防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり

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第1話 勇者パーティから追放されました

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「万物の守護を司るクローザ神よ、彼の者との契約を破棄しその守りの力を無と帰さしめよ……ガードレス!」

 勇者パーティの戦闘はいつも魔法使いである俺、クサナギが魔法の呪文を詠唱するところから始まる。

 どんなに頑丈な身体を持つ魔獣も、魔法によって防御力を下げてしまえば容易に倒す事ができる。
 俺の師匠である大魔法使いツクヨミから教わった事だ。

 それは長くこの火焔山の主として君臨していた火竜であろうと例外ではないはず。

 俺が火竜に防御力弱体化魔法ガードレスを掛けた瞬間、火竜の身体は青白い光に包まれた。
 この視覚効果は対象に魔法の効果が発動している事を意味する。

 それを確認した勇者ヤマトと戦士タケルは得物を手に火竜目掛けて走り出す。

「タケル、お前は右から攻めろ! 俺は左から行く」

「ああ任せとけヤマト!」

 二人のコンビネーションは完璧だ。
 左から飛びかかる勇者ヤマトに気を取られた火竜は、反対側から巨大な斧を振り下ろす戦士タケルの動きに対して一瞬反応が遅れ、右の翼を切り落とされる。

 火竜が怯んだ次の瞬間、勇者ヤマトの剣は火竜の左脇腹を易々と切り裂き、辺りに鮮血が飛び散った。

「グワアアオオオオオオオ!!」

 大地が震える程の雄叫びが山中に響き渡る。

 地響きと共に火竜の巨大な身体は崩れ落ち、しばらくもがき苦しんだ後に動かなくなった。

「ふっ、火竜といってもこの程度か。準備運動にもならなかったな」

「ミコト、ちょいと火竜の爪がかすめて左腕を怪我しちまった。治療してくれ」

「何やってるのよタケル。ボサっとしてるからでしょ。……リカバリー!」

 パーティの紅一点、僧侶のミコトが回復呪文を詠唱するとタケルの傷はあっという間に塞がった。
 俺達のパーティの戦闘はいつも一瞬で終わるのでヒーラーであるミコトの出番は大抵戦闘が終わった後になる。

「サンキューミコト。また頼むわ」

「もっと怪我をしないように立ち回りなさいよ。私の魔力だって無限じゃないんだからね」

 ミコトは面倒くさそうに溜息をつきながら悪態をつく。
 見慣れたいつもの光景だ。

「よし、それじゃあさっさと王都へ帰る支度をするぞ。おいクサナギ、俺達は今の戦闘で疲れてるからお前はいつも通り素材になりそうな部位を袋に詰め込んどけ」

「はいはい」

 戦闘終了後の後始末はいつも俺の仕事だ。

 俺の職業は魔法使いだが、まともに使える魔法は相手の防御力を下げる魔法ガードレスくらいのものだ。

 それには理由がある。

 孤児だった俺はかつてこのヒノト王国全土に名を馳せていた大魔法使いツクヨミに拾われ育てられた。
 成長した俺はツクヨミのような大魔法使いになる事を夢みて彼に魔法を教わる事にしたが、高齢だった彼は俺にガードレスの魔法を伝授した直後に体調を崩し、そのまま帰らぬ人となってしまった。

 その為に俺は師匠からガードレス以外の魔法の手解きを受けていない。

 それでも大魔法使いの弟子という肩書を持つ事になった俺は、国王陛下の命令により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務に加わる事となった。

 しかしガードレス以外の魔法はからっきしの俺はパーティのメンバーからは明らかに見下され、いつしか使用人扱いをされるようになってしまった。

「でも俺のガードレスがなければ火竜をこんなに簡単に倒せなかっただろう……」

 俺はぼやきながら火竜を解体し、持ち帰る部位を餞別する。

 竜は全身が武器や防具の素材となる。
 鱗は盾や鎧に、牙や角は武器に加工される。
 その他の部分も魔道具の素材等の多種多様な使い道があり、高額で売れるので出来るだけ多く持ち帰らないといけない。

「どうだミコト、竜を仕留めた俺の一撃は」

「いや、俺のアシストがあったからだろ」

「何言ってんのよタケル、あんた火竜の反撃まともに食らってたじゃん。油断しすぎ」

「う、うるせえよ」

 額に汗を流しながら解体作業を続ける俺を横目に、勇者ヤマト達三人は寛ぎながら談笑をしている。
 少しぐらい手伝ってもいいじゃないかとは思うが、俺が文句を言ったところでどうせ耳を貸そうとはしないだろう。

「遅いぞクサナギ。どれだけ待たせれば気が済むんだ」

「俺達だって暇じゃないんだ。お前がのろのろしてる間にも魔物が村を襲っているかもしれないんだぞ」

「そうよ、そのせいで犠牲者が出たらあんた責任取れんの?」

 解体作業を待っている間に話題が尽きたのか、俺への理不尽な責めが始まった。

 そう言うのなら手伝ってくれればいいだろう。

 俺は国王陛下直々の命令で勇者パーティに加わった経緯もあったので今までずっと耐えてきたが、三人の仕打ちにいい加減我慢の限界だ。

「もうこのパーティから抜けさせて貰おうかな……」

 俺は怒りに身を震わせながら作業を続けた。



「ほら、終わったぞ」

 解体を終え、素材になりそうな部位を粗方魔法の袋に仕舞い終わった頃にはもう日が暮れかかっており、王国が手配した帰りの馬車が俺達を待っていた。

「けっ、散々待たせやがってこののろまが。さっさとそいつをよこしな」

 ヤマトは俺から魔法の袋を奪い取ると帰りの馬車に乗せる。
 タケルとミコトの二人も既に馬車の中だ。

「んじゃ帰るぞ。おい、馬車を出してくれ」

「はい、ヤマト様」

 御者はヤマトの指示で俺が乗るのを待たずに馬車を動かせる。

「おい、ちょっと待ってくれよ。俺がまだ乗ってない」

 置いて行かれた俺は必死で馬車を追いかけるが、馬車は構わず走り続ける。
 ヤマトが馬車の窓から顔を出して言った。

「ああクサナギ、お前は歩いて帰れ」

「は?」

 ヤマト、タケル、ミコトの三人はこちらを見ながらクスクスと嫌な笑いを浮かべ、順番に口を開く。

「なあクサナギ。前から思ってたんだけどよ、防御力を下げる魔法しか使えない魔法使いなんか俺のパーティには必要ないんだよな。あの大魔法使いツクヨミの弟子だっていうからお情けでパーティに入れてやってたけどよ、次からはちゃんとした魔法使いをパーティに入れる事にしたわ」

「早い話がパーティから追放って事だ。もう二度と俺達の前に現れるんじゃないぞ」

「ぶっちゃけあんた全然役に立ってなかったもんね。弟子がこれなら師匠のツクヨミとやらの実力も高が知れるってカンジよね。キャハハハハ」

「な、なんだよそれ……お前らふざけた事言ってんじゃ……それに師匠は関係ないだろ……」

 突然の追放劇に俺は頭の中が真っ白になり足が止まる。
 馬車は更に速度を上げ、あっという間に見えなくなった。




「ギャァ、ギャァ」

「グルルルル……」

「シャァァァァァァッ」


 周囲から魔獣の唸り声が聞こえてくる。

 この山の主である火竜を討伐したとはいえ、ここにはまだ多くの魔獣が生息している。

 俺、ここから生きて帰れるのかな?
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