿、鈺熊がこっちに狙いを変えてきたらどうするんでござるか?」

「今お姉様がやっている事を私達がやるだけです」

「ええ……」

「と、とにかくわたくし達も魔法で援護しましょう!」

「闇雲に撃ってるだけでは駄目ですよ。どのタイミングでどの部位に魔法を当てれば有効かを考えながら援護するんです」

「やってみます」
「……でござる」

 チルが至近距離で鈺熊と大立ち回りを演じている間にサクヤ、ネネコ、サギリの三人は遠距離から魔法やクナイで援護射撃を続ける。

 やがて鈺熊の動きに慣れてきた四人は連携を駆使して優勢に戦えるようになってきた。

「隙あり!」

 ザシュッ!

「クマアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 チルがロングソードで鈺熊の首を一点集中的に攻め続けた結果、ついには分厚い毛皮を貫いてその内側の肉を切り裂いた。
 噴出した血が辺りに飛び散る。

「はぁはぁ……やっとここまで届いた。でもそろそろあたしも限界です。今日はここまでにしておきましょう」

 スタミナポーションも使いきり、疲労困憊のチルは仲間達に撤退を指示する。

 元々チルはこの戦闘で鈺熊を倒しきるつもりはなかった。
 実戦経験を重ねる事でパーティの実力を底上げするという当初の目的は達成している。
 それに既に鈺熊の動きは見切った。
 体力を回復させて再戦すれば次は確実に勝てるという自信があった。

「それでは一旦森の外に出ましょう。一休みをして再戦の準備をしますよ」

「あ、チル殿そこは……」

「え? きゃああああああ」

 突然チルは足下から飛び出した縄に足を絡まれ、上に引っ張り上げられる。

「そこには拙者が設置した罠があったでござるよ……」

 チルの身体は木の枝にぶら下がる形で頭を下向きにして吊り上げられていた。

「クウウウウマアアアアアアアアアア!!」

 鈺熊は身動きができないチルに向かって突進する。

「ちょ、こないで……!」

「クマッ!?」

 次の瞬間、鈺熊の足にも別の縄が絡みつき、チルと同様に逆さ向きに吊り上げられていた。

「このっ、このっ!」
「クマクマクマアアアアー!!」

「なんですかこれ……」

 お互い逆さ吊りになりながら戦い続けるチルと鈺熊を、サクヤ達三人は苦笑しながら眺めていた。

 しかしいつまでもチルをこの体勢のままでいさせる訳にもいかない。
 それに鈺熊の足に絡みついていた縄はその体重によって少しずつ千切れていっている。
 縄が千切れて鈺熊が自由になれば、そこから動く事ができないチルはいずれ鈺熊の餌食になってしまうだろう。

 ひとまずサクヤが炎魔法でチルの足に絡まっている縄を焼き切って下ろそうとした時だ。


「夜空に輝く星星の光を司るミーティア神よ、我が射線上に立ちはだかる憐れな者達を吹き飛ばせ!……ガンマレイバースト!」

「ク……マアアアアアア!!」

 突如どこからともなく放たれた光の矢が鈺熊の頭部を一瞬で吹き飛ばした。
 直後にその衝撃で縄が切れ、首のない鈺熊の身体が地面に落下する。

「え? 今のはまさか……」

「まったく、締まらないわね」

 チルとサクヤは聞き覚えのある声に振り向くと、そこには紺色の長い髪をなびかせた美しい女性が立っていた。

「イザナミさん!? どうしてあなたがここに?」

「お久しぶりねお嬢さん達。クサナギさんからあなた達の様子を見てくるよう依頼を受けてね」

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