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第23話 とびだせ! 開拓の村
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「ユフィーア、これは魔族による幻惑の呪術だ。解決するには少し時間がかかるぞ。それに話す言葉がおかしくなってるだけで基本的に実害はないから安心してくれ」
「そうですか、それは何よりです。でも放っておく訳にも行きません。私にできる事なら何でも言って下さい」
「よし、それじゃあ……」
村人のセリフがおかしくなるバグを回避する方法はいくつかあるが、一番確実なのは村の発展を、開発者が想定していた通りの──村人のセリフが設定されている──状態に軌道修正してやる事だ。
俺はまずユフィーアと手分けをして村にどんな住民がいるのかを確認する。
年齢、性別、職業、家族構成……。
この中で一番重要なのは住民の職業だ。
丁度お昼が終わって大人達が午後の仕事に取り掛かる頃だ。
住民の仕事ぶりを眺めていれば大体職業は分かるのだが、この村では大半のいい大人が何もせずにぶらぶらしている。
まさかの無職村か?
原作でも無職のキャラだけを集めて村がどう発展するか実験してみたプレイヤーはいたが、どうやら無職のキャラだけだと村は全く発展しないらしい。
それに無職村は開発者の想定内だったようで、バグが発生する事はない。
無職村を作った時専用のセリフもちゃんとあったと、そのプレイヤーからの報告もある。
つまり、彼らは無職ではないという事だ。
見て判断できないなら本人に確認をすればいい。
セリフはバグっても文字はバグっていないので筆談は可能だ。
俺とユフィーアはアンケート用紙を手に村を回り、彼らの年齢、性別、職業、家族構成などの個人情報の収集に成功した。
アンケートをとって分かった事だが、現在この村には船大工と漁師が多い。
そもそもこの村は海から遠く離れているし、近くには大きな川も湖もない。
彼らに仕事なんてある訳がなかった。
これではこの村がこの先どのように発展すればいいのか誰にも分からないだろう。
原作ではプレイヤーが世界の町を巡って移民対象者を探し、開拓村に勧誘する。
恐らくこの世界でも俺とは別にプレイヤーポジションの人間がいて、手当たり次第この村に勧誘をしているのだろう。
それにしても無計画にも程がある。
原作で人気だったのが商業都市と工業都市だ。
どちらも普通に進めていたら手に入らないレアな武器やアイテムを購入する事ができる。
もし今後プレイヤーポジションの人物と出会う事があったら助言をしてあげようと思う。
それよりも今はバグを解決する方が先だ。
俺は一番手っ取り早い方法を選択した。
この村から不要な人間を消す。
そういうと物騒に聞こえるが、ちょっと住民に開拓村の外へ引越して貰うだけだ。
この辺り1キロメートル四方が開拓村の領域だ。
その領域内に住んでいる住民の種類と数によって村の発展状況が決まる。
一歩でも外に出ればそれは住民ではなくなり、村の発展には影響を及ぼさないNPCになる。
まずはこの村に全く不必要な船大工と漁師の処分だ。
地図を見ると、開拓村から北へ十キロメートル程先に湖がある。
そこに村を作り、彼らを引っ越しさせよう。
俺はバーグ建設と書かれた看板を作り、これから湖の付近に新しい村を作る事を住民達に宣伝をする。
土木作業は魔法使いの得意分野である。
ユフィーアは職業としては魔法使いではないが、魔法のスキルは本職以上だ。
まずは湖までの道を作る。
爆裂魔法で障害物を吹き飛ばし、あるいは炎魔法で焼き尽くしながら湖まで一直線に進む。
彼女が通った後にはそのまま道ができあがる。
湖畔に到着すると出力を高めにした爆裂魔法で辺り一面を吹き飛ばし、更地を作る。
これで下準備は完了だ
木材の入手は簡単だ。
周囲にたくさん生えている樹木を切り倒せばいい。
後は手に入れた木材を並べ、ログハウスや柵を建てていく。
日が暮れる頃には一軒の家が完成した。
そんな調子で翌日以降も村の開発を続け、一週間も経った頃には村の原型が出来上がった。
ユフィーアも土木作業姿がすっかり板についてきている。
その頃にはバーグ建設の作っている村に興味を持った村人達──主に船大工と漁師──が様子を見に来るようになり、ここが彼らにとって理想的な環境だと分かると、ここで暮らしたいという申し出が相次いだ。
こうして船大工と漁師がごっそりといなくなった開拓村の発展レベルは初期値まで下がり、セリフのバグは改善された。
しかし、まだ問題が残っている。
開拓村に住民を勧誘している人物の存在だ。
今後も開拓村には新たなる住民が引っ越してくるだろう。
その住民によっては再びバグが発生する可能性がある。
それを防ぐ為に、俺達は開拓村の村長であるシンドルフ氏に話を伺う事にした。
「こんにちは、私が村長です。移民についてですか? 実は以前知り合ったヴェパルさんという冒険者に、この村の宣伝をお願いしていまして」
「ヴェパル……ああ、あの人か。どおりで……」
「マール様、お知り合いですか?」
「いや、面識はないけど噂は聞いているよ」
冒険者ヴェパル・マーメイド。
原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドで主人公として選ぶ事ができる八人のキャラクターの中の一人だ。
元海賊であり、足を洗ってから紆余曲折を経て冒険者となる。
海上での戦いを得意としており、その性質上世界各国の港によく滞在している。
開拓村に船大工や漁師が沢山いたのはその為だ。
それが分かれば話が早い。
俺はシンドルフ氏に、もしまた船大工や漁師が開拓村に移り住んできたら湖畔の町を紹介するようにと頼む。
「ええ、それは構いませんよ。彼らにとってもこの村で無駄な時間を過ごすよりはその方が有意義でしょう。正直この村にいられてもごくつぶし……いや、何でもないです」
シンドルフ氏は快く引き受けてくれた。
これで心配事は全て解決したな。
それにしても折角の開拓村をこのまま遊ばせておくのは勿体ない。
一度ヴェパルさんに接触して直接話をしてみる必要があるな。
「そうですか、それは何よりです。でも放っておく訳にも行きません。私にできる事なら何でも言って下さい」
「よし、それじゃあ……」
村人のセリフがおかしくなるバグを回避する方法はいくつかあるが、一番確実なのは村の発展を、開発者が想定していた通りの──村人のセリフが設定されている──状態に軌道修正してやる事だ。
俺はまずユフィーアと手分けをして村にどんな住民がいるのかを確認する。
年齢、性別、職業、家族構成……。
この中で一番重要なのは住民の職業だ。
丁度お昼が終わって大人達が午後の仕事に取り掛かる頃だ。
住民の仕事ぶりを眺めていれば大体職業は分かるのだが、この村では大半のいい大人が何もせずにぶらぶらしている。
まさかの無職村か?
原作でも無職のキャラだけを集めて村がどう発展するか実験してみたプレイヤーはいたが、どうやら無職のキャラだけだと村は全く発展しないらしい。
それに無職村は開発者の想定内だったようで、バグが発生する事はない。
無職村を作った時専用のセリフもちゃんとあったと、そのプレイヤーからの報告もある。
つまり、彼らは無職ではないという事だ。
見て判断できないなら本人に確認をすればいい。
セリフはバグっても文字はバグっていないので筆談は可能だ。
俺とユフィーアはアンケート用紙を手に村を回り、彼らの年齢、性別、職業、家族構成などの個人情報の収集に成功した。
アンケートをとって分かった事だが、現在この村には船大工と漁師が多い。
そもそもこの村は海から遠く離れているし、近くには大きな川も湖もない。
彼らに仕事なんてある訳がなかった。
これではこの村がこの先どのように発展すればいいのか誰にも分からないだろう。
原作ではプレイヤーが世界の町を巡って移民対象者を探し、開拓村に勧誘する。
恐らくこの世界でも俺とは別にプレイヤーポジションの人間がいて、手当たり次第この村に勧誘をしているのだろう。
それにしても無計画にも程がある。
原作で人気だったのが商業都市と工業都市だ。
どちらも普通に進めていたら手に入らないレアな武器やアイテムを購入する事ができる。
もし今後プレイヤーポジションの人物と出会う事があったら助言をしてあげようと思う。
それよりも今はバグを解決する方が先だ。
俺は一番手っ取り早い方法を選択した。
この村から不要な人間を消す。
そういうと物騒に聞こえるが、ちょっと住民に開拓村の外へ引越して貰うだけだ。
この辺り1キロメートル四方が開拓村の領域だ。
その領域内に住んでいる住民の種類と数によって村の発展状況が決まる。
一歩でも外に出ればそれは住民ではなくなり、村の発展には影響を及ぼさないNPCになる。
まずはこの村に全く不必要な船大工と漁師の処分だ。
地図を見ると、開拓村から北へ十キロメートル程先に湖がある。
そこに村を作り、彼らを引っ越しさせよう。
俺はバーグ建設と書かれた看板を作り、これから湖の付近に新しい村を作る事を住民達に宣伝をする。
土木作業は魔法使いの得意分野である。
ユフィーアは職業としては魔法使いではないが、魔法のスキルは本職以上だ。
まずは湖までの道を作る。
爆裂魔法で障害物を吹き飛ばし、あるいは炎魔法で焼き尽くしながら湖まで一直線に進む。
彼女が通った後にはそのまま道ができあがる。
湖畔に到着すると出力を高めにした爆裂魔法で辺り一面を吹き飛ばし、更地を作る。
これで下準備は完了だ
木材の入手は簡単だ。
周囲にたくさん生えている樹木を切り倒せばいい。
後は手に入れた木材を並べ、ログハウスや柵を建てていく。
日が暮れる頃には一軒の家が完成した。
そんな調子で翌日以降も村の開発を続け、一週間も経った頃には村の原型が出来上がった。
ユフィーアも土木作業姿がすっかり板についてきている。
その頃にはバーグ建設の作っている村に興味を持った村人達──主に船大工と漁師──が様子を見に来るようになり、ここが彼らにとって理想的な環境だと分かると、ここで暮らしたいという申し出が相次いだ。
こうして船大工と漁師がごっそりといなくなった開拓村の発展レベルは初期値まで下がり、セリフのバグは改善された。
しかし、まだ問題が残っている。
開拓村に住民を勧誘している人物の存在だ。
今後も開拓村には新たなる住民が引っ越してくるだろう。
その住民によっては再びバグが発生する可能性がある。
それを防ぐ為に、俺達は開拓村の村長であるシンドルフ氏に話を伺う事にした。
「こんにちは、私が村長です。移民についてですか? 実は以前知り合ったヴェパルさんという冒険者に、この村の宣伝をお願いしていまして」
「ヴェパル……ああ、あの人か。どおりで……」
「マール様、お知り合いですか?」
「いや、面識はないけど噂は聞いているよ」
冒険者ヴェパル・マーメイド。
原作ファンタシー・オブ・ザ・ウィンドで主人公として選ぶ事ができる八人のキャラクターの中の一人だ。
元海賊であり、足を洗ってから紆余曲折を経て冒険者となる。
海上での戦いを得意としており、その性質上世界各国の港によく滞在している。
開拓村に船大工や漁師が沢山いたのはその為だ。
それが分かれば話が早い。
俺はシンドルフ氏に、もしまた船大工や漁師が開拓村に移り住んできたら湖畔の町を紹介するようにと頼む。
「ええ、それは構いませんよ。彼らにとってもこの村で無駄な時間を過ごすよりはその方が有意義でしょう。正直この村にいられてもごくつぶし……いや、何でもないです」
シンドルフ氏は快く引き受けてくれた。
これで心配事は全て解決したな。
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